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デジタルアイデンティティが普及している日本を目指したい/ 肥後彰秀 (株式会社ガイアックス執行役・株式会社TRUSTDOCK取締役)

  • 最終更新: 2023年9月15日

ガイアックスには、事業を子会社化できる「カーブアウト制度」という制度があります。私自身も、この制度に申請してアディッシュを設立、経営を担うチャンスを得ました。今回は、私の大先輩、ガイアックスCTOであり、今年4月に、API型本人確認サービス「TRUSTDOCK」を提供する専業会社としてカーブアウトした株式会社TRUSTDOCKにも携わっている肥後彰秀さんに話を伺いました。

Akihide Higo

肥後 彰秀

株式会社ガイアックス執行役/株式会社TRUSTDOCK取締役
2000年にインターンとして、京都大学近辺でガイアックス京都ラボを立ち上げ、運営。2001年当社入社。メッセンジャーやアバターをツールとしたコミュニティサービスの企画・開発プロジェクトほかのPMを歴任。2007年から技術部門の組織運営に従事。2015年技術基盤部長、2016年に当社執行役に就任。2018年6月一般社団法人日本ブロックチェーン協会代表理事に就任。京都大学工学部物理工学科卒。

『知ってるおじさん』とよばれた幼少期

肥後さんはどのようなお子さんでしたか?

何にでも興味があって、「どうしてどうして」ってすぐに聞く子どもでした。因果関係がとても気になって。特に仕掛け、仕組みを理解するのが好きでした。組み立てられないのに、機械仕掛けのおもちゃを分解してよく壊してました。それもあって、小学校の頃だったかな、「知ってるおじさん」って言われてました。知ったかぶりをしたがる、知識をひけらかす子どもだったから(笑)。知ってることがとても嬉しかったんです。

その頃、こんな大人になりたいという像はありましたか?

あまり強くこうなりたいと思っていたものはなかったです。ただ、当時の文集かなにかに「プログラマーになりたい」と書いていた記憶はあります。父がパソコン好きだったことがきっかけでした。ポケコンを会社から持って帰ってきたり。最初に触れたパソコンは、X1 turboでした。雑誌に掲載されているBASICのプログラミングをひたすら打ち込んでゲームをしたり、それを改造したり。

中学生の頃から、いつかは起業したいと思っていた

なぜガイアックスへ?

中学生の頃から、いつかは起業したいと思ってました。ガレージカンパニーに対する憧れです。その頃、NHKでやっていた『電子立国日本の自叙伝』を見て、こうゆうのかっこいいなあ、と思って。バケツの水の重みでシリコンインゴットを引き上げる、とか。創意工夫で壁を突破していく逸話がとても好きでした。漠然とですが、モノとお金、技術とお金を交換するようなことがしたいと考えていたので、そのためにも技術とビジネスの両方が必要だと思い、まずは大学院に進学して、メーカーの製品開発寄りの研究者でキャリアを積んで、そのあとビジネスを学んで起業しようと考えていました。

そんななか、ガイアックスに入社した経緯は?

大学に入社したタイミングから、早く社会人になりたかったし、経験を積みたかった。インターンのマッチングを事業として行うAIESECというサークルに入り、海外インターンだけでなく、国内でインターンできる機会の創出に取り組みました。当時はインターンという言葉の認知度もとても低かったですが、インターンを受け入れてくれる企業を探し、希望する学生を募り、マッチングを行なっていました。その中で自分は一番面白そうなところにインターンに行く、と(笑)。計6社くらいだったかな、インターンをしました。ガイアックスは、大学5回生のときに最後に行ったインターン先。入社した決め手としては、ガイアックスでインターンをしている同世代に会って、いろいろ考えてるおもろい奴らがいるなあ、ということがすごく刺激になった。それから、エンジニアとして、すべてを自身が作れなくてもいいかなという気持ちの変化がありました。代わりに技術者に、「話がわかる。気持ちが分かる」と思ってもらえる自分であれば良いか、と思うようになって。あとは、上場を目指す企業の変化の過程を経験できたらいいな、と思っていたので、入社することにしました。

入社してから現在までの仕事を教えてください

最初は、よりカオスな環境が良いと考え、ガイアックスが新規事業として取り組んでいたインターネットカフェの展開をする子会社にジョインしました。ノウハウを固めフランチャイズ展開を志向していました。店頭に立ち店員もやりました。笑。東京の新宿と渋谷、関西空港、京都市内……と、フランチャイズの最初の数店舗の立ち上げです。イメージとしてはコンビニオーナーみたいな感じで働いていました。そのあとは、大規模なコミュニケーションサービスの初期構築プロジェクトをやるというので、その企画提案から設計、運用するところまでをやっていました。2004年から2006年は営業のサポートとして、主にコミュニティ構築の提案の段階から携わり、受注したプロジェクトをたくさん担当しました。2007年に技術開発部部長になって、部署全体で二十個ほどのプロジェクトに同時に並行して動いている時期もありました。そのうち、プロジェクトにタッチする機会は減り始めて、かわりに、組織マネジメントの割合が増えていきました。

Akihide Higo
Akihide Higo

「質の高い課題」とは

現在の仕事のミッションは?

