時代が大きく変化する今、個々人が自主自律的なあり方に進む上で「コーチング」(*1)が再び注目を浴びていると感じています。コーチとして活動している人だけではなく、組織づくりにおいてもコーチング型のコミュニケーションの重要性が高まっているのではないでしょうか。

今回は、社内でコーチング講座の導入に取り組んだ、サイボウズ株式会社の綱嶋航平(つなしま・こうへい)さんをゲストにお招きしました。

≫ 社内でコーチングを広めることで、更にチームワークあふれる会社へ〜サイボウズ株式会社・綱嶋航平さん〜

前回のブログでは、綱嶋さんにサイボウズでの社内コーチング講座の導入ストーリーをインタビューさせていただきました。今回のイベントでは、社内コーチング講座を導入したその後のリアルなお話をお聞きすることができました。

前半は綱嶋さんにお話を伺った上で、後半は参加者のみなさんと社内でコーチング文化を浸透させていくにはどうすればいいか、対話をしながら考えました。

モデレーターは、株式会社ガイアックスの社内コーチとしても活動している荒井智子が務めました。

* 1:コーチング(社内コーチ)とは、相手の話に耳を傾け質問を重ねることにより、相手の潜在的にある想いや答えを引き出し、目標達成に向け行動変容を促すためのサポートです。

サイボウズの目指している世界に向かうためにコーチングを学ぶ

ー荒井ー
講座の開始から4ヶ月ほどが経過して、約25名の方がコアメンバーとして継続的に講座に参加していると伺いましたが、参加者の方々の動機はどんなものがありますか?

ー綱嶋ー
参加している方々の属性はバラバラで、新卒の方やマネージャー、職種も営業、マーケ、エンジニアと多岐にわたっています。参加している方々は、コーチになることを目指しているというよりも、コーチングを仕事に活かすことに対して関心が強い印象です。

ー荒井ー
社内にコーチング講座を導入していくにあたって、改めて何が重要だと感じていますか?

ー綱嶋ー
どのようにコーチング講座を導入することが自社に合うかを、考えることが大事だと感じています。サイボウズの中では、「コーチングを導入して売り上げをあげる!」というのがモチベーションではないんです。それよりも、コーチングを取り入れて人生が豊かになる人が増えて欲しいと思っていて、結果的にそれが個人の幸福と仕事の生産性を高めると思っています。一方で、会社のカルチャーによっては、コーチングスキルを仕事に取り入れて、即効性を大事にしていくことも、なくはないと思っています。

ー荒井ー
既存のカルチャーとマッチングしていることが大事ですよね。サイボウズでは、個人の豊かさが生産性やビジネスにもいい影響をもたらすことを、共通の概念として描けているんですね。

ー綱嶋ー
コーチング講座の導入が決まり参加者を募集する際は、社内でよく使われている言葉を意識して使うようにして、「サイボウズの目指している世界に向かうためにコーチングがあるよ」と共感してもらうことを目指していました。

キャンプファイヤーのようにコーチングを広めていく

ー荒井ー
コーチング講座の導入の時に、対象者を完全挙手制にするのか、リーダー層は必須にするのか、揉めることはなかったのでしょうか。

ー綱嶋ー
議論する中で、対象は自由にしようという結論になりました。研修参加を必須にすること自体がコーチング的ではなくティーチング的になってしまい、サイボウズらしくないと思ったんです。まずはコーチングに共感してくれている方々に参加してもらって火種を作り、キャンプファイヤーのように徐々に広めたいと思っています。

ー荒井ー
進め方もサイボウズのカルチャーに合わせたんですね。実際にどんなキャンプファイヤーができつつありますか?

ー綱嶋ー
真ん中で火を燃やしてくれる人が現れ始めていると感じています。毎日平日の朝昼晩に30分のMTGを設定して「コーチングの練習をするので、参加したい人は是非来てください」と呼びかけている人もいらっしゃいます。

既に個々の1on1で実践している方もいらっしゃいます。コーチング講座のメンバー間でも、「XXさん、最初と比べて間違いなく変わったよね」といったやりとりも耳にしていますね。

ー荒井ー
今後はどのような展開を考えていますか?

