Teal Journey campusとは?

「これからの組織のあり方」を示して注目を集めた『ティール組織』発売から1年余り。 日本各地で、自然発生的に多くの勉強会・読書会が開催されてきました。その草の根の動きも新しい現象であり、国会でとりあげられたり数多くの賞を受賞したりするなかで、日本社会においても少しずつ広まっていっています。
しかし、ティールを始めとする新しい世界観(パラダイム)の実践は、 探求すればするほど味わい深く、すぐに答えが出るものではありません。 どの実践者も試行錯誤を繰り返し、独自のやり方を見出そうと模索し続けています。
Gaiaxもそんな実践者の一人。社長の上田や、木村が登壇し、多くの社員が参加しました。
そんなパラダイムの日本における実践知を集めることで、新たなる動きを生み出せるのではないかと考え日本ではじめての開催されたカンファレンスの様子を複数回にわたってお届けします。

テーマ②:セッション「これからの「教育」を考える」

近年アクティブ・ラーニング、PBL、探究学習など、生徒が主体となる教育アプローチへの関心が高まっています。『ティール組織』でも、学校運営を生徒で行う事例が紹介されています。
しかし、それらを単なる手法として消費するのではなく、私たち大人が本質的な意味で「教育」「子どもの成長」と向き合うには一体どうすればよいのでしょうか。
また、発達理論はこれからの教育にどんな視座をもたらすのでしょうか。長年にわたって現場で実践されてきた先駆者に語っていただきました。
当日はグラフィックレコーディングも行いながら、アットホームな空気で床に座りながら行われていました。

【登壇者】

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加藤 博(かとう ひろし)

きのくに子どもの村学園 南アルプス子どもの村中学校 校長。岐阜県出身。学校法人きのくに子どもの村学園に25年つとめる。 2018年春より南アルプス子どもの村中学校校長。大阪市立大学大学院修士課程修了。同学園を創始した堀の研究室でニイルの思想を学び、こどもの自主性を尊重した幼児教室や母親教室にたずさわる。きのくに子どもの村小学校、中学校で15年勤務したのち、2009年南アルプス子どもの村の開校と同時に異動。副校長をつとめる。同校では「かとちゃん」とニックネームでよばれ、親しまれている。中学校ではプロジェクト「くらしの歴史館」の担任の大人。サマーヒル ・スクールのこどもによる自治をモデルに、デューイの活動的仕事の要素を複合した考えを基本理念としている。「まずはこどもを幸せにしよう。すべてはそのあとにつづく(ニイル)」をモットーに、こどもの可能性を全面的に信頼し、「しからない教育」を実践する学校で、教員は、決してこどもを先導したりはせず、愛をあたえ、まかせて待つことを大切にしている。

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佐野 和之(さの かずゆき)

かえつ有明中学高等学校 教育統括部長。共感的コミュニケーションやU理論、マインドフルネスなどを教育に活かし、先進的に実践する先生。埼玉県私立高校での勤務を経て、2014年同校で「学ぶことの喜び」を追究する新クラスの立ち上げを牽引する改革の担い手として赴任。現在は教育統括部長として、中学ではアクティブラーニングをベースに論理的思考力・表現力を育てる「サイエンス科」、高校では生徒が自分と向き合うマインドセットから知的欲求を喚起する「プロジェクト科」など、「新しい学び」を次々に展開する中心的な役割を果たす。また共感的コミュニケーションやU理論、マインドフルネスなど多岐にわたる分野に関しても造詣が深く、さまざまな視点から教育のあり方を模索し、先進的に実践している。 「共感的コミュニケーション」や「チームビルディング」「パターンランゲ―ジ」などの講演・研修の依頼が全国の学校から寄せられている。

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後藤 友洋(ごとう ともひろ)

長野県出身。法政大学キャリアデザイン学部卒。大学卒業後、インテグラル・ジャパンにて人間の統合的な成長・発達に関する研究と実践を行う。また、国語専門塾に勤務し小1から高3まで幅広い年齢の生徒を対象に作文指導・読書指導を担当。子どもの発達と言語の関係に着目した教育を実践する。現在は新しい時代の教育へのシフトを志向する中学校・高校と連携し、学習支援プログラムを企画・運営する仕事に従事している。教育の領域で一貫して追求しているのは、組織や個人の量的な成長を超えて、質的な成長を支援すること。一人ひとりが内からの純粋な欲求によって生きることのできる社会の実現を目指している。

先生はいらない、教えない?

