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【麻生要一×佐々木喜徳】超創業期を支援する二人に聞く「起業家の心得」

  • 最終更新: 2023年9月6日

新規事業立ち上げのプロに聞く、「起業家の心得」とは?

今回インタビューしたのは、起業家・投資家・経営者の麻生要一(あそう よういち)さんと、ガイアックス執行役兼スタートアップスタジオ責任者の佐々木喜徳(ささき よしのり)。

麻生さんは、リクルートグループで約1500件の新規事業と約300社のスタートアップ支援を経験。現在は株式会社アルファドライブの代表取締役社長兼CEOなど、合計14の組織に所属しながら、経営者・起業家・投資家といういくつもの顔を持って活動されています。

そして、ガイアックススタートアップスタジオ責任者の佐々木は、起業家創出と投資判断を担当。中高生向けの「起業ゼミ」の開催や、学生団体のビジコンと協力するなどを通して、学生の起業率アップにも注力しています。

そんな新規事業立ち上げのプロであり、超創業期の起業家を支援してきたお二人に、起業家に必要なマインドセットをお聞きしました。なお、モデレーターはスタートアップスタジオ事業部の廣渡が務めます。

麻生要一

麻生要一

起業家・投資家・経営者

大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。社内起業家として株式会社ニジボックスを立ち上げ、創業社長として150人規模まで企業規模を拡大。リクルートホールディングスの新規事業開発室長として1500の社内起業家チームの創業と、起業家支援オフィスTECH LAB PAAKの所長として300社のスタートアップ企業の創業期を支援。2018年に起業家に転身。2019年にユーザベースへのM&Aを実現し、その後も成長を続ける株式会社アルファドライブを含む複数の企業を同時に創業。ニューズピックス執行役員、アミューズ社外取締役の他、プロ経営者として複数の上場企業の役員も務める。投資家としてはベンチャーキャピタルであるUB Venturesのベンチャーパートナーとして、また同時に個人投資家としても活動。創業期の起業家を中心とした投資実績。創業期特化型の起業ブートキャンプ「ゼロからの起業(https://yoichiaso.me/zerokara/)」でまさにゼロからの創業を支援。著書に「新規事業の実践論」。

佐々木 喜徳

佐々木 喜徳

株式会社ガイアックス執行役・スタートアップスタジオ事業責任者

組み込み系ベンチャーやC向けインターネット関連業務の経験を活かし、フリーランスエンジニアとして独立。 その後、フィールドエンジニアリング会社の役員経て2007年にガイアックスに参画。スタートアップスタジオ責任者として起業家への事業開発支援や投資判断を担当。スタートアップスタジオ協会を立ち上げ、スタートアップ挑戦者の裾野を広げる社会活動に取り組んでいる。

「右も左もわからない」超創業期の起業家も支援する

ー 投資家という目線に立ったとき、どのような領域や会社に投資していますか?

麻生 僕は投資家として2つの顔があります。1つは、「UB VENTURES」というベンチャーキャピタル(VC)で、機関投資家としてスタートアップに投資をする顔。もう1つは、個人投資家としてエンジェル投資をするという顔です。そして、2つの顔で投資方針が違います。

UB VENTURESはサブスク領域に特化したベンチャーキャピタルなので、SaaSを中心としたサブスクリプションビジネス、もしくは「マーケットプレイス+サブスクリプション」のような銘柄に投資していく方針があります。

個人投資をするときには領域は絞っていませんが、超創業期に投資をすることが多いです。「まだビジネスプランはない」「これから創業をする」という段階の、才能のある若者からシニアの方までが対象になっています。創業するにあたって右も左もわからない。そういう状況でも、その人の想いや成し遂げたいビジョンに共感したときに投資をしています。

ー 個人投資のほうでは自由度が高いんですね。佐々木さんはどうですか?

佐々木 ガイアックスで投資をする際、業界は絞っていません。ただ、ガイアックスのミッションが「人と人をつなげること」であり、それを使って社会課題を解決することなので、業界問わず、社会課題を解決することに貢献できるような事業に投資をしています。かつ、「人と人をつなげる」という文脈が入ってくるので、結果的にシェアリングエコノミーやCtoCマッチなどのビジネスモデルが多めになっていると思います。

年代ではZ世代に力を入れていて、下は中学生、上は大学生から新卒3年目くらいの起業家の方を中心に話をしています。

ー お二人には、沖縄や地方などの起業家もサポートしているという共通点があると思います。理由をお聞きしてもいいでしょうか?