柱は2つで、最も優先度が高いのは、技術・プロダクトが競争の源泉になるような事業を立ち上げること。次に、一緒に働くメンバーに日々没頭してもらえる環境をつくることです。

「技術・プロダクトの源泉となる事業を立ち上げる」というミッションに至った背景を伺いたいです。

私は、エンジニアが長く没頭できる環境をつくることを考えたときに、「何に取り組むか」が非常に重要だと思っています。取り組むものは「質の高い課題」であってほしいし、そこに向けて没頭できて、その中で成長もできて。結果、その課題の解決と事業の成長がリンクしている、という状態がベストだと考えてます。そういったリンク状態に至るには色々な発生パターンがあるのですが、「質の高い課題」が現れるのを待っていてもなかなか出てこなかった。だったら、それをつくりにいくところからやろうと、「本人確認」という課題に注目して事業として立ち上げる、というところをやってきました。もちろんひとりでではなく。

「質の高い課題」というのは、質の高い問いが生まれ続けるような事業のこと?

「質の高い課題」にも種類があります。先進的である・高度であること、複合・複雑な状況の中で解決策を探り当てること、事業に対して機敏であることなどがあると思っています。事業のフェーズにより変わって良いと考えます。しかし、事業のテーマの選び方、プロダクトのアプローチによっては、継続的に質の高い課題を問い続けることは難しかったりもします。
今取り組んでいる課題は、みなさんの財布の中からアナログな身分証を無くすこと、と表現していますが、デジタルが生活に密接に根付いてきた現在において、またシェアリングエコノミーのように、一般のユーザーがデジタルな商取引の主体になる世の中に向けて、オンライン上のアカウントと現実世界の人格を紐付ける機能、言わばパズルのピースが足りてないと感じています。このピースを我々が提供できたら、と事業に取り組んでいます。

Akihide Higo
Akihide Higo

白黒はっきりつけないグレー思考

仕事や人生の中で、自分の中で向き合った課題はありますか?

影響を受けやすいタイプだと思うので、いろんなことやひとに対して「ああ、すごいことだな」「面白い!」「すごいひとだな」と思ってここまできた節はあるんですけど。すぐに影響されてフラフラしちゃう。あと二つ、ひとから言われて、格言だなと思う言葉があって。「ひとには事情がある」と「論理だけじゃない」。どちらもハッとさせられました。私には、外部に特定のメンターがいるわけではないので、大きな影響を受けたのは会社関係のひとや身近なひとからが多いですね。若い頃はとくに、たくさんぶつかって、たくさん叩かれたと思います。

壁にぶつかる分野ってありましたか?

うーん……。物事そんなうまくいかないぞ、と言いますか。腰を据えて誰かと向き合うことや、人と人との関係性や、その大事さや……。そのあたりかなあと自分では思います。分かり合えていない相手とコミュニケーションをとるのは、言葉が鍛えられる感じがします。自分ひとりでは何もできないことをはっきりと意識することができる。それが大事なんだと思います。
あとは、物事の進め方について言うと、常日頃、不確実なものに我々は向き合っていて、不確実なものに対して物事を進めていかなければならない。だから、計画をきちんと立てて進めていくことももちろん必要なんですけど、臨機応変に、その都度計画を変えながら進めていくことがより必要になってきます。その二つをうまく使い分けてやっていかないといけない。そこをいつも意識しながらやっています。

私がすごく印象的だったのは、肥後さんが会社の合宿に行くバスの中で本を読んでいる姿なのですが…

ねえ、なんなんですかね(笑)。ネットカフェの店員をしていたときも、けっこう本は読んでいました。歩きながら読んだり…。本を読む、という行為自体が自分にとってわりと大事なことなんですけど、一方でですよ。それを防護壁にしている感じもあって、それは内向性なんですよ。あまりひとと積極的に交わるのが得意ではないんですね。バスで隣に座って2人きりで長時間、というシチュエーションはとても苦手です。別に、話さなくても、寝たふりしても、周りを巻き込んでもいいのにね(笑)

読む本は専門書が多いですか?

