2022年7月にガイアックスにジョインした山本さん。現在はご自身の会社「株式会社カタルシス」を経営をしながら、5足のわらじを履くポートフォリオワーカーとして働いています。
前回の記事では、起業家であるにも関わらずあえて新卒入社を決めた理由や、数多くの活動に取り組む山本さんの情熱の源泉についてお伺いしました。
あれから5ヶ月が経ち、ガイアックスでどのような挑戦をしてきたのでしょうか?
入社したからこそ見えたものや、働き方の変化、今後の目標についてもお聞きしました。
山本 周雅
web3事業本部・DAOコンサルタント
京都大学総合人間学部7年。株式会社カタルシス 代表取締役/京大起業部 部長。 「個人や組織の創造性の開花」をテーマに、語り合いの場の創出、ビジネスコンテストの開催、暗黙知の伝承などの活動を展開しています。
DAO初心者から5ヶ月で専門家へ。走りながら学び、アウトプットする日々
ーガイアックスにジョインして5ヶ月が経ちましたが、どのような業務を経験されましたか?
主にDAO関連のコンテンツづくりをしていました。DAOの導入を検討している企業向けの研修資料作成やコンサルティング、その内容をより一般向けに編集してYouTubeで発信したり、eBook(電子書籍)の出版も担当しました。
ー5ヶ月間でコンサルティングや出版までされて、濃い時間を過ごされたのではないでしょうか。
そうですね。eBookはもともとTwitterで発信していた内容に加筆してまとめ直し、DAOの基本が学べる解説書になっているのですが、出版が決まってからの準備期間が約1ヶ月半しかなくて。解説書をつくるにはDAOを熟知している必要がありますし、自分の思想や考察も入れないとオリジナリティが出せません。僕自身がDAOを知ったのはガイアックスにジョインしてからなので、勉強しながらアウトプットしている状態でした。
また、DAOの研修には法律面のことも盛り込んだのですが、まだまだ未整備な部分が多く、僕も法律の専門家ではないので伝えるのが難しくて。クライアントがコンサルティング会社の方だったので緊張しましたが、現場に出る以上は聞かれそうなことを想定し、できるだけの準備をして臨みました。
1人で事業をしているだけでは得られなかった「短期・長期両方の価値」を最大化する視点
ーもともとご自身で事業を運営されている山本さんですが、ガイアックスに飛び込んでみていかがですか?
それまでの自分の仕事の進め方とは違う、ベンチャーのスピード感に驚きました。
僕は研究者気質が強く、プロダクトの質を高めてから世に出すことがいいことだと思っていました。だからeBookを出すときにも、自分が十分に知らないことを人に教えることに違和感があって。でも、スピード感を持って情報発信することで、「ガイアックス=DAO」のイメージが醸成されていく流れを目の当たりにできたのは大きな経験でした。
DAOのコンサルティング事業でプレスリリースを発表したときにも、複数の大企業から依頼が入り、ベンチャーが最初にポジション取りすることの大切さを学びましたね。
ー仕事の進め方の違いに対してはどのように向き合ったのでしょうか?
eBookに関しては、「知識をつけるしかない」と思ってとにかくインプットしました。まずは、自分のなかで「DAOのおもしろさをイキイキと語れるくらいになればOK」と基準を設けて、そこからは本を読み漁ったり、メディアに課金して質のいい情報を得たり、web3領域に詳しい知り合いとディスカッションをしたり。やれることをひたすらにやり尽くすことで、このスピード感に食らいついていました。
ーベンチャーならではのスピード感を経験されたのですね。一緒に働くメンバーから学ぶこともありますか?
上井さんと廣渡さんのコミュニケーションは見ていて参考になります。2人は雑談でもビジネスの話をしているのですが、プロモーションとマーケティングの話がほとんどで、ビジネスを広げる話をいつも楽しそうにしていることが新鮮でした。
以前のインタビューで、「アート・アカデミック・ビジネスの融合」の話をしましたが、僕のなかにアカデミックとビジネスの対立があって。短期的な価値を求めるよりも、研究者のような立場で長期的な価値を出すことに興味があり、プロダクトをよりよくする話につい意識が向いてしまうんです。でも、それだけではビジネスとして十分ではなくて、「もっとマーケティングの視点を取り入れないと広がらない」という課題感がありました。
いまは、学生起業した自分の会社の経営とはまた違うコミュニケーションに刺激をもらいながら、短期・長期両方の視点を持ち、折り合いをつけながらそれぞれの価値を最大化させる方法を学んでいます。
仕事を“あえて分けない”ことで脳内をシンプルに。5足のわらじを組み合わせ、シナジーを生み出す
ーガイアックスには、山本さんのように複数の仕事をかけ持つスタイルで働く“ポートフォリオワーカー”として働いているメンバーも多いですよね。どのようなマインドセットで複数の仕事を進めていますか?
