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「お寺を消費して終わりにしたくない」那智勝浦・大泰寺の住職が、世界を巻き込んで”空き寺”を救う理由

那智勝浦・大泰寺

和歌山県那智勝浦町。世界遺産・熊野古道の麓に建つ大泰寺で今、地方の小さなお寺と世界23カ国の共同オーナーをつなぐ、前例のない「空き寺再生」プロジェクトが動き始めています。
仕掛けているのは、日本初の株式会社型DAOを活用し、歴史的建造物への小口投資を可能にするガイアックスの投資先「PlanetDAO」と、大泰寺で宿泊事業を担うガイアックスの投資先「Otera Stay」。PlanetDAOはもともとガイアックス社内のプロジェクトとして生まれ、ガイアックスのカーブアウト・オプション制度を通じて独立した会社で、創業者の西村環希氏は学生インターンとしてガイアックスに参画した経歴を持ちます。
そして、現場でこのプロジェクトを支えているキーパーソンが、大泰寺の住職、西山十海(にしやま とうみ)氏です。地方寺院が直面する「消滅」のリアル、そしてDAOという仕組みがそれをどう変えていけるのか。住職本人にお話を伺いました。

那智勝浦・大泰寺
写真:大泰寺(和歌山県那智勝浦町)

住職への道と、ボロボロのお寺

西山さんが大泰寺の住職になったのは2016年のこと。それまでは東京で英語教師をされていました。
「もともとは実家が隣のお寺で、祖父も父も兼職していました。私も教員をしながらいつかは……と思っていましたが、予想以上に住職不足が深刻化して。大泰寺に住職がいないから『次の人が見つかるまでやってくれ』と頼まれたのが始まりでした。」
帰ってきた当時、お寺の状態は惨憺たるもの だったといいます。「壁が崩れ落ちたこともありましたし、境内は竹藪。夜になれば庭を鹿が 20〜30頭走り回っているような状態でした。檀家さんも減り、寄付も集まらない。お寺を維持しようにも、修理費だけで数百万円、数千万円単位でお金が飛んでいく。このままでは絶対に潰れる、という確信だけがありました」

那智勝浦・大泰寺
写真:大泰寺(和歌山県那智勝浦町)

「文化財は、放っておくだけでマイナスが積み上がる」

西山さんが「宿泊」や「キャンプ」という事業に舵を切ったのは、お寺が持つ「負の側面」を逆転させるためでした。
「お寺には貴重な文化財や山林がありますが、これらは維持するだけで膨大なコストがかかる『負債』になり得ます。例えば、お寺の山に10ヘクタールの土地があっても、管理できなければ台風で木が倒れて近隣から苦情が来る。経営にとってマイナスでしかありません。
そこで、お寺を宿泊施設(宿坊)やキャンプ場として、新たな価値を与えることにしました。お寺を宿坊にすることで、文化財は来て泊まるべき価値に変わりました。文化財に泊まれる。泊まることで、ゆっくりと文化財を見ることができる。宿泊に付加価値を持たせることができます。そして、宿泊料を文化財の修理費に充てることができれば、持続可能性が期待できます。
山もただ維持のために木を切るだけではマイナスですが、それをキャンパーのための薪やアウトドアサウナの薪に変えることができれば、伐った木が収入に変わります。予想していなかった副産物でしたが、キャンプを始め、庭に泊まる人が現れると人がいることを嫌がって鹿も寄り付かなくなりました。
山がある。文化財がある。それは、見方を変えれば、都会のお寺にはない地方のお寺の魅力ですし、そうしたものを求める方がいるというのは、こうしたお寺を未来に残すべき理由だと思います。」
現在、大泰寺の宿泊事業は「Temple Hotel Daitaiji」として、西山さんが事業パートナーとして招き入れたガイアックスの投資先の「Otera Stay」が運営しています。

那智勝浦
写真:テンプルキャンプ(RVパーク)

DAOとの出会い:世界23カ国が「お寺のオーナー」になる時代

今回、那智勝浦の色川地区の無住職寺院や旧寶向寺(ほうこうじ)の再生プロジェクトでは、PlanetDAOとの連携により、さらに踏み込んだ「小口投資による共同オーナー制」を取り入れています。PlanetDAOの仕組みでは、専用の株式会社型DAOが設立され、世界中の投資家がその株主となります。建物は宿泊事業を持つ資産として修復・運営され、地域住民にも世界の共同オーナーと並んで議決に参加できる仕組みが組み込まれています。
「過疎化が進み、地域だけで守るのは物理的に不可能です。でも、世界に目を向ければ『日本のお寺を守りたい』という人はたくさんいる。今回、イギリスからポルトガル人の共同オーナーのジュリオさんが来てくれましたが、彼ら出資者の8割は海外の方です」
「彼らはただお金を出しているわけじゃない。『日本のお寺はどういう場所なのか?』『瓦の修繕はどうやるのか?』と、ものすごく熱心に聞いてくる。彼らにとって、お寺の保全に関わることは人生を豊かにする体験なんです。これまでのお寺は、檀家さんという限られた人たちだけで支えてきましたが、これからは『世界中のファン』がオーナーになって支える時代。それが新しい『不特定多数の檀家制度』の形だと思っています」

