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日本初、「DAO型入社式」を実施。分散型自律組織は社内イベントをどう変えるのか?

  • 最終更新: 2023年9月6日

2023年4月、ガイアックスは日本初となるDAO(分散型自律組織)による入社式を開催しました。

DAO型入社式は、ガイアックスのブランド&カルチャー推進室と、部署を跨いだ有志で社内イベントの企画・運営を中心にカルチャー推進を行う「カルチャー大会議」のメンバーが旗振り役となって発足。経営会議メンバーや事業部長、卒業生やインターン生、また本来であれば祝われる立場の新入社員の有志もDAOに参加し、迎える側と迎えられる側の垣根を越え、新たな仲間が増えたことをみんなで祝う場となりました。

日本初、ガイアックスが「DAO型入社式」を開催! 〜新入社員を、祝う立場のDAO仲間としても受け入れ〜
今回インタビューしたのは、ブランド&カルチャー推進室の中津花音(なかつ かのん)さん。社内DAOによる会社イベントはガイアックスでも初開催ということで、「入社式が開催されること」を担保する統括者としてプロジェクト進行を支えました。
これまでも会社合宿やGaia kitchen(社員総会)などの社内イベントの企画・運営を幹事として率いてきた中津さんに、入社式にDAOを取り入れた背景や、従来のイベントとの違い、DAOでプロジェクトを進める上で必要なことなどをお聞きしました。

中津 花音

ブランド&カルチャー推進室 マネージャー

2019年にガイアックス新卒入社。新卒採用チームでの内定者インターン、ブランド推進室での採用広報業務に携わった後、新卒採用の新規事業の立ち上げに参画し、事業運営全般に関わる。2022年10月よりブランド&カルチャー推進室に所属。「幸せを自分で創る人で溢れた社会をつくる」というミッション実現のために、ガイアックスの場を活かし、人と人をつなげて新しい社会をつくりたい人。

日本初の試み「DAO型入社式」は、組織カルチャーとDAOとの“親和性”から誕生した

「DAO型入社式」の取り組み内容について教えてください。

DAO型入社式は、担当者が企画運営するのではなく、有志が DAO のメンバーとなり、意思決定と運営プロセスへ自律的に関与していく仕組みです。
今回は、「ガイアックスの関係者であれば誰でも参加可能」を前提として参加者を募り、54名のメンバーがDAO型入社式に参加してくれました。

DAO内では、メンバーは「コンテンツの提案・議論」「投票」「タスク実行」の3つに自由に参加できます。
従来の入社式は特定のプロジェクトメンバーで企画・運営をしますが、今回はDAOに参加した54名がすべての情報にアクセスできるようにし、誰もが企画に携われる状態をつくりました。
投票に関しても、企画会議で出てきたアイディアに対して全員が意思決定プロセスに参加できるように設計しています。一般的な入社式では社長がスピーチしたり、新入社員が自己紹介するのがお決まりの流れだと思いますが、今回の入社式ではスピーチしてもらう人も投票で決めたんです。
投票結果を受けて企画が決まった後は、必要なタスクを洗い出し、DAO内で担当者の募集と応募を経て実行に移していきます。
DAOのメンバーにはこれら3つの取り組みについて、好きなタイミングで好きな役割を自由に選んでもらい、それぞれ実行してもらいました。

今回、入社式にDAOを取り入れたのはどのような背景があったのでしょうか?

web3・DAO領域をガイアックスが掲げるミッション「人と人をつなげる」を実現する可能性を秘めた新たな領域であると捉え、2022年から同領域での事業を開始していた流れから今回の企画が生まれました。DAO型組織によるシェアオフィスの運用や、既存のNPO組織のDAO化、自治体連合型のDAO化など、多くのDAOの立ち上げ支援を手がけていたのですが、企業内でDAOを取り入れた事例はこれまで国内ではほとんどなかったんです。

こうした背景から「まずはガイアックス内で社内DAOを立ち上げよう!」という機運が高まっていたところ、2023年の新入社員が入社する時期がちょうどそのタイミングに重なって。時期的にも3年ぶりに対面で入社式を開催できるということで、「ガイアックスらしくみんなでお祝いをしよう」と、今回のDAO型入社式が立ち上がりました。

DAO入社式2023

ガイアックスの社内DAO第1弾として、DAO型入社式が発足されたのですね。

そうなんです。入社式と歓迎会をよりよい時間にするためには、一部のメンバーだけでなく、誰もが新入社員を歓迎している状態であることが大切だと考えていて。DAO型入社式では、誰もが同じ情報に触れられ、その上ですべてのメンバーが提案・議論できる状態を目指しました。
また、ガイアックスでは「フリー・フラット・オープン」と呼ばれるカルチャーが生まれるほど自主自律性を大切にしているので、各メンバーがそれぞれ必要なことを自分で考え、自分で実行できる環境づくりを大切にしています。そんなガイアックスの価値観と“主権者が存在しない”DAOの枠組みは親和性があり、社内にDAOを取り入れることで「メンバーの一人ひとりが、会社づくりに参画している実感をより得られるようになるのでは?」という想いもありました。
なぜガイアックスはweb3・DAOに注力するのか?