多いです、が、近頃はビジネス書ばかりです。ここ最近だと、U理論、学習する組織、シナリオプランニング、エッセンシャル思考など、そのあたりが面白いなあと。それから、イノベーション理論の本。と、読書家っぽく振舞ってますが、実際のところは、年間通してもそんなにたくさん読んでるわけじゃないんです(笑)。

あと、これは個人的になのですが、肥後さんの頭の中ってどうなってるのかな?と(笑)。質問を投げかけられたあとに、考える時間があって、そのあとに一気に話されてる印象があるのですが。

うーん、ある程度は、考えを整理してから喋りたいと思っています。ただ最近はうまくはまらなかったりするシチュエーションが増えてきてる気がして(苦笑)。最初と最後の論理が破綻してるなあ、とか、そういう機会が多くなってきました(笑)

デジタルアイデンティティが普及している日本を目指したい

お子さんが生まれて、子どもを持ちながら働くことに関して、見方が変わったことや実感していることはありますか?

そうですね。いや、みんなこれ、折り合いつけてやってかなきゃいけないんだよなあって。両立させてやっていかなきゃいけないんだよなあ、と。会社ってもはや、みんなの人生を丸抱えしてコミットできる存在じゃないし、働く人が環境を選ぶことも容易になって、パワーバランスが大きく変わってますよね。とすると、みんなが、自身の選択をしてここにいる。「会社は(あなたは)何をしてくれますか?」という対立や二元論ではなく、会社や共に働くチームの仲間も含めて、お互いを、みんなを尊重できる環境でありたいと思っています。

Akihide Higo
Akihide Higo

こういうひとになりたいと思い描いている像はありますか?

むかしから、ナンバー1よりはナンバー2タイプといいますか、参謀タイプなんです。子供の頃から「諸葛亮孔明カッコイイなあ」と思っていました。

諸葛亮孔明? 

はい、三国志の。で、この年になってやっと限界を多少感じ始めたといいますか、器じゃないなあと思うことも増えてきました。そんな中で、自分に何ができるかと考えたときに、実現したいことがある人のサポートをするのがいいんじゃないかと思うようになりました。あとは、Why/What/Howのフレームワークで言うと、やっぱりHowにこだわりたいんですよね。どう実現するか。私の場合、何故やるのかとか、何でやるのかは、比較的優先度が低いんです。もちろん、組織全体がHowにこだわるべきだとは思っていなくて、WhyやWhatを大事にするひとたちとしっかり連携してやっていくべきだろうなと。自分の思いつきやアイデアは、誰かの頭の中で成長するものだし、自分の考えや言葉はべつの誰かの中で生きるものだと思ってます。

Why/What/Howのフレームワークで言うと、やっぱりHowにこだわりたいんですよね。どう実現するか。

肥後さんにとって仕事とは?

人生における生き甲斐の8割くらいを占めるものですね。仕事が充実していることが、私の人生における満足度の8割くらいを占めていると思います。仕事が充実していれば、人生ほぼ充実してるかなと。でも、子供ができて、そのウェイトがすこし変わってきた感はありますが、ただ、別の生き甲斐ができたというほどでは今のところなくて。今はね。今後また、割合が変わっていくだろうなと感じてます。仕事が8割だった自分の比重がすこし動いた感じです。

最後になりますが、人生のミッション、生涯かけてやりたいことは?

私自身、社会問題というものに対してはあまりシンクロ感がなかったのですが、地方だけは別で。以前から関心をもっていて、地方がもっと効率よく長続きするようにというところに何か貢献したいなと思っていました。それと、自分の中ではつながっているのですが、やはりデジタルアイデンティティは重要だと思っています。認証と署名がデジタルで完結する時代に日本もなっていくべきだと思うし、そうしたいと思ってます。デジタルアイデンティティが普及している日本、というのを目指して、いろいろ試行錯誤しているところです。

本人確認、API型本人確認サービス「TRUSTDOCK」についてのお問い合わせは、株式会社TRUSTDOCKまでお願いします。


肥後 彰秀
2000年にインターンとして、京都大学近辺でガイアックス京都ラボを立ち上げ、運営。2001年当社入社。メッセンジャーやアバターをツールとしたコミュニティサービスの企画・開発プロジェクトほかのPMを歴任。2007年から技術部門の組織運営に従事。2015年技術基盤部長、2016年に当社執行役に就任。京都大学工学部物理工学科卒。
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