kanako yamazaki

こんにちは、ガイアックスブランド推進室の山崎嘉那子です。
社会が複雑化している現在、様々な社会問題について語ること、行動を起こすことが大切だとはわかっていても、では何をしたらいいのかわからない、という方もいらっしゃるかもしれません。今回は長崎県の石木ダム建設に関する映画「ほたるの川のまもりびと」を鑑賞しながら、その建設是非について考え活動をされたパタゴニアの日本支店長辻井さんと株式会社eumo 代表取締役新井さんのお話を伺いました。

私たちは社会問題とどう向き合っていけば良いのか。

地球温暖化、待機児童、貧困、高齢化社会。
複雑な現代社会の中で起こる社会問題は、並べればきりがありません。
当事者ではないから、と無関心でいることは、時に知らないうちに問題に加担していることにもなりえます。そんな現代社会の中で、私たちはどのように社会問題と関わっていけばいいのでしょうか。

環境保護を自らの責任と位置付けるアウトドア衣料メーカー「パタゴニア」の取り組みのひとつに、長崎県佐世保市川原(こうばる)地区で計画中の石木ダム建設の是非について考える活動があります。

石木ダムは、42年前に作られた計画で、それ以来人口も景気も需要も技術も政治家も県民も大きく変わっています。地域住民は、ダム建設の根拠についてもう一度検証すべきと主張。その声にパタゴニアをはじめ様々な人々が賛同し、「#いしきをかえよう」という支援活動が広がっています。その活動を踏まえ、昨年2018年に、長崎県川原(こうばる)地区の住民の生活を撮ったドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」が制作されました。

今回はこの映画を鑑賞したのち、本作品のプロデューサーの一人でもあるパタゴニア日本支社長の辻井隆行氏と、持続的幸福(Eudaimonia)を追求する「共感資本社会の実現を目指す」株式会社eumo代表の新井和宏氏によるトークセッション形式で、会場の皆さんと一緒に石木ダム問題、そして、私たちの社会問題への関わり方について考えていきました。

【イベント概要】

19:00  オープニングトーク
19:10 「ほたるの川のまもりびと」上映
20:45  トークセッション
21:45  終了

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映画「ほたるの川のまもりびと」上映

イベントでは、はじめに映画「ほたるの川のまもりびと」を鑑賞しました。
以下はその予告編です。

上映後には、参加者の皆さんで様々な意見が交換されていました。

トークセッション

映画を鑑賞した後には、参加者同士で感想をシェアし、パタゴニア日本支社長の辻井 隆行さんと株式会社eumo 代表取締役の新井 和宏さんのトークセッションを聞きました。

tsujii takayuki

辻井 隆行(つじい たかゆき)
パタゴニア日本支社長

1968年東京生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程(地球社会論)修了。99年、パートタイムスタッフとしてパタゴニア東京・渋谷ストアに勤務。2000年、正社員として入社。鎌倉ストア、マーケティング部門、卸売部門などを経て09年より現職。03年にはグリーンランド、07年にはパタゴニアに遠征してシーカヤックと雪山滑降を行うなど、自然と親しむ生活を送りながら、#いしきをかえようの発起人の一人として市民による民主主義や未来のあり方を問い直す活動を続ける。2016年、日経ビジネス「次代を創る100人」に選出。(2019年8月時点の情報。現在は前パタゴニア日本支社長。)

kazuhiro arai

新井 和宏(あらい かずひろ)
株式会社eumo 代表取締役
ソーシャルベンチャー活動支援者会議(SVC)会長

1968年生まれ。東京理科大学卒。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。2007~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。2008年11月、鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍した。2018年9月、株式会社eumo(ユーモ)を設立。

ただダム建設を反対するだけではなく、”公正な移行”をすること。

新井:辻井さんが石木ダムに関して情報を得ながら、変わってきたのを僕は見てきたんですよね。初めはダム建設反対という話だと思っていた。
でも次第に、両方がどういう風に思っていて、なぜこういう風になっているのかを知らない限りは解決しないっていう方向性に変わっていった。
両方の意見を出す場を作るだけじゃなくて、両方が参加したくなる場にしなければいけない。変わっていこうとする姿が素晴らしいと思っています。
普通だったら反対っていっちゃうんですよね。

辻井:僕も本当は反対って言いたいですけど、それではダム建設は止まらないですから。必要なものと、そうじゃないものを冷静に考えたいなと思います。

「ダム建設に反対をするだけでは、何も変わらない」と辻井さん。
石木ダム問題において、全てのアクターが取り残されないような公正な移行を目指しているのだそうです。

公正な移行とは、全ての人にとって環境面から見て持続可能な経済と社会に向けた移行のことを指します。次回の公開討論会のポイントは、ダム建設はやめたほうがいいけれどそれだけでは建設業者の方などが被害を受けることになる。じゃあどうやって皆が食べていくのか、ということだそうです。立場によって利害をVSの形で対立させるのではなく、どうしたら皆んなが生活を続けられる状態を作るかということに目を向けるのですね。

みんなを巻き込むって難しい。ー#意識を変えようネット署名ー

今回のダム建設に関してはネット署名を行い、そこで辻井さんは他者を巻き込むことの難しさを感じたそうです。#意識を変えようというハッシュタグでキャンペーンを行ったところ、著名人がサイトで署名を呼びかけても署名は1万筆しか集まらず、残りの4万筆は若者たちが長崎の佐世保で一人一人に会って「話だけでも聞いてください」と署名を集めたものだったそうです。人の心を動かすのは、地道な活動だったんですね。

