現在DAOという新しい組織形態が広がっていると共に、DAOで自治体を運営することによって、地方創生の新たな形を模索する動きが出てきています。とはいえ、「DAOで自治体を運営する」という言葉に聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そのような方に向けて、DAOで自治体を運営する仕組みやメリット、課題は何かについて解説していきます。
なお、ガイアックスでは全国にある「web3×地方創生」に関するプロジェクトを調査しまとめた関連資料を公開しています。省庁や上場企業を含む、多くのご担当者様にダウンロードいただいていますので、もしご都合よければ活用ください。
DAO組成による自治体の運営
まず、DAOについて簡単に説明していきます。DAOとは、分散型自律組織と呼ばれ、特定のリーダーを決めず、関係者みんなで意思決定を行う組織を指します。社長という特定のリーダーがいる株式会社と比較されており、近年大きな注目を集める組織形態です。(より詳しい内容については、「DAOとは」で解説しています。)
地方自治体において急速に進展する少子高齢化や、それに伴う経済衰退・過疎化は日本全体で問題視されています。そのような社会的背景に対し、新しい組織の形である「DAO」を活用した自治体の運営により、地方創生の可能性が広がることが期待されています。
DAOで自治体を運営する仕組み
DAO組成による自治体の運営といっても、あまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。ここでは、そのような方に向けて、DAOで自治体を運営する仕組みについて解説していきます。
自治体ならではのNFT発行
NFTとは、非代替性トークン(Non Fungible Token)と呼ばれ、ブロックチェーン技術によって裏付けられた代替不可能なデジタルデータの総称を指します。これにより、コピーや改竄が可能なデジタルデータに唯一無二の価値を持たすことができるようになりました。例えば、デジタル上で制作されたアート作品をブロックチェーンに載せることで、その作品がオリジナルなものであるという証明ができるわけです。
このNFTを用いて、デジタル村民証となるNFTや地方の魅力的なコンテンツを体験できるNFTなど、自治体ならではのNFTをデジタル上で発行します。発行されたNFTは世界中の誰でも買うことができ、購入者はNFTに応じたサービスや体験を受けるのに加えて、DAOメンバーとして自治体DAOに参加することができます。
DAOメンバーによる活動
NFTを購入して参加したDAOメンバーは、各自治体ならではの課題解決プロジェクトに参加することができます。そして、そのプロジェクトを推進する活動を通して、地方自治体の活性化を図ることができます。
しかし、DAOメンバーはタダでは自治体の課題解決プロジェクトに参加しません。そこで、DAOメンバーが自治体を活性化する活動に対して、自治体側で報酬やインセンティブが発生する仕組みを設計する必要があります。この仕組みを作ることで自律的に運営できる組織を作ることができ、自治体とDAOメンバーの相互互恵関係を生み出すことができます。
なお、ガイアックスが運営する「美しい村DAO」の仕組みを詳しくまとめた資料があります。DAOで自治体を運営する仕組みについて、事例を通して理解したい方は、ぜひ下記をご覧ください。
» 詳細資料を見る
DAOで自治体を運営するメリット
ここでは、DAOで自治体を運営するメリットは何なのかについて解説していきます。
自治体に関わる人口が増える
自治体が発行したNFTは、世界中の誰でもデジタル上で購入することができ、NFTを購入した人はDAOメンバーとして自治体に関わることができます。
そのため、「移住や観光はできないけど、何らかの形で貢献したい」という方々による応援を誰からでも受けることができます。今までは、このような方々と関係性を保つことは困難だったため、移住や観光以外での地域に関わる手段が増えることによる関係人口の増加は大きなメリットです。
自治体ならではの魅力を広めることができる
自治体ならではのNFTを購入した人は、ただ単にNFTを買って外から応援するに留まらず、買って応援の輪に入ることができます。
つまり、ただ単に関係人口が増えるだけでなく、自治体を盛り上げる人口を増やすことにつながります。これはDAOならではの組織体系によるメリットです。
