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「人材流出」を前提にした会社づくり
Gaiaxがカーブアウトをやめない理由


はじめに

Gaiaxには「カーブアウトオプション」という制度があります。
社内で生まれた事業を、事業責任者の意思で会社の外に出し、経営チームに株式を持たせることを前提とした仕組みです。
この制度は、Gaiaxを象徴するものとして語られてきました。
起業家を生み出すため。
挑戦を後押しするため。
スタートアップスタジオだから。

私はこの説明を、何度も聞いてきました。
頭では理解しようとしていました。
でも正直に言うと、この制度のことを、ずっとどこかで疑っていました。

社員として見ている現実は、もっと生々しいからです。
人が外に出る。
事業が外に出る。
付き合い方も、「他事業部とののやり取り」ではなく、「社外との取引」に変わる。

制度の美しさと、現場の感情が、うまく噛み合わないまま、時間だけが過ぎていました。

それでもGaiaxは言い続けます。
「誰でも、いつでも、カーブアウトしていい」

では、会社はどうやって残るのか。どうやって回り続けるのか。
私はその答えを、GaiaxのCEO 上田さんからちゃんと聞きたくなりました。

Natalia Davydova

Natalia Davydova

クリエイティブディレクター

2000年にエンジニアインターンとして入社。バックエンドのシステム保守からキャリアをスタートし、Webデザイン・開発、グラフィック、3Dモデリング、モーション、映像制作など、幅広いクリエイティブ業務に携わってきました。2015年にはコーポレートブランディングを担当し、リブランディングおよびコミュニティハブ「Nagatacho GRiD」(現在の「MIDORI.so NAGATACHO」) の立ち上げを行いました。現在は、コーポレート領域を中心に、社内外のクリエイティブとブランドに携わっています。

事業が外に出たら、会社はどうやって生きるのか

私が上田さんに最初に投げた問いは、とてもシンプルでした。
既存事業が売上・利益を出している。
もしそれらが次々とカーブアウトしたら、Gaiaxのバックオフィスの運営コストはどうなるのか。
法務、労務、採用、広報。
それらは、どこから賄われるのか。
「会社が存在するためには、現金が必要ですよね」

その問いに対する上田さんの答えは、少し意外なところから始まりました。

売らない限り、会計上は利益じゃないんです。
でも、株の価値が上がっていたら、実態としては儲かっている状態だと思います。

会計上の利益と、実態としての価値

私はその瞬間、少し混乱しました。
私は現金の話をしている。
上田さんは価値の話をしている。
ただ、話を聞くうちに、そのズレこそが重要なのだと分かってきました。

世の中には、赤字でも、成長し続けている会社がたくさんあります。
事業が伸びているからこそ、資金調達ができ、結果として生き続けている。

結局、一番大事なのは、事業が伸びているかどうかなんですよね。
伸びていれば、選択肢はいくらでもあります。

Gaiaxが目指しているのは、自社事業だけで会社を運営するモデルではありません。
カーブアウトして投資先となった伸びる事業もあって、それらを含めた企業価値によって評価される。その企業は必要なときに資金を調達し、より適切に成長できる状態をつくることです。

Gaiaxは事業会社なのか、投資会社なのか

対話の中で、上田さんが何度も使った言葉があります。
それが「グラデーション」です。
100%か0%か。
中か外か。
事業会社か投資会社か。
そうした二分法に、上田さんはあまり意味を見出していません。

50%持っている会社が4倍になるのと、100%持っている会社が2倍になるのは、感覚的にはそんなに変わらないと思っています。

Gaiaxにとって重要なのは、どれだけ支配しているかではありません。
どれだけ価値が大きくなるかです。
正直に言うと、私自身も「グラデーション」という言葉だけでは完全には腑に落ちていませんでした。
理解できたのは、具体的な数字に置き換えて考えたときでした。

例えば、ある事業がカーブアウトした時点では、Gaiaxが70%を持ち、価値は数百万円規模だったとします。
その後、外部資金を入れて事業が成長し、上場、あるいはそれに近い評価に到達した時点では、持分は0.5%まで薄まっているかもしれません。
それでも、その0.5%が数億円の価値を持つとしたら、持分比率だけを見て「減った」と言えるのか、という話になります。
Gaiaxの中に留まり、安定した利益を出し続ける選択と、外に出て急成長し、結果として大きなリターンを生む選択。
70%から0.5%への変化は、縮小ではなく、スケールの変化だと理解できました。

