「サーキュラーエコノミー」とは、無駄を富に変え、生産と消費のあり方を根本的に変える史上最大の革命と言われている。そんなサーキュラーエコノミー研究家であり、サスティナブル・ジャーナリストとして世界から注目を集めるのが安居昭博さんだ。「欧州の有益な情報は日本へ、日本のいいアイデアは世界へシェア」をモットーに、現在はドイツにてメディア媒体や個人のSNSで映像製作や記事執筆活動を通じ日々サスティナブルな情報を発信している。一時帰国中の安居さんに、気になるサーキュラーエコノミーの最新動向を伺った。

そもそも、サーキュラーエコノミーとは何ですか?

「従来の大業生産・大量廃棄型経済モデルに代わる、地球環境にも経済にも労働環境にも持続性を持たせるオルタナティヴな経済の仕組み」、それがサーキュラーエコノミーです。循環型経済とも呼ばれていますが、単なるリサイクルやリユースにとどまらず、あくまで儲かるビジネスを目指すというのがポイントです。どれくらいヨーロッパで注目されているかというと、イギリスでは政府機関が発表した2019年のトレンド予測ワードが、ブロックチェーンやAI、フィンテックなどを抑えサーキュラーエコノミーが第二位にランクインしています(ちなみに1位はビッグデータ)。ヨーロッパのさまざまな大企業もビジネスとして取り入れ既に業績をあげ始めていますし、日本でも様々なチャンスが眠っていると思います。

安居さんがサーキュラーエコノミーに興味をもち始めたきっかけは何ですか?

僕がサーキュラーエコノミーに興味を持ち始めたきっかけは東日本大震災だったと思います。当時大学3年生で就職活動中だった僕は、テレビでインタビューされていた同い年の青年(津波で家も家族も一瞬にして失った)を見てこう思ったんです。「僕が石巻で生まれ育っていたら、彼のようになっていたかもしれない」と。震災後は、石巻へボランティアに行き、日本ではタブーとされがちな脱原発に関することをもっと人と話したいと思うようになり、ドイツやイタリアは原発に頼らないエネルギー政策を国が打ち出していたこともあって、次第に憧れをいだくようになりました。

現在、ドイツで生活されているそうですが、それはどんな理由からですか?

石巻でのボランティア活動が落ち着いた2012年に友人から聞いたWWOOFというファームステイ制 度を使ってドイツとイタリアでファームステイをしました。WWOOFとは農家で1日6時間程働きなが ら3食の食事付きで滞在できるというもの。通常海外に長期滞在する程の予算がなくとも、生きた英語が学べるのでおすすめです。そこでドイツの方々の社会課題に対する真摯に向き合う姿勢、ディスカッションの大切さに魅了されドイツに長期間住みたいと思いました。
一度は日本の自動車メーカーで就職をしたんですが2年で退職し、2015年8月からドイツのキール大学 大学院でサスティナビリティに特化した起業家育成プログラムに留学をしました。そこからヨーロッパ で社会問題に対してユニークなビジネスモデルに挑む起業家を取材し映像や記事を作って配信するようになり、今に至ります。住んでみて感じたのは、ドイツを含むヨーロッパは原発エネルギーのこともバンバン意見を言い合いますし、サスティナブルな考えやサーキュラーエコノミーの動きが国レベルでとても早いこと。「僕が得た有益な情報は日本に持ち帰りたい」と思うようになりました。

サーキュラーエコノミーについて、具体的な事例を教えてください。

今日はいくつか目で見てもらえる製品をお持ちしましたのでご紹介しますね。

僕が今履いているMUD JEANSのデニムは「サーキュラーエコノミー・ジーンズ」と言って、月800円でレンタルするサービス。100%オーガニックコットンなので風合いもよく、返却すればまた資源になって新たなジーンズとして生まれ変わったものが届くというしくみです。

このサングラスはチリの漁業ネットから作られたものです。レンズもプロのカメラマン御用達のカールツァイス製のものが使われていて何よりデザインがカッコイイですよね! 僕はたまたまヨーロッパのセレクトショップで見つけて購入しました。

写真右上にあるパソコンケースは、シリア難民のライフジャケットをリメイクしたもの。オランダ・アムステルダムにあるMakers Unite社の取り組みです。見た目のインパクトがありますよね。