DAO型入社式のリワード&セキュリティ設計の鍵は「参加ハードルをどこまで低くできるか」

リワード(=タスク実行に対する報酬)はどのように設計しましたか?

そもそも、労力を投下してくれるメンバーに対しては、相当の報酬はあるべきと考えていて、有志だからとただ働きになることは避けるのが大前提です。
なので、会社から支払われる給与とは別にガイアックス独自のトークン「GR(ガイアックスリワード)」を付与する形にしました。
一般的に、トークンの価値は流動的なものですが、ある程度の基準がある方が運用しやすいと考え、今回は作業時間15分あたり1GR(300円相当)としています。それによって、参加の心理的ハードルを下げられますし、専門的な知識が必要なタスクの場合は補正をかけます。
リワードについては自己申告制ですが、貢献度の妥当性についてもDAOのみんなで議論して決めていきました。
付与されたトークンは投票に使ったり、サービス利用券などの景品と交換できるようになっており、DAOに貢献するインセンティブを高めてくれる役割があります。

DAO入社式

DAOを取り入れる上ではセキュリティ面も気になるところですが、どのようなツールを活用しましたか?

コミュニケーションツールとして使用したのはDiscordです。情報やプロセスをオープンにするために、DAOメンバーにはDiscordに入ってもらい、そのなかで投票チャンネルや議論チャンネルをつくりました。
Discordは世界中の誰もが参加リクエストを送ることができるため、今回はDiscordへの参加希望者には事前にトークンを発行し、トークンを保有しているガイアックスのメンバーからのリクエストであることを管理者が確認することでセキュリティ管理を担保しました。

加えて、投票にはSnapshotというツールを活用しました。
使用ツールが多いと複雑そうに見えてしまい、参加率が下がってしまいます。そのため、ツールの数や参加メンバーにアクションしてもらう内容を絞ることで、参加ハードルを下げる工夫をしました。

「54名での議論」をファシリテーター要らずで実現。DAO型入社式における議論の進め方と利点とは

プロジェクト推進の面についてもお話を聞かせてください。DAOとはいえ、リーダーのような存在は必要になるのでしょうか?

明確なリーダーがいるわけではないのですが、最初は「企画の種」を出す人や、旗振り役が必要になります。今回はガイアックスのカルチャー推進メンバーが主体となって、ツールの準備やみんなが参加できる環境づくりを行いました。
そうやってある程度の土台をつくった後に、DAOメンバー全員で議題を決めるところからはじめました。
たとえば、序盤は「そもそもDAOって何?」という人も多かったので、1回目の議題はDAOについてのレクチャーを取り扱いました。その時間内に次の議題もみんなで決めて、オープンチャットで告知をしていきます。ミーティングに参加するメンバーは固定されておらず、その時々でさまざまな人が入れ替わり立ち替わりで参加していました。

DAO入社式2023

DAO型入社式にメンバーを巻き込むために工夫したことはありますか?

立ち上げ当初は、「DAOを取り入れることでどんなポジティブな影響があるのか?」について、私たちが描くビジョンをいろいろなメンバーと共有し、想いに共感してくれる人を集めていきました。
その後は、メンバーに主体性を発揮してもらうため、情報やプロセスの公開は徹底して行い、オープンチャンネルで誰でもチャットを見られるようにしたり、ミーティングを行う際にもDiscordのAMAというボイスチャット機能を使うことで誰が参加しているか分かる仕様にしたり。議事録も公開して話している人や内容まで見える状態をつくり、ときにはチャットで特定の人にメンションを飛ばして会話に参加してもらうようにするなど、みんなの参加者意識を高めるような工夫もしました。

DAOの場合はメンバーが多様化するほど、新しいアイディアが出てきたり、議論に新鮮さが増していくんです。

54名が参加して議論するとなると、収拾がつかなくなりませんか?

もしこれが一般的なミーティングだと、54名の参加者で結論を出すのはファシリテーターとして難易度が高いですよね。でも、DAOの場合はメンバーが多様化するほど、新しいアイディアが出てきたり、議論に新鮮さが増していくんです。
出てきたアイディアに対しては投票で結論を出すので、ファシリテーターのプレッシャーはむしろ軽減されますし、人数の多さに難しさを感じることはありませんでした。

それよりも、提案やタスク実行に参加するメンバーが増えるまでに時間がかかってしまったことが今回の反省点です。DAOを発足したのはいいものの、最初の2週間は決まったメンバーしか発言していなくて。
初動に時間がかかったことに対して、web3事業本部の廣渡さんからは、「もっと貢献のハードルを下げたほうがいい」とアドバイスをもらいました。今回は作業時間15分あたり1GRを付与する形にしましたが、誰かの投稿にスタンプを押すだけで1GRをもらえるくらいの気軽さのほうが参加ハードルが下がり、動き出しのスピードが上がったかもしれません。

DAO入社式

過去最高の「満足度9.2」をマーク。DAO注入で“参加者満足度”と“幹事負担の軽減”を両立する

DAO型入社式を実施してみて、反響はいかがでしたか?