つまりGaiaxは、事業会社か投資会社か、という二択で捉えられる存在ではなく、事業が内にあろうと外にあろうと、すべてを投資として扱うスタートアップスタジオなのだと思います。
実際には、その「内」と「外」も、最初から明確に分かれているわけではありません。
カーブアウトした事業はまずGaiaxの100%子会社として立ち上がり、利益は連結決算として会社を支えます。
その後、外部資金を入れ、成長とともに持分が薄まり、少しずつ「連結」から「投資」へと移行していく。
その連続したプロセス自体が、Gaiaxの事業づくりの前提なのだと感じました。

カーブアウトは事業を「あげる」ことではない

カーブアウトは、育てた事業を「無料」で持っていかれる制度ではありません。
Gaiaxが事業責任者に株式を持ってもらうのは、「ご褒美」でも「善意」でもありません。
それは、その人の覚悟と意思決定への投資です。
カーブアウトの際、事業責任者は一定の株式を持ちます。
そしてその後も、外部資金を入れれば、自分の持ち分は薄まっていきます。
それでもなお、「それでいいから、事業をもっと大きくしたい」「自分の取り分が減っても、価値を伸ばしたい」と判断する人だけが、この選択をします。
Gaiaxが投資しているのは、事業そのものだけではありません。
その事業を、自分ごととして引き受け、リスクを取り、意思決定し続ける人の行動と姿勢です。
だからこそ、その覚悟に対して、リスクとリターンを共有する。
それがカーブアウトです。
その結果として、Gaiaxが得るリターンは一つではありません。
配当という形での現金。
未上場・上場企業の株式価値。
投資先を持つ会社としての評価や信用。
上田さんが強調していたのは、配当は例外的なものではなく、未上場企業においては、むしろ最も一般的なリターンの形だという点でした。
上場だけをゴールにするのではなく、事業が成長し続けることで生まれる利益を、配当という形で長期的に受け取り続ける。
それもまた、カーブアウトによって成立する、現実的で持続可能なリターンのあり方だと感じました。
事業を「手放す」ことで失うものがある一方で、人が本気になり、事業が大きく育つことで、Gaiaxはより大きな価値を受け取る設計になっています。
ここで、最初の問いに立ち返りたいと思います。
「もし、すべての事業がカーブアウトしたら、Gaiaxはどうなるのか」
制度上は、確かに誰でも、いつでもカーブアウトできます。
ただし、それは「すべての事業が一斉に外に出ていく」という前提ではありません。
実際には、Gaiaxの中には、そもそもカーブアウトする必要のない事業も存在しています。
大きなスケールを目指すわけではなく、少ない人数とコストで回り、安定して利益を生み続ける事業です。
こうした事業は、外部資金を入れて急成長するよりも、今の形で続ける方が合理的です。
そしてそれらが、Gaiaxのオペレーションを下支えしています。
法務や労務、管理といった「会社としての足元」は、こうした安定した事業によって支えられている部分も大きい。
さらに、事業が外に出たあとも、関係が断たれるわけではありません。
カーブアウトした先や投資先が成長し続けていれば、配当という形での現金と、企業価値の上昇という両面で、Gaiaxは継続的にリターンを受け取り続けることになります。
上田さんが言っていた「現金ではなく、価値を見る」という言葉は、この全体像を指しているのだと理解しました。
カーブアウトは、会社を空洞化させるための仕組みではありません。
成長を外に委ねる事業と、内側で安定を支える事業、そしてそれらを一つの価値の流れとして捉える設計です。