公正な移行を行うために

カナダ、ニュージーランドでは、税金を使って古い産業の従事者に職業訓練を行い、持続可能な産業への転職を国ぐるみで進めているようでです。
そんな公正な移行へ辻井さんが関心を寄せていた時、印象的な3つの出来事が起こったそうです。

  • 「建設業も変わらなくてはいけないと感じている」と大分建設業の連盟の高い地位の70代の方が辻井さんに連絡をしてくださる。
  • パタゴニア店舗で1万円を寄付してくださるお客様がいた。
  • 映画の上映イベントで10万円を寄付してくださった方が、ダム建設推進側で働く方だった。

これらの出来事から、辻井さんは建設側や行政、などという個人の属する枠組みを取った時に、一人だけが痛い目を見たり、恨まれたり、失業しないような話し合いを、個人名を出さず行おうと考えているそうです。

「誰一人傷つかない枠組みっていうのはいいですよね。私たちは議論をする時に、悪いことをしたいと思っているわけでは無いじゃないですか」と新井さん。

では、私たちには何ができるのか。

今まで、立場にとらわれて対立することなく、お互いが持続可能な解決策を見出すために対話をしていくことの重要性についてお話を伺いましたが、では実際に当事者ではない私たちには何ができるのでしょうか。

例えばこのようなイベントをもう一回やるにはどうしたらいいのか?「一人一人が思いを伝えていくことが大切だ」と新井さん。確かに、このイベントの参加者皆んながイベントの良さを伝えていけば、次回のイベントを開催し活動を継続して広めていくことができます。

正論を言っていても、人は動かない。仕組みを作ることが大切だ」と辻井さん。
仕組みづくりに必要なのは、2割ほどの分かってくれる人を見つけ、その人たちに合わせた仕組みを考えることだそうです。一人では知らないことが多くても、それぞれが持ち分野で一生懸命取り組んでいると、シンパシーが生まれる。結局はここでも必要なのは地道な人間関係なんですね。

人の役に立つことなんてやっていなかった。

最後にイベントのクロージングとして、辻井さんからお話をお聞きしました。
「僕はパタゴニアの日本支店長を11年ぐらいやっているんですが、それまで人の役に立つことは何もやっていなかった。どうやったら仕事のサボれるかを考えていた。昔と今では充実感が全く違う」と辻井さん。

今の社会は複雑で、知らなくても何かに加担してる可能性がある。
何もしないのは、現行の仕組みを正しいものとしているということでもあります。
私たちはもう一度、自分が社会問題を含めた身の回りの出来事の解決の一部になるか、問題の一部になるかを問い直してみる必要があるのかもしれないですね。

行動は必要。でも人にはそれぞれタイミングがある。

「イベントを聞いて、良い話を聞いたなと思うだけでは、何も変わらない」と新井さん。「一方で、人には色んなタイミングがある」と辻井さん。
不幸になりたい人は少なく、皆不幸は克服しようとする。
不幸に見舞われた時に、これは取り除きたいなと感じる物事に自分だけではなく人のことが入ってきたら、その問題に取り組めばいい。
自分も何か社会や人の役に立たなくては、と苦しくなる必要はなく、自分が幸せに生きるために関わりたいというものがあった時にその問題と向き合い行動する。この辻井さんの言葉に、私は強く勇気づけられました。

多くの正論と、それぞれの意見の主張ばかりが見られる社会問題。
その中で実際に当事者の方と関わりながら、手足を動かしてきた方だからこそ語れるトークの内容に、多くの視点を頂きました。

社会問題はつまり、私たち人間が社会の中で生きていく上で生じる問題のことです。
それはなにも私たちと関係ないところで起こっている大きなことなのではなく、人と人との関わりの中で生まれるものです。
今回のイベントでのお話を聞いて、私も日々生活をしていく中で、自分が他者と向き合う際に、どう異なる意見を持った上で協動していくか、の参考にしようと思いました。

今回、この上映会を開催してくださったThe Life Schoolディレクターの高梨さん、当日スタッフの皆さんありがとうございました!

hotaru river

★10月29日に、今回登壇されたeumo代表新井さん、Wisdom2.0 Japan代表荻野淳也さん、ガイアックス代表上田さんのトークセッション「資本主義のネクストステージ ~共感資本社会、シェアリングエコノミーの未来」を開催しました。イベントレポート後日公開予定!

★eumo新井さんのお話は、主宰されているeumoアカデミーのほか、元ソニー上席常務の天外伺朗の「フロー経営」を伝える天外塾で、2020年新井塾「共感通貨で切り拓く新しい社会」で聞くことができます。また、2020年秋には、Gaiaxの木村智浩が講師となる木村「ティール時代の教育と子育て」が開催されます。

★この上映会の参加者有志で追加企画が実現しました!
11月18日(月) 12:00〜13:30 GRID Cinema パタゴニア創業者製作 常識を覆した挑戦者たちのドキュメンタリー「ダムネーション」上映&ランチ会


山崎 嘉那子

大阪府出身、同志社大学グローバル地域文化学部アジア・太平洋コース卒業。管理本部 ブランド推進室。芸術を通して、よりよい人との向き合い方のできる社会を考えたい。