PlanetDAO
写真:イギリスから旧寶向寺(和歌山県那智勝浦町)に来た共同オーナーとその友人

「100年後の国宝」を創るために

西山さんの視線は、数百年先を見据えている。
「いま私たちが守っている文化財も、もとはといえば当時の人たちが必死に資金を集めて作った『最先端の祈りの場』でした。そうした大事な場だからこそ、襖絵や彫刻、様々な技術で飾って来ました。皆さんはお寺に、古い場所というイメージがあるかもしれませんが、作られた当時における最先端のアートスペースでもあったと思います。こうして海外の人とつながる中で『お寺はこうあるべきだ』という既成概念を超えて、海外の方がお寺にアートを残したり、自分の作品を飾ったり、新しい価値を与えられ、数百年後には国宝になるようなことが起きれば、うれしいと思います。色々なアイデアが混ざりあうことで、お寺を誰もが気軽に来られる場所にしたいんです。人の役に立ってこそ、守るべき価値があると思います。」
「お寺を守ることは、地域の歴史や文化の拠点を守ること。那智勝浦という小さな町から始まったこのモデルが成功すれば、日本中の『空き寺』に新しい命を吹き込める。私は、お寺を消費して終わりにするのではなく、次の世代に、より輝いた形でバトンを渡したいんです」

PlanetDAO
写真:共同オーナーとその友人と西山住職

仕掛け人の素顔:ガイアックスから生まれた事業と、学生インターン出身のファウンダー

西村 環希
写真:株式会社Planet Labs 代表取締役 西村環希さん

西山住職と並走するPlanetDAOを動かしているのは、大企業ではありません。立ち上げたのは、PlanetDAOのファウンダーであり、運営会社・株式会社Planet Labsの代表取締役を務める西村環希氏。彼女がキャリアをスタートさせたのは、大学在学中にガイアックスのインターンとして参画したときでした。
その後の歩みは、スピードと型破りさで際立っています。2017年、まだ大学生だった西村氏はガイアックスのインバウンドチーム責任者に就任し、訪日外国人向けプラットフォームの運営や、芸者ショーなどのインバウンド事業を率いました(このとき手がけた芸者プロジェクトはFrance 24やnippon.comでも紹介されています)。2022年にはweb3の可能性を感じ、渋谷にweb3特化型コワーキングスペース「CryptoBase」を立ち上げます。2023年には株式会社Planet Labsの代表に就任。そして2024年、日本のDAO法整備を主導した殿村桂司弁護士のアドバイスを頂きながら、日本初の株式会社型DAOによる歴史的建造物への小口投資プロジェクト「PlanetDAO」を始動させました。
「日本にはお金では買えない非物質的な価値、自然、文化、歴史、安全といった、何百年もかけて形成される価値が豊かに存在します。これらに価値を見出し、世界と一緒に『支えられるもの』『共有できるもの』として提供することが、私の仕事です」と西村氏は語ります。
PlanetDAOは、ガイアックスのカーブアウト・オプション制度がどう機能するのかを示す代表的なケースです。社内で生まれた事業が独立した会社としてスピンアウトし、ガイアックスはオーナーではなく投資家として支える――ファウンダー本人が会社の株式(ストックオプション)を所有し、ガイアックスからは子会社ではなく、投資先として支援を受ける(ガイアックスに必要な支援を発注する)形で分社・独立する仕組みです。
これが、ガイアックスが「起業家を輩出するスタートアップスタジオ」と自らを位置づける理由でもあります。メンバーには早い段階から実務の責任を任せ、本人がやりたいことを応援し、独立して自分の会社を立ち上げたいと言えば、それを止めずに後押しする――。学生インターンから数年で自分の会社を経営する立場へ。西村氏のキャリアは、ガイアックスにおいては例外ではなく、むしろ典型的なパターンといえます。

「誰かのせいにしない人生」大学在学中から事業に取り組む西村さんが、2019年のガイアックス社員総会にて、「ガイアックスとの出会いは大学3年時。3日で休学を決めて東京に来た時の話を元に「決断力」の大切さについてお話されました。
そのスピーチは以下よりご覧いただけます。
「誰かのせいにしない人生」西村環希(2019年スピーチ)
那智勝浦・大泰寺
イラスト:那智勝浦の大泰寺

インタビューを終えて(編集後記)

西山住職の話は、常に「現場のリアルな数字」と「お寺への深い敬意」が共存しています。彼が求めているのは、一時的なボランティアではなく、持続可能な保存の仕組み。取材の前日・に、実際にイギリスから「共同オーナー」が友人を連れてやってきた光景は、彼が語る「新しいお寺の形」が単なる夢物語ではないことを証明していました。

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大学在学時より株式会社ガイアックスにて訪日旅行者向けツアーガイドのプラットフォーム運営やイベントショー事業の責任者を担う。2022年よりクリプトに将来性を感じ、web3特化シェアオフィス「CryptoBase」をオープン。2024年、日本初の株式会社型DAOによる歴史的建造物への小口投資プロジェクト「PlanetDAO」を創業。海外投資家から資金調達を実施している。
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