人は本当に「出ていく」のか

ここからが、私にとって二つ目の問いです。
人が事業とともに外に出ていくとき、Gaiaxは、どうやって「会社」であり続けるのか。
上田さんの答えは明確でした。

例えば、メンバーの契約の形が変わっても、関係性そのものは変わらないよね?カーブアウトも同じ。

カーブアウトしても、関係は続く。
役割や契約形態が変わるだけで、人は「いなくなる」わけではない。
実際、投資先やカーブアウトした会社の経営者が、別の事業の壁打ちをしたり、若い起業家を支援する事例も数多くあります。
人が出ていっても関係が残る。
この循環が実際に機能していることは、カーブアウトが単なる制度ではなく、成長の仕組みとして成立し続けるための、重要な前提でもあります。
その循環があってこそ、カーブアウトは分断ではなく、次の価値へとつながっていく。
また、関係性が果たす役割は、感情的な安心にとどまりません。人が内と外に分かれても、互いに学び合い、助け合い、刺激を与え続けられること。
事業の壁打ちや意思決定の相談、次の挑戦への背中押しやメンタリング。
そうした相互作用が続いているからこそ、Gaiaxは一つの「会社」として、知見と熱量を循環させ続けることができるのだと思います。
ただ、正直に言うと、こうした動きが、常にすべてのメンバーから見えているわけではありません。
私自身も、今回あらためて話を聞くまで、その広がりや密度を十分に把握できていませんでした。
だからこそ、上田さんが意識的に関係をつなぎ続けていることを知り、少し安心すると同時に、「これは、もっと横に共有されていい取り組みなのではないか」と感じました。
その象徴的な例が、上田さんが自分の家を開き、Gaiaxを卒業したメンバーや若い起業家が自然に集まる場をつくっていることです。
特別なイベントを用意するわけでもなく、肩書きも立場も関係なく、ただ人が集まり、話し、次の挑戦が生まれていく。
こうした営みは、個人の善意にとどめるのではなく、Gaiax全体の文化として、少しずつ共有されていく余地があるように思います。
振り返ってみると、Gaiaxは創業当初から、人が出会い、話し、つながるための「場」をつくることに、とても熱心な会社でした。イベントやコミュニティ、偶然の会話が生まれるステージを通じて、多くの関係性が育ってきた。
一方で、働き方が大きく変わり、会社の多くがリモートに移行する中で、そうした場が減っていったことも、私自身の違和感につながっていたのだと思います。
それでも、これは終わりではなく、一つのフェーズなのかもしれません。
Gaiaxはいつも形を変えながら進んできた会社です。だからこそ、これからまた、内にいる人と外に出た人が自然に再接続できる機会や、新しい関係性の編み方が生まれていくことを、私は前向きに期待しています。
私が最初に感じていた違和感は、カーブアウトそのものへの不信ではなく、「人が出入りすることを前提にした会社」において、人と人のつながりをどう維持し続けるか、という問いが十分に言語化されていなかったことだったのだと思います。
去った人とゆるやかにつながり続けることは、次の挑戦を生むだけでなく、「人が出ていくこと」を前提にしたこのモデルを、内側から支える安心にもなる。だからこそ、制度と同じくらい、関係性の設計が重要になります。

Natalia Davydova

おわりに

カーブアウトオプションは、事業を成長させ、人を本気にさせるための、とても合理的な仕組みです。
その成功を支えるのは、制度だけではありません。人と人との関係性です。
会社の内と外をゆるやかにつなぐ、小さな接点や再会の積み重ね。そうした営みこそが、カーブアウトという仕組みを、制度としてだけでなく、Gaiaxの文化として成立させ、より強いモデルへと育てていくのだと思います。
こうして振り返ると、私が最初に抱いていた問い「事業や人が外に出ていく前提で、会社はどうやって会社であり続けるのか」に対する答えも、少しずつ輪郭を持って見えてきました。

Gaiaxがカーブアウトをやめない理由は、事業を手放しても、関係性と価値の循環を手放さないという設計にあります。
その前提があるからこそ、事業が内にあっても外にあっても、Gaiaxは一つの「会社」として、挑戦を受け止め続けられるのだと、今は理解しています。

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ダビドバナタリア
2000年にエンジニアインターンとしてGaiaxに入社。その後、Webデベロッパー、デザイナー、クリエイティブディレクターとして、多くのGaiaxソリューション開発プロジェクトに携わる。2015年には、Gaiaxのリブランディングキャンペーンを主導し、その一環として、本社兼コミュニティスペース「Nagatacho GRiD」(現在の「MIDORI.so NAGATACHO」)のデザインを担当。現在は主に、コーポレートブランディングの外部向け施策やWebデザイン・開発に注力している。
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