佐々木 スタートアップスタジオ協会としていろんな自治体とお付き合いをしていて、上は北海道から下は沖縄まで、広く会話をして起業家発掘に取り組んでいます。その中で、過疎化や、労働者不足、人口を増やしたいなど、地方の方がより社会課題に対する感度が高く、「なんとかしたい」という想いも強いと考えています。かつ、東京のように情報が多くないという側面もあり、スタートアップや事業開発のノウハウも足りていないので、我々が支援することに価値を感じています。

麻生 僕の場合は、「沖縄だから」「地方だから」という理由で起業家を支援している感覚は全くないです。東京だろうと沖縄だろうと、住んでいる地域に関わらず才能のある人には出資したいし、想いのある人は応援したいと思っています。

 超創業期を支援する二人に聞く「起業家の心得」

起業家なら気になる、投資の判断基準とは?

ー 投資家は何を基準に投資を決定づけているんですか?事例があれば教えてください。

佐々木 たとえば投資を判断するときには、「ビジネスモデルの課題がちゃんと設定されているか」「マネタイズはどうなっているか」などのポイントがありますが、それがあるのは当たり前。そこからさらに投資判断を左右する要素が出てきたときに、投資を決定すると考えています。その要素に関しては2つあります。

1つは、自分がやろうとしている事業の解像度がどこまで高くなっているか。情報収集や仮説検証をして解像度が高くなっているほど、実現可能性を感じます。

もう1つは、行動の量を見ています。1週間や1ヶ月という単位の中で、どこまで自分の手足を使って行動できているか。そこはめちゃくちゃ見ていますね。

麻生 僕が投資するときには、ビジネスモデルや、その人がテクノロジーに強いかとか、スキルの有無については一切見ていないです。全く見ていない。見ているポイントは2つしかありません。

1つは、「なぜその人は起業をするのか?」ということ。ビジネスモデルのよしあしではなくて、起業をする理由が強いかどうかです。

だって、起業なんてしなくたっていいんですよ。雇われて働いていたほうが楽だし、安全だし。その中で、あえて起業する理由は何なのか。そこの原体験や想い、理由がどれだけ強いのかを見ています。

もう1つ見ているのは、それだけ強い理由を持っているその人が、自分がやろうとしているビジネスや作りたい世界について熱く語ってくれるわけですが、その語られた世界観やビジネスが「(僕が)全くわからないな」と思ったら投資をします。

ー 投資家として投資したら、成功確率を上げないといけませんよね。そこはファウンダーに調べてもらうんですか?

麻生 足りないスキルとか、悩んでいることのサポートはするけど、それよりも重要なのは、彼・彼女が「僕には見えていない未来の世界が見えているかどうか」が重要なんです。

僕はこれまでに大概のビジネスは見てきていて、その僕が理解できるようなことをやっているんだったら、自分でやったほうがいい。だから、僕が「それよくわかる、めちゃくちゃいいよね」と思うものには投資しないです。

佐々木 面白いですね。スタートアップのビジネスって、今までになかったようなビジネスモデルだったり、独自のソリューションだったりします。僕もわからないし起業家も成功するかわからなくて、「だから一緒に考えようね」というスタイルでメンターをしているので、理解できるなと思います。

 超創業期を支援する二人に聞く「起業家の心得」
麻生要一氏

起業するなら仕事は辞めるべきなのか?

ー 社会人として働いている方が起業したい場合、会社を辞めたほうがいいのでしょうか?

