Ishikawa-Jun

Google発のSIY(マインドフルネス・プログラム)を、日本に持ち込んだ荻野淳也さんが海士町に3月遊びに来てくれました。ちょうどコンパッションという本をMiLI(マインドフルネス・リーダーシップ・インスティチュート)として出される直前だったので、僕が自分の取り組みのキーワードになっている「やさしい」ということについて話す時間をもらいました。

やさしさは他者のためではなく、まずは自分のために必要なもの

潤:「やさしくすることが、自分自身の幸せにつながる」と思うようになったのは、淳也さんとのご縁にもなっている『サーチ・インサイド・ユアセルフ』の影響が大きいです。なのでビジネスをやるなら、これが他人にも広がるようなことをやりたいなあと思って立ち上げた事業が、タイでのお弁当教室でした。相手のことを思い、もっとお弁当をつくる機会が増えれば、この伝えたいことが広がるのではないかと。と同時に、タイの渋滞事情や大量の使い捨てによるゴミを目の当たりする中で、これまでは人間だけに向けられていたやさしくするという行為を、人間以外の自然に対してもやさしくしようと思うようになったんです。

現在は、相手の長期な幸せを願う、そして、ときどきアクションをするというのが、僕にとってのやさしさの定義です。長期的な幸せが何なのかはまだまだ試行錯誤なんですが、短期的に目の前の人が嬉しそうにすればいいわけでないというのが、僕の中での探求の大事なポイントかなあと思っています。

淳也さん:潤さんの話を聞いていて、やさしさを無理やり定義しなくてもいいのかなと思ったんですね。たぶん、やさしさっていう日本語からとらえる感じやイメージは、人それぞれあるかもしれなくて、なので、人それぞれにやさしさという概念があるとして、その重なりあうところを言葉にしてみると、やっぱり利他的な思いだったりとか、行為だったりとか、さっき言っていただいた長期的な幸せを願うということだったりとかが入ってくると思うんですね。

僕の視点からいうと、それは共感だったりとか、思いやりだったりとか、利他的な思いや行為が含まれてくると思うんですけど、では、なぜそれが必要かといえば、結局それは他者のためではなく、自分自身の心や身体を最適化するために、それらの感覚が必要なんだろうなあって。なぜなら、他者に対してそういうやさしさとか、思いやりとか、共感とかを示しているときには、自分自身がいい状態になっていて、そのいい状態というのは、オキシトシンとかセロトニンなどの幸せホルモンが湧きやすくなっている。つまり、リラックスができて、免疫力があがる状態になってくるので、もちろん他者のためでもあるのだけれども、まずは自分自身のためにやっていく、そんな自分ファーストという行為が大事なんだろうなあと思います。

ただ、やさしさの行為がいき過ぎると、本当は他者のためになっていなかったりとか、おしつけになっちゃったりとか、実は、見返りを求めた行為としてやっていたりというのも一方である気がしています。全員が全員ではないと思うんですけど、自分がやさしくしたんだから、他者からもやさしくされるだろうみたいな・・・。これが少しでもあると、あり方が違うのかなと思うんですね。なので、自分自身をリフレクションするということが常に必要なのではないかと思います。

潤:僕にとっては、もともと他人のために行うというのはデフォルトではないということもありますが、淳也さんが今話していたことは気にはしていて、自分自身がやっていることが本当にいいことなのか、正しいことなのか、といつも確認しがちです。なので、そういう自分の性格もあって、ある意味、いき過ぎないようにしまいという力が自然と働いているのかなあと思っています。でも、まだまだ日々探求中ですけど(笑)。

junya_ogino
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人と人、人と自然のつながりのためのコンパッション

潤:淳也さんがよく使う言葉に“コンパッション”というものがあるかと思うんですが、なぜ淳也さんはそれが今必要だと思っているかというところを聞いてもいいでしょうか?単純に個人の幸せにつながるから、でもいいですし、その先に淳也さんが見ているものでもいいですし・・・。

