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中国最優秀エンジェル投資家トップ30に選出。総額40億規模のファンドを設立するまでのキャリアとは?〜Gravity Venture Capital 戴周穎氏インタビュー〜

  • 最終更新: 2023年6月12日

 

2015年7月に北京でベンチャーキャピタル「Gravity Venture Capital」を立ち上げたばかりの戴周穎(タイ・シューエイ)さん。中国のネット企業のアーリーステージ、シリーズAに投資をしていくベンチャーキャピタルとして総額40億円規模のファンドを設立し、注目を集めています。優秀な会社や経営者に投資して、その会社の成長を一緒に創り上げていくこと、まだ形のないものに対して情報と経験と勘で将来輝く原石を探すことは、決して簡単ではありません。今回は、敢えてそのチャレンジに挑もうとしている戴さんにお話を伺いました。

働き始めの最初の時間が凝縮していると成長が早い

戴さんは、2005年4月にガイアックスにインターンとして入社、翌年4月からは正社員として参画、2007年8月に退社しました。同年10月からサイバーエージェントベンチャーズに転職、2008年5月からは北京事務所共同代表の一人として、投資の経験を積みました。2015年5月に独立し、Gravity Venture Capitalを立ち上げ、11月には中国最優秀エンジェル投資家トップ30の一人として選出された他、これまでも様々なアワードを受賞しています。

僕たちが手がけているシリーズA、スタートアップ企業に対するアーリーステージでの投資は、その結果が出るまでに時間がかかります。自分の仕事としてベンチャー投資に手応えを得たのは、始めて4,5年目でしょうか。2013年、サイバーエージェント名義で人民元でのファンドを設立するために20億円の資金調達を成功させた経験も、独立に向けて大きな自信となりました。Gravity Venture Capitalを創業する際も、ここのLPから初期投資を得たことが大きな後押しとなったんです。

学生時代、インターンとしてガイアックスに入社した当初は営業部に配属され、大手電力会社が運営するメディアの広告営業をおもに担当していた戴さん。テレアポ〜企画書作成〜訪問という一連の営業サイクルを繰り返して、ビジネスマンとしての基礎を学んだと言います。卒業後はゲーム事業部に参画、当時ガイアックスが事業として取り組んでいたオンラインゲームの海外営業を担当しました。おもに中国のゲーム市場を調べながら、アピールを続けていましたが、なかなか思うようにうまくいかないことも多かったようです。ガイアックスでの仕事から学んだ事は、どんなことだったのでしょう。

まず驚いたのは、人ってここまで働けるんだなと(笑)。自分も周りもみんな、当時は夜中の2時・3時まで働いていました。みんな、あついなー!と感銘を受けたものです。自分がここまで働けるんだという自信がつき、ビジネスマンとしての基礎が着実に身につきましたね。人生の中で働ける時間は限られてますが、その中で働き始める最初の時間って大事だと思うんですよ。その時間をぎゅっと凝縮してやれると、成長が早い。あと、悩んでいるときは、一番成長できると思っています。

今の仕事でも、90%はうまくいかない事ばかり。そんな中でも、どうやって気持ちよく周りの人たちの助けを借りるか、どのように周りにメリットのある形で物事を進められるかを、日々考え続けていると話してくれました。

振り返ってみるとガイアックスがよかったと思うのは、何も教えてくれないということ。自分で考えて、先輩から盗んでいくというスタイルだったので、その繰り返しでビジネスにおける思考回路を学んだと思います。あとは、当時のインターン生同士のライバルもいい刺激になりました。Find Travelの井出君LITALICOの長谷川君など、優秀な仲間が多かったです。

 

Gaiax IPO 10th anniversary

 

当時、会社の近くにあった寮で共同生活をしていた時期もあった戴さん。先輩であるAppbank村井氏ピクスタ古俣氏も同時期に入居していたことがあり、日夜問わない様々な社員とのやりとりで受けた刺激も少なくなかったでしょう。ちなみに、寮での濃密な生活を経て爆発的な成長を遂げることは、ガイアックスの(ごく一部の)関係者の中で「イナゴ理論」と呼ばれています。

中国のシェアリングエコノミーとスピード感・規模感の違い

日本では次々と新しいWebサービスが始まる中、10年以上継続しているネットサービスも少なくありませんが、戴さんいわく、中国ではほぼありえないとのこと。ものすごいスピード感で市場が変化していると話します。

たとえば、サイバー時代に投資した中国国内の物件販売コマースの会社を例にとってみると、2012年から2013年のシリーズAでは他の投資家からの調達も含めて800万USドル、続くシリーズBでは4500万USドルでしたが、今年2015年のシリーズCでは2億3000万USドルを調達し、時価総額は15億USドルになりました。それくらいのスピード感と金額幅でお金が集まって、ベンチャー企業が成長を続けています。衣・食・住・交通というネットビジネスのカテゴリにおいて、今、中国で注目されているのは交通と金融です。