佐々木 ガイアックスではカーブアウトオプション制度を導入していて、社内で作った事業をカーブアウトさせて法人化できる仕組みが整っています。

起業家の中で、組織のリソースを使って新規事業にトライしている人は一定数いると思います。そして、より外に飛び出していきたいという人にはカーブアウトオプション制度について教えてあげて、「経営層と交渉してみたらどうか?」とアドバイスすることはあります。
»カーブアウトオプション制度

麻生 会社にお勤め中なのだとしたら、まずその会社に新規事業開発の公募制度があるかどうかを調べてみるといいと思います。公募制度があるなら、そこにエントリーすれば会社の中で審査してもらえて、審査を通過すれば会社のお金や力を使って事業開発ができるかもしれません。

もし公募制度や窓口がなく、既存事業の部長も話を聞いてくれなさそうだと思ったら、社内に新しく制度を作るくらいの気持ちで臨むか、裸一貫で起業するしかないですよね。

ー とある研究では、仕事を辞めて起業する場合と、仕事を続けながら事業検証などをする場合と、どちらも成功率では大して差がないと言われているようです。お二人はどういう意見ですか?

麻生 取り組もうとしている領域によると思います。たとえば、昨今でエマージングと言われているNFTやメタバースなどの領域で勝負するなら、「3年以内に決着をつける」という意気込みで裸一貫で勝負しないとマーケットを取られてしまいます。その場合は、もうやるしかない。

一方で、おそらく5年後や10年後もあり続けるであろう社会課題、たとえば日本の一次産業の課題や貧困の問題は、すぐには課題構造は変わらないと思います。そういう課題に対して立ち向かっていくなら、会社に属しながら、ちゃんと力をつけつつ動かしていったほうがいいかもしれません。

佐々木 起業家の人が「このビジネスモデルで事業を立ち上げたらうまくいきそうだ」と思えるまでの期間は、けっこう長いと思っているんです。失敗する人たちは、事業の解像度が低い状態で裸一貫でトライして、その期間が耐えられなくて事業を辞めてしまう人が多い。そういう意味では、事業アイディアを練って検証して、「このビジネスモデルだったらうまくいく」というものが見つかるまでは、会社を辞めないほうがいいんじゃないかなと思っています。

 超創業期を支援する二人に聞く「起業家の心得」
佐々木喜徳

課題がない、わけがない。起業家こそ現場へ行くべし

ー 日本という成熟社会において、身近な課題は解決されつつあると思う人もいるようです。その中で、どのように課題を見つけていくのがおすすめですか?

佐々木 僕たちは起業家に対して、創業する前段階の支援もたくさんしています。その中で、上手くいかないときは表面上の課題にしか触れていないケースがあるなと感じています。すでにプレイヤーがたくさんいたり、課題が解決されてしまっていて、諦めてしまう。

そういうときには、表面上の課題だけでなく、その課題が発生している原因や、さらに奥にある課題を見つけることが重要になります。自分しか知らない課題を見つけたら、ある意味勝ちですよね。

麻生 「課題を見つけるにはどうしたらいいですか?」とよく質問が来るんですけど、その質問をしてくる人に共通していることがあります。

それは、デスクトップリサーチしかしていないということ。現場に行ってないんですよ。現場に一回でも足を運んだことのある起業家候補の人は、その質問をしないんです。だって、課題がないわけないもん。

では現場とは何か、誰に会いにいくべきかというと、誰でもよくて、友達でもいいんですよ。絶対に困っていることがあるから。あとはニュースを見ていても、困っていることだらけじゃないですか。コロナで飲食店がしまってるの知ってるでしょ?地元の商店街のシャッターが降りているところに行って、「困っていることありませんか?」と聞いたことがあるのかと。

もうひとつ大切なことがあります。「起業家は人に会いに行け」と言いますよね。たしかにみんな、会いに行ってるんですよ。でも、会いに行っている相手が、課題の現場じゃなくてVCの人とか、先輩起業家とか、スタートアップ業界の人には話を聞きにいく。そうじゃなくて、シャッターが閉まっている商店街の店長に話を聞きに行けよと。課題の現場には行かないのに、VCとかばかりに話を聞きに行っている起業家に事業は作れないです。

ー 今グサッときている読者の人がいるかもしれないですね。

超創業期を支援する二人に聞く「起業家の心得」

参加するなら「出口」のあるもの。勉強だけで終わらせたら勿体ない

ー おすすめのアクセラレータープログラムやイベントはありますか?

