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“本音を話せる土壌”が組織にもたらした、深い相互理解という宝物

  • 最終更新: 2022年2月28日

リモートワークが普及したことにより働き方が多様化したことで、誰かの指示命令ではなく、一人一人が自分のビジョンに突き動かされて自走する自主自律的な組織づくりの必要性を感じる企業も多いのではないでしょうか。フラットな組織、挑戦の邪魔をしないカルチャーのガイアックスも、自主自律的な組織づくりに取り組んでいます。今回スポットライトを当てるのは、SOCことソーシャルメディアマーケティング事業部(以下、SOC)。ガイアックスの中の1つの事業部でありながら、リモートワークやクラウドソーシングの活用といった新しい働き方に早くから取り組み、自主自律的な組織づくりを進めてきました。

いち早く働き方をシフトしたSOCですが、様々な葛藤を経て現在に至っています。その過程でも、メンバーが一堂に会するミーティングの場において株式会社はぐくむの小寺さんによるチームセッションを取り入れたことは、重要なターニングポイントとなりました。今回は「組織変革物語」をテーマに、SOCが小寺さんとの関わりの中でどのようにして自主自律的な組織へと変革していったのか伺っていきます。

第二回「価値観の衝突が深い関係性をはぐくむ」

初回のチームセッションを経て、手放したり委ねたりすることを体感し始めたSOC。普段の業務に戻り、いざ実際にアクションを起こしていく際に、様々な難しさを感じ始めます。その中で起きた、事業部長・管さんと事業副部長・重枝さんとの間での激烈なやりとり。
二人の価値観が衝突することで、SOCはどのように変化したのか伺っていきます。

詳細は、『ガイアックス × はぐくむの自主自律型組織変革コンサルティング』よりご覧いただけます。

管 大輔

管 大輔

ソリューション事業本部責任者

2013年新卒でガイアックスに入社。2015年9月から事業部長を務め、クラウドソーシングの活用、リモートワークの推進など働き方の多様化を積極的に進めた結果、2年間で離職率を40%から0%に、売上が5倍に成長。2019年に本部長就任。2020年に新卒採用支援サービス『オンライン就活』を立ち上げ、事業責任者を兼務。複業ではコーチング事業を展開する会社を設立し、コーチング型マネジメントの普及に注力している。2019年の9月からオランダに移住。

小寺 毅

小寺 毅

株式会社はぐくむ 代表取締役

株式会社はぐくむにて、脱・ヒエラルキー、脱・指示命令コントロール型の組織を目指す方々を対象にした経営コンサルティング事業を展開。支援実績としては、Uber、DeNA、ガイアックスなど。 コーチとしては2006年から活動。現在は企業の社長や幹部を対象に1on1コーチングやチームセッションを実施している。コーチング研修や自主自律型組織を目指す上での各種研修講師も務めている。 書籍『奇跡の経営』で知られ、『ティール』でも触れられているブラジルのセムコ社が、自社の経営スタイルを広めるために運営している「セムコスタイル・インスティチュート」。その組織の中で、日本には数人しかいない公式コンサルタントも務めている。
*ブログ『社内コーチの働きかけが、他律型から自律型へと組織を突き動かす』
*参考『中断、さえぎり、自分の話……上司がついやりがちな人の可能性をつぶす12の聴き方』

重枝 義樹

重枝 義樹

ソーシャルメディアマーケティング事業責任者

デジタルマーケター。2014年ガイアックス入社。自らも企業のソーシャルメディアマーケティングの戦略コンサルを行いながら、部署のコンサルタント、運用支援チームを統括する。Forbes Japanや雑誌「AERA」等へSNSコンサルタントとして多数寄稿。

*第一回『対話による自主自律型組織へ – すべての始まりはあのチームセッション』

考えをオープンにすることで、メンバーも関わりやすくなる

ー今回からは重枝さんも交えてお話を伺っていきます。重枝さん自身は初回のチームセッションの場で何を感じていたのでしょうか。

重枝 実はコーチングを用いたマネジメントをSOCに導入したいと思っていました。個人の内発的なものを生かした上で、メンバーのパフォーマンスを高めていこうと。ただ、当時のメンバーにはそれが全く響かなかったんです。
初回のチームセッションで感じたのは、小寺さんが取り組もうとしていのはコーチングとは全く別物ということでした。コーチングでは個人の内発的なものにフォーカスを当てますが、一方のチームセッションではメンバー間の交流を重視していきます。その交わりから生まれるものは、全く予想がつかないもの。
自然に生まれてくるからこそ、誰かが所有してコントロールできないと思ったんです。誰の所有でもない集団の意思について考えることが全く新しい体験だったので、小寺さんにたびたび質問したことを覚えています。