中国でタクシーを拾うのは非常に難しいようで、先日UBERの一日の配車オーダー数を中国がアメリカを超えたとのこと。そしてこのUBERよりもさらに流通しているのが、中国版UBERの「Didi」という会社です。Tencentから資金調達してわずか3年、2015年9月にさらに30億USドル調達して、時価総額は150億USドルにもなりました。最近、相乗りのサービスも始めて順調に成長を続けています。このサービスによって、中国でのモバイルペイメントおよびO2Oが、いっきに普及したという要素もあるようです。

実は以前、このDidiがスタートアップの頃、投資を見送った経験があります。ヒアリングしたところ、経営者自身も明確なビジネスモデルのイメージを持っていませんでしたし、当時のスマートフォンの普及率から考えて、タクシードライバー自身がスマートフォンを持ってドライバーズアプリをダウンロードするという仕組みは、なかなか浸透しないだろうと思ったんです。ところが、みんなが信じ始めると、どんどん進化していく様子に驚きました。一億人が信じて物事が動くと、嘘のような話でも嘘じゃなくなる。この経営者だったら、みんな信じるかもしれないというアントレプレナーがたまにいます。以来、そういう経営者とのタイミングを逃さないように気をつけています。

また、食べ物に関連するシェアリングサービスもトレンドの一つだそう。お母さんの家庭料理をシェアする「觅食(mishi)」というサービスは、母の味が恋しい一人暮らしの人たちが、家庭料理を作ってくれる人の家に惣菜を買いに行けるというものです。
そして事業規模として中国で一番大きく占めるのは、P2Pのお金の貸し出しだと言います。自分の貯蓄のうち余剰金をプラットフォームに出し、借りたい人たちを探してマッチングするサービスは、無担保無保証の代わりに金利が高く、たとえば100万円貸して、年間24万円返ってくるというもの。借り主は、民間のお金を借りるしかない小さな事業者が多いそうです。

中国のユニコーン企業48社のうち上位3社は金融系が占めていて、1位には460億USドルの評価額がついています。今、僕たちが一番注目しているのは、シェアリングエコノミーによって生まれる新しい金融商品です。たとえば、ある物件を2000万円で購入してAirbnbで運用したところ、年間200万円の収入が得られるとします。10%の利回りのある金融商品は悪くありません。こうした状況でインターネットを活用して、複数の投資家が複数のシェアリング物件に投資できるようなプラットフォームサービスに対して、投資を始めています。また、日本でも先日始まった「Anyca」のように、物件だけでなくC2Cのカーシェアリングサービスも見据えています。

中国におけるインターネットは、もはや電気と同じように当たり前のプラットフォームの一つで、それに何かを組み合わせて新しい価値をどう創っていけるかがこれからのビジネスのおもしろいところだと思うと話す戴さん。自分と同世代からもう少し歳下の若者で投資に興味のある人たちに対して良い金融商品を提供したいという思いから、日本の物件販売コマースの会社にも投資し、上記のようなプラットフォームを創りたいと考えているそう。初期投資額や利回りの良さを考えると、アメリカやオーストラリアよりも日本やイギリスに可能性を感じていると言います。

徹底的に自分で考えて自分で動く。その先に見つけた投資スタイル

僕の投資スタイルは、バリューチェーンの上から下まで投資していくことです。たとえばゲーム業界で言えば、ゲームをつくる会社、ゲームを配信する会社、ゲームのためのコミュニティサイトを運営する会社など、関連するエコシステム全体に投資しています。このような環境をつくることには3つ理由があって、一つは投資先同士が協力しあえること、二つ目は中心的に投資する対象が見えやすいので資金調達に優位なこと。三つ目はエグジットの観点で、一つの会社に対して買収のオファーがあった際、横で繋がっている会社も同様に買収の可能性があったり、IPOする場合も同時期に合わせて相乗効果を狙いうるんです。

このスタイルは、サイバーエージェント時代に試行錯誤する中で磨かれてきたとのこと。結果にさえコミットすればやり方が自由なサイバーエージェントでの仕事を支えたのは、ガイアックス時代に身につけた徹底的に自分で考えて自分で動く、という姿勢だったのかもしれません。

 

Gravity Venture Capital

 

自身で会社を経営する家族が多かったことから、小さな子どもの頃から自分もいずれ独立することを考えていたという戴さん。とはいえ中国では、登記しているベンチャーファンドがすでに1万社もあると言います。その中で現在積極投資しているのは3割の約3000社。激動の中国ビジネスの中でGravity Venture Capitalを育てていくうえで、戴さんはどんなビジョンを持っているのでしょう。

常に会社や自分のポジショニングは考えています。いずれ中国でTOP3に入るようなファンドを目指したい。意識しているのは、セコイアキャピタルさんですね。これもまた勝手にですが、ライバルとしていい刺激になるんです(笑)。「違いが違いを生む」というのが、僕たちが大事にしている一つですが、”海外”、”ベンチャー投資”、”アーリーステージ”、という強みを組み合わせて、これからもオンリーワンを目指していきたいと思っています。


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