その結果、DAOによる地方自治体の活性化の動きがより活発に働き、自治体ならではの魅力を広めることができます。また、その働きによって更なる関係人口の増加につながり、良いループに入っていきます。
地域課題の解決
関係者全員が同じ目的を持ち、その目的を達成するためにプロジェクトが立ち上がり、関係者全員でプロジェクトの推進を行っていくのがDAOです。
地方自治体は、少子高齢化や地域の過疎化、持続可能な町づくりの形成などといった多くの課題を抱えています。それに対して、DAOという新しい可能性を模索することで、今まで解決できなかった課題へのアプローチをとることができます。
自治体DAOの事例
ここからは、DAOで自治体を運営している事例について紹介していきます。
美しい村DAO
複数の自治体が連携し、地方創生を試みる「美しい村DAO」というプロジェクトがあります。一部の自治体が単独で地方創生を試みるDAO運営の前例はあるものの、財政難や人材不足などの問題を抱える地方自治体では、単独でDAOを組成することが難しい場合が多いです。そのような課題に対して、複数の自治体でDAOを形成することによって、効果的な地方創生への実現が期待されているプロジェクトとなっています。
美しい村DAOでは、デジタル村民証となるNFTや、地域の魅力的なコンテンツNFTを販売するプラットフォームを運営します。これらのNFTを購入することでDAOのメンバーとなり、美しい村の魅力を広めるプロジェクトや、地域課題プロジェクトをDAOで運営することが可能です。
山古志DAO
錦鯉の産地で有名である新潟県の山古志地域では、錦鯉をモチーフとしたNFTアートである「Nishikigoi NFT」を発行しました。このNFTは電子住民票も兼ねており、NFT購入者は「デジタル山古志」の村民になることができるそうです。
デジタル山古志のコミュニティは、チャットアプリであるDiscordを用いて形成され、地域の課題解決に向けて運営されています。このコミュニティを構成するデジタル村民は、山古志のリアル人口である800人を上回る人数で形成されており、山古志に居住していない方々もコミュニティに参加し、地域課題に貢献していることがわかります。
みちのくDAO
「東北を盛り上げる」や「東北大震災の復興とは別軸のWeb3経済圏を作る」などを目的として発足されたプロジェクトである「みちのくDAO」というプロジェクトがあります。
東北は2050年までの人口減少率が一番深刻な地域であるという危機感から、DAOによる関係人口増加に伴うプロジェクト推進の影響を期待して、コミュニティが形成されました。今後はみちのくDAO独自のNFT発行から、DAO運営による東北地域の盛り上がりに期待されています。
DAOで自治体を運営する際の課題
ここまで、DAOで自治体を運営する良い面を紹介してきましたが、最後にDAOで自治体を運営する課題について解説していきます。
自治体に有識者が少ない
NFT発行やDAO運営などは新しい概念であり、これらのことを引っ張って実行できる存在は少ないです。特に、少子高齢化に直面する地方自治体は尚更であり、有識者がいないことにはDAO運営は始まりません。
そのような地方自治体が抱えがちな課題に対して、「美しい村DAO」では複数自治体と連携をとって効果的なDAO運営を図っています。このプロジェクトの運営を支援しているガイアックスは、DAO組成に関するコンサルティングを行っているため、自治体に有識者がいないという課題を抱える自治体運営者は以下よりご相談ください。
» ガイアックスDAOコンサルティングサービス
ロールモデルが少ない
DAO自体が新しい取り組みであり、これから事例を作っていくフェーズであるため、本記事で紹介した全てがうまくいくとは限りません。
本記事で3つほど事例を紹介しましたが、地域によって課題は様々で、ロールモデルも少ないのが現状です。
そのため、DAOは新しい地方創生のアプローチ方法として期待される反面、身銭を切って試行錯誤するか事例を待つ必要があります。
DAO運営を考えている地方自治体は
本記事では、DAOで自治体を運営する仕組みやメリット、課題まで解説しました。本記事を通して、DAO組成による自治体の運営に興味を持っていただければ幸いです。
なお、ガイアックスでは自治体をDAOで運営したい方向けに、DAOコンサルティングサービスをご提供しています。日本で初めての複数自治体が連携してDAOを組成する「美しい村DAO」をはじめとする多くの実績がございます。DAOによる新しいアプローチによって地方創生を図りたい、けれどDAOを運営する知識がないという自治体運営者は、ぜひ下記よりご相談ください。