加藤:学校生活を通して、自己憎悪を抱いて命を絶つ子どももいる時代です。学校の仕組みはなかなか変わらないので。自発的に生きようといいつつ、その仕組みがなってないんですね。私たちは子どもが自分からできるように、先生から教えません。話しやすい、聞いてもらえると思える環境を作るだけに努めています。聞かれるまでは、上から教えないで、子供の中で、問いが生まれるのをしっかり待っています。

例えば料理をしていて煙が出てしまっても、「煙が出てるね」というんです。

そうすると子どもたちが考え出します。「なんでかな?」「どうしようか?」と。先生はそれを見守って、子ども達が自分から学ぶ機会を奪わないようにするんです。

後藤:一般的な学校を思い浮かべると、教えるべき知識の総量が決まっていて、それに合わせて学習を進めていきますよね。先生が教えないとすれば、1日はどんな感じで過ごすんですか?

加藤:大事にしているのは、子どもの自己決定を尊重するということです。皆んなが同じことを学んで、同じゴールに到達しなくてもいい。体験学習では大人が作ったコンテンツをなぞるのではなく、子どもたちが金曜日に次の週の予定を立てます。プロジェクトは子供が中心で、大人はそばにいてサポートをします。話し合いがとても多いですね。民主主義とは遠回りをすること、ですよね。いつも気をつけていることは、多数決で決めるのではなくて、少人数の意見を大切にすることです。指導要領は自由選択の授業で補っています。

後藤:民主的な話し合いは、収集がつかないですよね。大人が見ていたら訳が分からない時もあると思います。大人は効率化したくなるから、口を挟みたくなる。佐野さんは、子供の感情、想いに気づくと書かれていますがどうですか?

佐野:私の学校には学力で競争をしてきた子ども達が来るので、初めは民主的な話し合いはあまり生まれません。彼らが今まで身につけてきた価値観を剥がしていくことが大切です。そのためにスパイダー・ウェブ・ディスカッションを行なっています。これは議論しているメンバー以外の子どもが、議論をしている後ろでログを取り、議論をしていた子ども達に俯瞰的なフィードバックをするというものです。議論には初め見るべきポイントのようなものがあって、議論が終わってから振り返りをします。フィードバックをしていた子が次に議論すると、あ!と気づく瞬間がある。メタ認知ができるようになるんですね。そうやって議論を重ねるうちにお互いの関係性が変わってきます。

後藤:ディスカッションは何かを決めるためにやるものですが、スパイダー・ウェブ・ディスカッションでは議論の後に、この議論のやり方自体がどうだったかを振り返ることができる。それはいいですよね。彼ら自身の中に問題解決の方法が内面化しているように感じます。

「学力」とは一体何なのか。

後藤:お話を伺っていて一般的な「学力」とお二人の考えはかなり異なるな、と感じました。学力という言葉を使うのかどうかも含めて、お二人にとって学力とはなんだと思われますか。

加藤:学力というと、測るものだと思われますが、テストがなくてもこども達の様子を把握することはできます。テストは、子ども達の到達度を測るためではなくて、教員の指導性を確認するために行うものなんですね。だから教室の平均点が70点だったら、反省すべきは先生。なのでテストの点数が学力だというのは少し異なります。学力とは、人間として他者や自分をどこまで受け入れられるようになったかということだと思います。学習という枠にとらわれない、生活こそが教育。その子の喜びを自分の喜びにするのも学力。決断する力も学力。学校はそれらの機会を奪ってばかりですよね。あとは失敗を受け入れる力も学力だと思います。

後藤:今の学力とは、学校の力なんですね。生活そのものを、学校に持ち込めばいい。評価ではなくてその子そのものを見る。これはひとつのホールネスを学校に持ち込んでいる感じですね。

佐野:今の学力は大人の都合なんです。彼らがイキイキ生きている感覚が大事。私たちがそれに気づいていくこと以外学力の見つけ方はありません。きのくに子どもの村学園では、学力とは幼少の頃から愛を感じながら生きてきたのか、と言うことですよね、それは理想が高すぎない。理想が高いと、人は寛容ではなくなってしまいます。SDGsなど言うの前に自分を大事にする。そういうことに気づいていくのが学力だと思います。

後藤:日本の教育では、社会の役に立つことが大事にされますが、その前に自分をケアすると言うことが大切なんですね。お二人の学校では、先生方同士の関係性や文化のあり方にもオリジナリティがあるのではないでしょうか?