淳也さん:僕はビジネスの領域にマインドフルネスを紹介した人って世の中的には言われているんですけど、そのマインドフルネスというのは、定義でいえば、今ここに集中している状態とか、注力している状態じゃないですか。でも、僕はそこから湧いてくる気づきも包含してマインドフルネスだと考えているんですね。さらに、ある意味乱暴にいってしまえば、個人の最適化というか、自分自身がいい状態になるとか、自分自身の幸せな状態をつくるっていうことだと思っています。

ただ、個人の幸せといっても、この地球で生きていくには、人間として社会生活を営んでいくためには、他者とのつながりが必須なわけです。生まれてこのかた、誰しも人から支援されたり、あるいは支援したり、そうして支え合って生きているじゃないですか。その時に、人と人とのつながりの中で必要なもの、それがコンパッションだと考えていて、なので、マインドフルネスとコンパッションはコインの裏表と言われているわけです。どちらかを実践していけば、どちらかが基礎となっていく、決して離れ離れにすることはできないものなんです。

僕がコンパッションという言葉を使っているのは、人とのつながり方で一番強力なものだと思っているからです。他者のことを思いやるとか、他者が本当に幸せであるように、本当にいい状態になるように願い、それが自分のためにもなるつながり方だなあって。他のつながり方でいうと、例えばお互い依存しあう“共依存”もあるだろし、お互い利用しあう“ギブ&テイクの関係性”もあるかもしれない。けれども一番強いつながり方というのは、思いやりとか、やさしさとか、共感とか、そういうものをベースにしたもんじゃないかあと思います。

潤:人と人とのつながりのためのコンパッション、つまり、それはやさしさであったり想いやりであったり、僕もそうだなと思うんですね。それと同時に僕の中では、あまり線引きがないかたちで、人間に対してのコンパッションと自然に対してのコンパッションが、同じくらい大事な気がしています。先ほども話したんですが、僕はタイに行くまでは、自分があまりにも人間以外に目が向けられていなかったなと気づいて、今は自然にも同時に範疇に入れたんです。人へのやさしさと自然へのやさしさ、あと僕は自分に厳しくあたりがちなので自分へのやさしさ、この3つが僕がいいと思う自分の最適化のためのお題目みたいなものなんだろうなあって。そしてそれが結果として、全体への最適化、自分と全体との関係性の最適化へとつながるのではないかなと聞いていて思いました。

淳也さん:僕が目指したいのもそこですね。個人の最適化と全体の最適化。個人の最適化だけなら、ヒマラヤの山奥にいって瞑想をしていればそれでいいのかもしれないんですけど、僕はそれは目指したくない。

潤:淳也さんは全体の最適化を何のためにしようとしているんですか?

淳也さん:それは宇宙全体の幸せのためというか・・・(笑)。シンプルに自分のチームとか、会社とか、それぞれが幸せな状態になると、自分自身もハッピーだし、相手もハッピーだと思うんですよね。僕の今のパーパスは「一人ひとりのアウェアネスを高めて、社会や世界の変容を起こす」なんですけど、その変容された状態というのが、個の最適化と全体の最適化が両立している世界っていうことなんです。それがそのさっきの話でいうと、ディストピアの最適化ではなくて、ユートピア的な、みんなが幸せな状態で最適化しているということ、その変容をいかに起こしていくというのが、自分の人生をかけてのミッションなのかなあと。

潤:そして、それをするためのツールとしての、マインドフルネスとコンパッションがあると・・・。

淳也さん:アプローチとしては何でもいいんです。たとえば、ティール組織という切り口かもしれないし、NVCという切り口かもしれない。たぶん色々切り口があるとは思うんですけど、いろんなツールを使ったとしても何を目指すのかが大事で、さっき僕が話した「アウェアネスを高めて社会の変容をはかる」という意味では、マインドフルネスとコンパッションが最低限ベースにないとまずいなあと思っています。なので今はそこにフォーカスをしてやっているし、それを伝える手段としてコンサルやトレーニング、ファシリテーションやコーチングをしている感じですね。

junya_ogino
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飛び込んでから、具体化していくのでいいんじゃないですか