麻生 これから創業する人とか、まだビジネスモデルが固まっていない段階の人だとしたら、そもそもアクセラレータープログラムがほとんどないんですよね。僕は自分でも「ゼロからの起業」という、超創業期特化型の支援プログラムを去年から立ち上げています。

まだ会社がない、ビジネスモデルがない、起業することだけは決めているけど、右も左もわからない。そういう段階の人を、ちゃんとした創業期に導くプログラムです。

なぜ去年から始めたかというと、その段階のプログラムが今の日本には全然ないと思ったから。ほとんどのものは、ビジネスができあがっていて、お客様もついていて、いい感じのブランド化が始まった以降の段階を対象にしています。でも、本当に支援が必要なのはそこにいく前の段階なのに、支援も何もないので、自分でやろうと思って始めました。

ー それは麻生さん自らサポートをしているんですか?

麻生 そうです。僕がこれまでに山ほど自分でも創業して、起業家の支援や投資もしてきた中で、創業期に知っておくべきことや、そのときどきに考えるべきことや行動すべきことを3〜4ヶ月のプログラムの中で教えていきます。

最終日には、投資家や銀行の人や提携先の人にプレゼンをして、どういう会社で、どういうビジネスモデルなのかを伝えられるくらいの状態になります。

ー ガイアックスも超創業期の支援には注力されていると思いますが、どうですか?

佐々木 「起業の勉強をしましょう」というイベントやセミナーは、たくさんありますよね。でもそういうのって、参加者の出口がなくて、勉強しただけで終わってしまうことがあるなと思っています。麻生さんやガイアックスは最終的には投資判断をしていて、そういう出口があるものに参加することがすごく重要だと考えています。

たとえばガイアックスでは、中高生向けに「起業ゼミ」を開催しています。事業アイディアがなくても参加でき、プログラム最終日には各生徒がピッチを行い、将来性のあるビジネスアイデアにガイアックスから出資判断を行います。他にも、学生団体のビジコンや起業サークルと協力してピッチの審査員をさせてもらって、そこで投資判断をすることにも取り組んでいます。

麻生 まだ何も形がなかったり、これから起業するという人に対する支援が手厚くなると、日本の起業家支援はより一段と力強くなると思います。

ー 最後に、スタートアップ支援の第一人者と言われるお二人から、あと一歩が踏み出せないという起業家候補の皆さんに対してアドバイスをお願いします。

麻生 心のどこかでちょっとでも起業がしたいと思っているのであれば、やってみるに越したことはないと思います。できればシャッター商店街へ行って、「困っていることありませんか?」と聞くような一歩の踏み出し方がいいと思うけれど、それもちょっと……と思うなら、僕たちのような起業家を応援している人たちが日本にはいるので、そこにコンタクトして相談するのもいいと思います。

家の中でじっとしているんじゃなく、とにかく家から一歩出る。相談でも行動でも何でもいいので、一歩を踏み出してみるところから起業への道は開けていくかなと思います。

佐々木 「起業したい」「上手くいきそうな事業アイディアがある」と思っているけど、行動できない。そういう人がなぜ行動できないかと言ったら、別に勇気がないわけではなくて、やり方がわからないだけではと考えています。そんなときは麻生さんや僕たちにカジュアルに相談してきてもらえたら、やり方を教えることができます。

ガイアックスのスタートアップスタジオでは「スタートアップカフェ」を開催していて、そこから応募して相談もできますし、僕も門戸を開けているので、DMしてもらえれば適切な人をつなげたりアドバイスするのでいつでもご連絡ください。

ー お二人が応援してくれているのは心強いですね。なお、お二人ともDMは大歓迎とのこと。ぜひ起業家候補の皆さんは、二人にDMするくらいの勢いでやってほしいですね。本日はありがとうございました!

こちらより動画でもご覧いただけます

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佐々木 喜徳
組み込み系ベンチャーやC向けインターネット関連業務の経験を活かし、フリーランスエンジニアとして独立。 その後、フィールドエンジニアリング会社の役員経て2007年にガイアックスに参画。スタートアップスタジオ責任者として起業家への事業開発支援や投資判断を担当。スタートアップスタジオ協会を立ち上げ、スタートアップ挑戦者の裾野を広げる社会活動に取り組んでいる。
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