この「フェアフォン」は、簡単に言うと、レアメタルなどの紛争鉱物を使用していないスマホです。壊れた部品だけを交換できる世界一エシカルなスマホとして、ヨーロッパではかなりメジャーとなっています。ヨーロッパでは2013年に販売が始まりこれまでに130,000台売れるという大ヒット商品になっています。

すべてに共通して言えるのが、見た目がCoolなこと! いくらコンセプトが素晴らしくてもデザインがイマイチだったら買ってもらえないじゃないですか。作る人もカッコイイ物を作って、買う人も身に着けたり使って「いいね!」と思えるものじゃないと広まらないと思うんです。

他にもオランダで4月から発売されるフェアトレードコーヒー「WAKE UP」はQRコードを読み取ると、生産者に関する情報がブロックチェーンを使って書かれている。

ベルリンで大流行中というこちらは、無農薬のゴムで作られたビーガンコンドーム「einhorn」。

ヨーロッパ各国で「社会課題×ビジネス」に取り組むスタートアップとインタビュー・撮影活動をしてきた中で、印象に残っているものを教えてください。

たくさんありますが、ひとつあげるとするならば、ベルリンで活動する「SirPlus」という賞味期限切れや廃棄食品だけを販売するスタートアップビジネスです。

撮影をするうちに彼らとはすごく仲良くなりましたが、ファウンダーがすごく楽しそうなんです。彼らはNPOに限界を感じて立ち上げた経緯があるのですが、今はやっている本人たちが楽しくてパッションがあって、ちゃんと儲かっている。これは長く続ける上ではとても大事だなと感じています。あとは、この場合は「おいしい食べ物が安くお得に買える」ことで、関心のない層も取り込めているのがビジネスとして成功したポイントかなと。今や宅配サービスも開始し、日本で全国展開する大手スーパーのような存在になっていますからね。すごい勢いです。

サーキュラーエコノミーにおいて、日本とヨーロッパでは、どのような点が違うと感じますか?

日本では、エコとかエシカルとかオーガニックってまだちょっと特別なことじゃないですか。スーパーも普通のスーパーとオーガニックスーパーは別ですし。ドイツではひとつのスーパーの中にビーガンやオーガニック、グルテンフリーなどのコーナーが当たり前にあります。これからの地球環境を考えたときに無視できない問題として国民が当たり前に考えて生活しているかどうか、そこの意識の差が日本とヨーロッパではまだあると思いますね。
加えて、特にオランダやフィンランドは政府自体が“Learning by doing”の精神で、まずはやってみよう!とトライ&エラーをしている点。日本とは違うなと感じます。

ベルリンでオープンした際のもの。
詳しくは安居さんのこちらの記事をチェック!

サスティナブルな社会、エシカル消費(人や社会、環境に配慮した消費活動)、その鍵とは何だと思われますか?

先ほどもお話しましたが、社会をよりよくしたいという思想だけではなく製品やサービスがCoolなこと。あとはやっている人たちが楽しんでいることが成功するカギであり持続させるための大きなポイントだと思います。

安居さんが今後、取り組みたいことは、何ですか?

難民や食品廃棄といったネガティブになりがちな社会問題を、できる限り楽しく改善していけたらいいなと思っています。僕ができることとしては、引き続きヨーロッパでのさまざまなサーキュラーエコノミーに関する取り組みを伝えたり、日本の若い学生に僕が高校生のときに知っておきたかったことをSNSを通して発信したりしていきたいですね。
とはいえ、そのまま日本にもってくればいいとは思っていなくて。たとえば、日本でも熊本で廃材のブルーシートをPCケースにしたり、広島・長崎で千羽鶴を扇子に作り変えたり、東京でもコルクで家具を作っていたりと、既に高いポテンシャルを持ったサスティナブルなプロジェクトをしている人たちがたくさんいるんです。彼らに何かアドバイスをしていくような活動もできたらいいなと思っています。また、最近ではサーキュラーエコノミーに関心のある大企業からの問い合わせもいただくようになり ました。そういったサーキュラーエコノミーが持つ持続可能なメリットに気がつき始めている方々と一 緒にこの活動をもっともっと日本に広めていきたいと思っています。

〇関連リンク
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〇取材・文 加藤朋美