潤:話は少し変わるんですが、先ほどのタイでの新規事業では、色んな考えが複雑になりすぎて、僕の中で収集がつかなくなったんですね。理由ははっきりしていて、僕はやりたいことの解像度が低いままスタートしちゃえるし、スタートしちゃうからだということは気づいていて、自分としてもどこかで違うのかもしれないなと思いつつも進めてしまっていました。

そんなタイでの学びから、海士町では、プレーヤーとして巻き込む、ビジネスにしないということを掲げ、人とやさしい、自然にやさしい、自分にやさしい生活モデルづくりを探求しています。もし将来、この生活モデルの解像度が上がったときに、それを他の人にシェアしたい気持ちがあるので、今は定期的にこのプロセスや思ったことを、他の人に興味を持ってもらえるようにブログなどの記録として残していき、それが誰かにとっての、こういうのもあるよねっていう一つの生活モデルになればと考えているんです。以前、僕がアフリカや北米を旅したときに、世の中には生活モデルって色々あるんだなあって思った経験が大きくて、僕の生活モデルも、そんな例の1つとして参考にしてほしいなあって思っています。

淳也さん:そうなんですね。話がつながるかどうかはわかりませんが、朝、オンラインでマインドフルネスをやっているじゃないですか。今でちょうど3週間くらいになるんですけど、当初の僕のイメージは、まさにコロナが広がっている状況で、自分もニュースなどをみると不安や恐れが沸きやすくなっているから、まずは自分を整えよう、自分を最適化しようと思って始めたのがきっかけなんですね。初めは10人くらい一緒に座ってくれればいいなと思っていたんですけど、そしたら3週間でそのfacebookグループが800人になって、現在では毎回100人近くが参加してくれているんです。

それで何が言いたいのかというと、出発点は自分のためにやってOKなんだなあって。 “みんなのためにやってやるぞ!”とか、“これ必要でしょ?”とかではなくて、「いや~、僕が整えたいから一緒にやろうよ」っていう感じでシンプルだからこそ伝わっているだろうなあって感じています。社会に対してのインパクトっていうのは、なんかそういうところから始まるって思うんですよね。さっき潤さんの中での解像度が低いうちに始めちゃう癖があってという話があったんですけど、解像度が高まって、メッセージがシンプルでアクションがシンプルだと、スーっと広まっていくもんなんだろうなあと、朝のオンラインを通して今感じています。

潤:僕の場合は、よりシンプルではなくなった感じです(笑)。初めは人にやさしいだけにフォーカスをしていたんですよね。これがいいと思って、どうやったらできるのか、ビジネスをしながら何回も試してみたけど、結局ビジネスの中では上手くいかなかった。それで、次はビジネスにしないことにして、さらに人にやさしいだけはなく、自然にやさしい、自分にやさしいまで要素を増やして・・・、1個で上手くいかなかったから、2個くっつけちゃったみたいな(笑)。

これは能力だと思っているんですけど、モヤっとしていても踏み込めるので、実際に踏み込んでみて、プロジェクトを進めながら、失敗もしながら具体化していくという感じです。海士町にきてから半年くらいになるんですが、結果としては、こっちかなという方向性が見えてきた感じがするので、次のブログあたりではようやく具体化できるかなあと思っています。

淳也さん:別に具体化しなくてもいいんじゃないですか。潤さんの強みは飛び込んで上手くプロジェクトを進めるとか、プロジェクトを最適化していくってことだから、なんだろう、そのやさしさというテーマを推進しようとしている方々をサポートしていったりとか、そのやさしさというところで自分的に紐づくものであればサポートするとか、何かそういうことで色々実現していくんじゃないかなと思うんです。『サーチ・インサイド・ユアセルフ』の出版のために、英治出版さんを紹介してくれたのもそうだと思うし、ウィズダム2.0もいい感じで飛び込んでもらえて、やってくれたわけじゃないですか。なので、それは今の感じでもいいんじゃないですか。

junya_ogino
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頑張りすぎではなく、頑張りたい自分に気づく