小寺 コーチングとは全くの別物というのは、僕も大事に思っていることです。通常のコーチングでは1on1において上司と部下が関係性を良くするものですが、チームセッションではチームの関係性の土壌を豊かにすることで、結果的にチームのパフォーマンスが高まる可能性を模索していきます。

当時から重枝さんは、とても洞察力に長けており、組織を違った角度から捉えている方という印象でした。エネルギーが高いSOCの中に重枝さんのような人がいることで、もっとSOCは面白くなっていくなと感じていたのを覚えています。

小寺毅

ー初回のセッションを受けて、小寺さんはSOCに対して何をリクエストしたのでしょうか。

小寺 当時の管さんに対しては、責任感が強い人という印象を持っていました。チームセッションをするにあたっても、準備から当日の落とし所の設計までパーフェクトにこなすことが当たり前。それができる力があるからこそ、周りのメンバーも「管さんは優秀なリーダー」と捉えてしまうことが起きていたと思います。だからこそ、信頼できる人には大切な話はするが、そうではないメンバーに対してはあまり自己開示をしていないように感じていました。

組織の力をより高めていくためには、お互いの自己開示を通して関わり合いを生んでいくことが大切ですから、まずは管さん自身が考えていることを、等身大のままメンバーに共有してもらうことを強くリクエストしました。

 それまでは、全体の場では平然としていることが良いと思っていましたが、小寺さんのチームセッションやリクエスト内容を受けて、徐々に自分の心の状態をオープンにしていく取り組みを始めました。例えば、SOCのメンバー全員が見るメーリングリストで自分の想いを長文でシェアしたり、社内チャットツールで専用の部屋を作ってみたり。事業部長の私だけではなく、副部長の重枝さんや他のコアメンバーからも、考えていることを共有していきました。

いろんな方法で自己開示をしていく内に「管さんや重枝さんの考えていることが知れたので、関わりやすくなった」「もっと思っていることを言ってくれていいんだよ」という声をもらうことが増えていきました。

今までは自分一人で抱えなければと思っていたことも、意外とそうでもないんだと。自分の考えをオープンにしていくことで、他のメンバーにも仕事を任せられるようになると感じていたことを覚えています。

重枝 私は管さんが任せられるようになっていく過程を、「リーダーとしての管さん」が徐々に解放されていくように捉えていました。当時の管さんは、責任感が強くて、自分にも他人にも厳しい人という印象を持っていました。直接、彼自身は言葉にしていなかったですが、「リーダーは完璧であらねばならない」と思っているのではと。徐々に考えていることをオープンにして背負っているものを手放していくことで、周りの人への厳しさも緩んでいったように感じていましたし、管さん自身が笑う回数も以前に比べて増えていたようにも思います。

「正しさ」を超えて、腹の底からぶつかりあう

ーお互いに自己開示をしていく中で、どんな難しさを感じていましたか?

 メンバーへの本音の伝え方について、チームセッションの場で重枝さんと議論したことを覚えています。当時の重枝さんは、伝え方や話す内容を人によって分けているように感じ、どこか本音を伝えようとしないように感じていました。

私自身は、誰に対しても同じように「大人扱い」をすることで、その人が大人になっていくと思っていました。だから、必要以上に相手のことを考えて伝えすぎると、メンバーが甘えてしまうのではと思っていたんです。だからこそ、重枝さんの本音の伝え方に引っかかり、「そもそもの本音を伝えるとは何か」というテーマで重枝さんと話すことにしました。

重枝 僕は「人には段階がある」と思っていました。内容をストレートに伝えることが有害な場合がある。自分がやっているマーケティングの仕事も、ストレートに言って伝わらないことをどうするかを考える仕事。話す内容の伝え方は、人によって変えることが思いやりだと思っていました。管さんは、誰に対しても同じような内容で伝えるべきと思っていたので、ストレートに言わない私に対してイライラしていたと思います。

私と管さんのやりとりは、どちらが正しいとかではなく、お互いの価値観のぶつかり。

組織の変化をスピード感を持って進めるか、あるいは慎重にいくかの争いだったと思っています。スピード感を出していくと組織の変化が進むこともある一方で、組織が壊れるリスクもある。だからこそ、本音を全てオープンにしていくことには慎重にいくべきというスタンスをとっていました。

 チームセッションが始まるまで約3年ほど重枝さんと一緒に働いてきましたが、そこまでお互いを理解できている関係性は作れていませんでした。良くも悪くも「数字」という分かりやすい目標があったので、「どうやってクライアントを増やすか」の話ばかり。重枝さんが担当していることも、今までの数字の面で実績から放任気味でした。重枝さんに対しての違和感があったとしても、そこまで気にしていなかったと思います。