それぞれの仕事を頭のなかでミックスして、あえて区別しないようにしています。
入社当時、僕の頭のなかには4つの仕事がありました。1つ目は僕が経営する「カタルシス」、2つ目はお寺でハッカソンをする「テラッカソン」、3つ目は個人活動の暗黙知伝承(ナレッジシェア)、4つ目がガイアックス。そこに起業部や卒論といった大学活動を含めると5つになるのですが、5つの変数が同時に動くと考えるとけっこう頭を使うんですよね。
なので、来年からは、カタルシスに暗黙知伝承とテラッカソンと起業部を事業として入れ込んでいこうと思っています。そうすればカタルシスとガイアックスの2本立てになるので、頭のなかがシンプルになりますし、それぞれを組み合わせてシナジーを生み出せれば一石二鳥ですよね。
ーポートフォリオワーカーとして働くことで、難しさを感じている部分はありますか?
自分が進めている事業やプロジェクトの状況によって忙しさが左右されるので、最初は優先度の調整が難しかったです。ガイアックスで進めないといけないプロジェクトがあるときに、ほかの仕事の決算時期が重なったり、プライベートが忙しくなったり。複数の会社で仕事をしていると休みも関係なくなってきますし、ペース配分に慣れるまでは苦労しましたね。
ただ、次々にやってくる仕事に応えるうちに仕事がどんどん早くなってきたのと、毎月の面談で報酬と業務量を相談する時間を設けるようにしたことで、だいぶペースが掴めるようになりました。
あと、「プロセスを重視されないこと」のいい部分と難しい部分も見えてきました。
DAOチームはメンバーそれぞれが自分の会社を経営していることもあって、基本的にアウトプット重視で仕事を進めています。プロセスを重視されないのは慣れると働きやすい一方で、大変な面もあります。とくにDAOに関してはまだ体系が整っておらず、研究に費やす時間が多いのですが、その時間をどう仕事として主張するかが難しいですね。
「どうせ打つならホームランを」。“研究者的起業家”として、後世に残るものをつくりたい
ー山本さんが次のステップを登るためにチャレンジしたいことはありますか?
「自分でDAOをつくる」が1つのテーマになりそうです。先日、10大学ほどの起業部が集まる機会があり、これだけ集まるならDAOで運営したらおもしろそうだなと思って。ガイアックスでDAOに携わるようになり、自分の既存事業にも影響が出ているのを感じているので、暗黙知伝承や飲食店、起業部などをDAOと組み合わせて新しい価値を生み出せないかなと考えています。
とはいえ、いずれはガイアックスかカタルシスのどちらかに絞って、自分のリソースをより集中させて事業を運営していきたいなと思っていて。30歳になる頃には、僕自身のテーマである「アート・アカデミック・ビジネスの融合」を含めて手がける仕事の種類を充実させていきたいです。
正直いまは大学活動まで手が回っていないのですが、DAOの学術論文を書いたらおもしろいだろうなって。僕は本業が研究者だと思っているので、研究者を軸とした起業家像を模索していきたいですね。
ー山本さんは常に大きな目標を見据えている印象があります。やはり目標は大きく持ったほうがいいと思いますか?
「一度はホームランを打ってみよう」という気持ちで挑戦するのが大切なんじゃないかなと思っています。
去年までは、目標を大きく描く必要はないかなと思っていたんですけど、今年アメリカに行って規模感の違いを目の当たりにしたことで考え方が変わってきました。
日本で事業を小さくやったとして、周りにいる人はカバーできても、後世に残ることはできないかもしれない。それに、ホームランを打とうと挑戦していればヒットを打てるようになるはずだし、プロとしてそこまで全力を出せたら悔いが残らないだろうなって。
学んだ分は絶対に自分の力になるからリスクはないし、お金やいろいろなものは後からついてくると思います。なので、それなら「スター選手を目指すほうがいいな」と、ここ1年でマインドが変わりました。
ーこれから起業したい若者にアドバイスをお願いします。
地方学生なら、長期インターンでも業務委託でも企業に一旦入って、「企業のなかで仕事をする経験」を積むことをおすすめします。卒論でも事業でも、何かをつくるときにオペレーションやプロジェクト管理のスキルは絶対に必要になりますが、自分でゼロから学ぶよりも企業に入って経験するほうが先輩たちからノウハウを学べますしね。
起業するかイントレプレナーになるかは状況にもよりますが、事業をつくる経験は必ず自分の糧になるはずです。僕自身も、ガイアックスで事業をつくるなら共同出資やカーブアウトでの会社設立を目指していますし、若いうちからどんどん挑戦してみるといいのではないでしょうか。