潤:先日、ご飯を食べながら、ふと、“今のこの状態で幸せに感じてしまっている自分がいる”、と思ったことがあったんです。まだ、自然や人や自分にやさしい生活モデルができていないのに、この時点でいいなと思っていていいのか、これに胡坐をかいてしまうんでないかと、ふっと不安にかられたというか・・・。でも、奥さんに話してみたら、「それでいいじゃない」と一言で(笑)。「目指すものがあって、その目指している状態の中で、少し前進している感じがしているでしょ。その少し前進している感じに幸せを感じているんじゃないの」って。だから、胡坐をかいてしまうという心配は不要だと言われました。このブログでインタビューをしてもらっている、けんちゃんにも話したら、「前に言ってなかった?」と言われて・・・(笑)。目指すことがありつつ、プロセスを楽しんでいるとは思っていたけれど、達成しないと幸せになってはいけないという自己暗示的なものがあったので、とっても新鮮だったんです。

淳也さん:それって20世紀型の価値観のトラウマですよね。達成しないと幸せになれないとか、頑張らないと幸せになれないとか。達成しなくても幸せにはなれるし、頑張らずに達成したっていい。もし頑張らなくて、パッと達成してしまったら、それはそれでよりいいんじゃないかなあと思ったり。

潤:でも僕は頑張りたいんだろうなあ(笑)。

淳也さん:潤さんはそれでいいんじゃないですか(笑)。

ただ、頑張るということで一つお話をしておくと、頑張りすぎちゃうことで、自己犠牲が発生したりすると思うんです。できる人ほど、できちゃうからどんどん成果を出そうとがんばるのだけど、いつの間にか過度になってしまって、がんばり過ぎてる状態になってしまう。さらにその状態のまま続けていると、そのがんばりを部下などの周囲に無意識に強制していたりするんです。よくある話でいえば、マネージャーが帰らないから部下もオフィスから出られないっていう雰囲気とかってあるじゃないですか。それっていうのは無意識に他者まで巻き込んでしまっているので、そこはアウェアネスが大事じゃないかなって思うんですよね。

頑張らないと達成しちゃいけないというような概念やフレームワークから脱却しないと、メンタルヘルスの問題なんかはなかなか解消されないのかなあって。例えば、会社の中でうつになってしまう人は、真面目な人が多いと思うんですよ。みんな頑張っているし、僕も頑張らなきゃいけないなあって。それで頑張るけれども、ストレス耐性がないから、他の人よりもバンと先に倒れちゃうみたいなことが起こってしまう。

僕は世の中に忖度しているつもりはないんだけど、忖度ではなくチューニングだと思っていて、なので言いたいのはさっきの話なんです。「自分の人生や世界を変える基盤として、マインドフルネスが必要なんですよ」って。だから、世の中の多くの人が所属していると思われる企業という中でそれが行われたら、きっと企業もよくなるし、企業もよくなれば社会も地域もよくなるし、まずはそのチューニングのために、経営者とか人事担当者とか、事業部長とかにあわせて本を出しているという感じです。

潤:僕も自分の今のやり方や目指している状態が最終系だとは思っていないので、今のものと違う軸やパーパスが見つかってもいいと思うんです。それで結果として、今やっていることと新しく見つかるものとの交わる部分っていうのが、さっき話していた、より解像度の高い状態なのかもしれません。いづれにしても、頑張ってみます(笑)。

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石川 潤

石川 潤

ガイアックス歴8年8ヶ月。そのうち、8年7ヶ月を海外での会社、チーム、事業立ち上げをリード。さやか(伴侶)、悠(4歳の子供)と海士町に引っ越し。Type-A Breakfast オーガナイザー(https://typeabreakfast.com/