入社式の参加者にアンケートをとったところ、過去3回の平均が10段階評価で7.6だったのに対し、今回は9.2の高水準となりました。
参加者に準備過程が見えていたことに加え、みんなで協力して会をつくりあげたことで、参加者の主体性や納得感が高まったことがこの結果につながったのだろうと考えています。
また、DAO型入社式の参加者には経営会議メンバーや事業部長、事業部・管理部メンバー、ガイアックス卒業生、採用選考中の学生、インターン生など、多様な属性の人が集まったことも大きな要因だと感じています。さまざまなメンバーが関わることでアイディアの多様性が増したことも、満足度の高さに影響しているのではないでしょうか。

当初はDAOによって社内イベントにどれだけ変化が起こるのか想像もつかなかったのですが、実際に取り入れてみたら「DAOをもっといろいろなイベントや会社のカルチャー推進に取り入れたらいいのではないか」という意見がたくさん出てきました。

主催者として、従来のイベント運営と比較してどのような違いを感じましたか?

イベント幹事特有のプレッシャーが軽減されたのは印象的でしたね。
これまで社内イベントを主催するときには、さまざまな事業部のメンバーに協力してもらうため、「参加することで何が得られるか」「どうしたら参加者の満足度が上がるか」に頭を悩ませることも多くて……。
一方、DAO型入社式では参加者がビジョン実現に向けて必要なことを議論し、みんなの意見が反映されて決まっていったので、幹事として「これで大丈夫だろうか?」と不安になることがなく、自信を持って開催することができました。

ほかにも、社内イベントを通じて生まれるメンバー同士のつながりの強さは従来よりも高く感じました。
DAOだと推進過程でメンバー同士の関係が深まっていく様子が見えるので、入社式を開催する前から会社としての一体感が生まれることを感じられたのは、これまでと大きく異なるポイントだったなと思います。

いままでは主催者としてメンバーに満足してもらうことに注力してきましたが、みんなもお互いがつながり、主体的に場づくりに参加することに喜びを持っていたのだと、今回の満足度から伝わってきました。

DAOを取り入れるなら「DAOらしい」マインドで。自律分散型組織のカルチャーは“みんなで”つくっていく

これから社内DAOに挑戦してみたい方に向けて伝えたいことはありますか?

今回DAO型入社式に挑戦してみて、DAOではタスクをスピーディーに消化することよりも、オープンな場に投げかけるほうが大切なのだとわかりました。
独りよがりな仕事の進め方ではDAOはうまく機能しなくなってしまうので、「みんなで考えて、みんなで決めて、みんなで分担して実行する」というようにマインドを変えるのが大事だと思います。
私自身もDAOらしい発想から逸れてしまうことがあり、つい「自分一人で決めたほうが早い」と思ったり、一人でタスクを実行してしまうことがありました。「参加者が増えない」「発言が出てこない」と焦る気持ちが湧くと思いますが、諦めずに巻き込んでいく粘り強さがDAOの成功には欠かせません。

ブロックチェーンビズニュースレター

今後はDAOでどのような挑戦をしていきたいですか?

イベントなどの単発企画だけでなく、ガイアックスのカルチャー推進やガイアックスコミュニティの活性化にDAOを積極的に取り入れていこうと考えています。
ガイアックスの現役メンバーや卒業生、投資先起業家、採用候補者の方など、ガイアックスの関係者なら誰でもDAOに参加して提案や議論ができ、ガイアックスコミュニティから面白い企画や取り組み、新しい事業などが生まれてくる場を育んでいきたいですね。

また、プロジェクトを単に推進するだけでなく、たとえば「そもそも夏合宿を開催するのか?」「夏合宿の予算を他の選択肢に移す可能性はないのか?」といったように開催する・しないの前提段階からDAOで議論してみたいです。一方的にカルチャーを発信するのではなく、みんなでカルチャーをつくっていくほうがDAOらしく、ガイアックスらしさも深まっていくのではないかと考えています。

インタビュー・編集:ヤマグチタツヤ
ライティング:黒岩麻衣

web3/DAOの最先端技術でキャリアを築く!

ガイアックスでは新卒・中途採用に加え、学生の長期インターンシップ採用を行っています。業界黎明期から取り組んできたブロックチェーン技術の最新研究・開発ノウハウをもとに、事業を推進しています。時代の最先端にある環境で、キャリアを築きませんか。


中津 花音
2019年にガイアックス新卒入社。新卒採用チームでの内定者インターン、ブランド推進室での採用広報業務に携わった後、新卒採用の新規事業の立ち上げに参画し、事業運営全般に関わる。2022年10月よりブランド&カルチャー推進室に所属。「幸せを自分で創る人で溢れた社会をつくる」というミッション実現のために、ガイアックスの場を活かし、人と人をつなげて新しい社会をつくりたい人。
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