ただ、対話の場を通して本音を分かち合っていくうちに、自分の中にある小さな疑問にも気付くようになっていきました。重枝さんに対して思っていたことも、小寺さんの安心できるファシリテーションがあったからこそ、直接重枝さんに伝えられたと思っています。

ーお二人の対話を通して、何に気がついたのでしょうか。

 それまで重枝さんと話していた時間以上に、重枝さんの考えを深く理解できるようになったと思います。

大事にしている価値観は違えど、SOCを良くしたい気持ちは二人とも共通していて、組織の理想イメージも近しいものがある。ただ、それに向かう手段が違うだけだと気がついたんです。

それによって重枝さんの考えや取り組みの背景も理解できるようになり、任せるにしても自分ごとにしている状態で任せられるようになったと感じています。「関係性に深さが増した」というのが一番しっくりくる表現ですね。今思うと、小寺さんから「自分をオープンにする」という言葉をそのまま受け取って、本音をオープンにすることだけに固執していたようにも思います。

管 大輔

今までは価値観の話をしなくても組織は回っていた

ー管さんと重枝さんのぶつかりを、小寺さんはどうみていたのでしょうか。

小寺 SOCが変化していくために必要な関わりだったと思います。成果の話ばかりしていたお二人が、腹の底から人間としての価値観に踏み込んで話すことで、相互の理解がググッと進んだのだと。その場にいた他のメンバーもリアルな時間を共にしたことで、メンバー全体にもお二人への理解が深まったと思っています。

管さん自身も、今までは重枝さんに対して「重枝さんだから言わなくていいか」と遠慮しているようにも感じていました。正面からぶつかる会話を通して、管さん自身がよりフランクな気持ちで重枝さんに対してもコミュニケーションが取れるようになったと思います。

それまでは、お互いの価値観の話をせずとも組織がうまく回っていたのだと思います。成果が出ていれば良しとするという感じで。しかし、チームセッションを通じて成果以外の観点でもお互いや、組織を見始めたことで、それまでは素通りしたり、話題にしなかったようなことも対話できるようになったことで、理解が深まったり、新たに得られる視点が生まれてくるようになりました。本音を言葉にすることで出て来た声をチームセッションの場で分かち合ったことが、組織における関係性の土壌が育まれることにつながったと思います。

ー最後にお二人からも感想をお願いします。

重枝 チームセッションが始まってから3年ほどが経ちますが、今のSOCはメンバーが自然に本音を言える環境があると思います。「体調がすぐれないので返信が遅くなります」と、女性特有の体調不良もチームの中でシェアした上でフォローしあったり、定例ミーティングの場では時間を設けずともディスカッションが始まったり。お互いがオープンに話しあえているのも、チームセッションから始まった流れがあってのことだと思います。

 同じ言葉で伝えるにしても、より人間的な繋がりがあるほど相手に伝わりやすくなると思います。機械的に正しいことを言ったとしても、伝わっているようで伝わっていなかったり。その人のいろんな一面を理解した上でコミュニケーションを取ることで、お互いの関係性に深みが増していく。チームの中で齟齬が起きにくいコミュニケーションを取りたいと思っている人ほど、お互いの本音を分かち合うことが大切だと思っています。

次回予告

相互理解がぐぐっと深まったSOC。ライフチャートを用いたセッションで、リーダー管さんの涙が涙する出来事が起こります。管さん自身がリーダとしての呪縛から解き放たれ、等身大の自分が分かち合われていき、メンバーの人間らしさも徐々に表現されていきました。管さんの涙にはどんな意味があったのか。リーダーが人間らしさを取り戻し「愛すべき人」に変わっていく様子を伺っていきます。

インタビュー ライティング 宇田川寛和

編集後記
関係性を重視するからこそ、「本当に思っていること」はときには言いにくくなることもあるなと思いました。安心してネガティブな本音を伝えて腹の底からぶつかっていくことで、お互いの理解が深まる。自分の中にあるいろんな気持ちをフラットに伝えることにチャレンジしてきたいと強く思いました。

自主自立型組織物語〜ソーシャルメディアマーケティング事業部〜
1. 対話による自主自律型組織へ – すべての始まりはあのチームセッション
2. “本音を話せる土壌”が組織にもたらした、深い相互理解という宝物
3. 「仕事だけの関係性」では自律型組織は育まれない〜森のリトリートが起こした組織変容とは〜
4. 緊迫感の漂う”本音”のフィードバック。激烈な会話がもたらした「自由と秩序」の共存
5. リーダー交代でも揺るがない。対話を通じて育まれた自律性 ~計画からの逆算ではなく、人をベースに組織を作る〜
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