佐野:僕がもともといたところは、今とは真逆な学校だったんです。子どもに手をいっぱいかけていました。先生達がまず自分でいいんですよ、という状態を作るところからがスタートでしたね。トップダウンじゃダメ。一教員から、勉強会を呼びかけて周りを巻き込み、5年かけて風土をつくってきました。そして先生同士の関係性が変わり、生徒と先生の関係性も変わっていきました。

加藤:私の学校では、職員室は子供が自由に出入りしていいんですね。子供がリラックスできるのが、職員室。子供からしたら、大人も幸せに生きる権利があります。教員としては好奇心旺盛な人がいいと思っています。教員は前の年のプロジェクトを通して子どもに評価される存在です。なので私たちは子供に営業をしないといけない。人気のない先生には子供が集まらないので、日々の学校での過ごし方が数に出ます。供に学校の方合わせる、子供のシビアな目がいつもありますね。それも子どもがそこにいけばなにか楽しいことがある、走って行きたいと思えるような学校にしたいという思いからです。先生の給料はみんな同じ。なのでここで楽しまなきゃ損だと思って皆働いています。協力し合っていますね。

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トークセッションの後には、参加者の皆さんからの質疑応答を行いました。今回はその中からもいくつかの質問をご紹介します。

Q 一般的な教育法から見ると独特な教育法で育った後、高校生になった時に自分が少数派だと気づくと思うのですが、子ども達はその後どういう生き方をするのでしょうか?

A
加藤:私も初めてこの学校にきた際は、大丈夫かなと思いました。テストはないし勉強しない子はしない。でも他の子と比べたら何もできないかもしれないけれど、自分の将来が楽しみ、と思える子が多いですね。自分自身で選んで何かをやってきた子は高校に行ってから強いです。競争の中に入っていっても、太刀打ちできる子になっていますね。
自発性に委ねることで、知識やスキルをつけるのではなく、自分の畑を耕すことができます。人と比べられない、自分自身でいられたという経験が、子どもにいい影響を与えます。

佐野:うちの学校にも、高校からクラス選択で対話的なプロジェクト中心のクラスがあるのですが、そうすると徐々に、人と比較しなくなってくるんです。比較し始めると、だんだん他の人より勝ち出さなきゃとか、役に立たなきゃってなってくる。僕らが気づいて、子どもが自分らしくいられる環境があると、「高校やめます」っていって起業する子もいるんですね。

Q 素晴らしい学校だと思うのですが、生徒に寄り添えば残業時間が増えて、先生方が疲弊しているのではないでしょうか?

加藤:実際疲れます。でも楽しいんです。私たちもやることを自分で決めているので、縛られている感じはしないです。飛び込んで仕舞えば、長続きしている人が多いですね。

佐野:教員は本当はそんなに忙しくないと思うんです、無駄なことしていて時間がないと言うことが多いのではないでしょうか。自分でいられない、仮面をつけた時間が長いのはしんどいですが、自分らしくそのままでいられる時間が多ければ、大丈夫です。私の学校ではNVCなどを使って、教員がお互い協力できる時間をとっていて、そのままの自分でいられる時間が多いので楽ですね。保護者も一緒に学ぶことをしているので保護者の理解が早まり、関係性ができるのでコストは減っていっています。

Q 学校で自殺が発生したことはありますか、お二方の学校ではどう対応しておられますか?また、日本全体ではいじめをどう無くしていけばいいと思われますか?

A
加藤:今はいじめは今目立ってはいません。しかしいじめがあった時期もあります。学校の工夫としては、いじめを当事者だけでなくみんなのことにしています全校ミーティングで話すようにして、全員で追体験します。それによっていじめに関わらなかった子もいじめをしないようになり、いじめがあった時に声を上げやすくなります。何か問題があれば、大人が声を投げかける。これを私たちは道徳と呼んでいます。

終わりに

教育と聞くと、何か「教える」ことのように思ってしまいますが、「教える」のではなく、子どもの力を信じてその力を最大限発揮できる環境を作ること、それこそが大人である私たちの役目なのかもしれません。学力とは、人間として他者や自分をどこまで受け入れられるようになったかということ。その加藤さんの言葉が私の心に残っています。こどもは大人の姿を見て育ちます。まずは私たちが他者や自分を受け入れていくこと、そこから”新しい教育”が始まるのかもしれません。


シリーズ: Teal Journey Campus
山崎 嘉那子

山崎 嘉那子

大阪府出身、同志社大学グローバル地域文化学部アジア・太平洋コース卒業。管理本部 ブランド推進室。芸術を通して、よりよい人との向き合い方のできる社会を考えたい。