ー綱嶋ー
今回のコーチング講座で学んだメンバーが相互にコーチングしたり、周囲のメンバーに対してコーチング的に関わったりしていくために、僕自身もお手伝いをしたいと思っています。コーチング講座終了後も、コーチング部を作って相互に学んでいく機会を作るのもいいですし、コーチング講座の参加者に対し、コーチングをして欲しい人を社内で募集してみるのも面白いと思っています。

「チームワーク」を真剣に考える会社で、コーチング文化を取り込んでいく
「チームワーク」を真剣に考える会社で、コーチング文化を取り込んでいく

お互いに幸せになるために、コーチングを取り入れる

イベントの後半では、参加者の方からも質問をいただきながら、対話を進めていきました。

ー参加者ー
マネージャーの役割も担いながら会社の中で独自で1on1のコーチングを始めたのですが、マネージャーとして部下の課題を解決する立場であるために、クライアントである部下も僕をマネージャーとして意識してしまうので、僕に答えを求めてしまったり、どうしても自分の中から答えを見つけにくいと感じていました。そこで、マネージャーを降りて社内コーチとして活動しようと思ったのですが、社長からの「逃げだよ」というフィードバックをもらい、進め方に苦労しています。会社のカルチャーがコーチングの世界観と遠い場合は、どのようなアプローチが良いのでしょうか。

ー綱嶋ー
指示命令、管理統制の文化の中でも、「コーチングによって数字が出ますよ」と伝えていくテクニックはあると思います。

ただ、一番大事なのは、伝えたい人たちと思いを通じ合わせられるかだと思います。指示命令型のマネジメントをされる人でも、奥底では人を傷つけたいなんて思っていないはず。お互い幸せになりたいという気持ちは必ずあると思いますし、そこで深く通じ合えると思うんです。「お互いに幸せになるための手段としてコーチングがある」というのを、伝えられると良いのかなと思っています。

ー参加者ー
小さなスタートアップの中で1on1の活動をしていると、個人の内面の話がたくさん出てきます。二者間で何か問題が起きている時にどちらの意見も聞くと、介入したくなる気持ちも出てきてしまいます。

ー綱嶋ー
社内コーチとして、目指したいあり方を考えることが大事になってくると思います。当人同士の持っている世界観を促していく立場としてコーチングをするとしたら、なぜ介入したくなるかを内省していく必要があると思います。
他にも、社内コーチとして内部の声をたくさん聞いてくると、コーチだけがいろんな情報を知っている状況になり、コーチ自身がフラットな姿勢を保ってクライアントに接することが難しくなることもあるのかなと想像します。やはり、コーチとして守秘義務があると思うので、当人同士の自立を促すスタンスを維持することが大事だと思います。

ー荒井ー
コーチの役割をクライアントと確認し合うことが大事だと思っています。クライアントの中には、上司との1on1とコーチングの違いを認識しておらず、コーチが課題を解決してくれたり、何か相談したら動いてくれる存在だと捉えている場合もあると思います。コーチは課題を解決してくれる存在ではなく、自分の中の答えを見つけていく鏡のような存在、ということを目線合わせをしておくことだ大事だと思っています。

ー参加者ー
コーチングを導入すると退職者が増えるのでは?と思われていると感じています。コーチとして個々人の”Want”を引き出していくと、「この会社に居続けるのは違うかも」と思い始めることはあるはず。経営的にも人材が流失していくのは怖いと感じるのも当然なので、コーチングを導入するとしても現状の会社の課題と結び付けていくことが大切だと思っています。

ー綱嶋ー
人事が退職勧奨を手助けして良いのか、と言われることもあると思います。僕個人としては、既に「違うかも」という思いを持っているのに会社に残り続けるのは、会社、個人双方にとって不利益だと思っています。確かに事業運営として退職者がたくさん出ることは痛いことかもしれませんが、なぜそのような組織になっているか、経営者が内省する必要があると思います。

11/27(金) は、小寺毅さんとコーチングを取り入れた自主自律組織のはぐくみ方を考えていきます。

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11/27(金)は、株式会社はぐくむにて、脱・ヒエラルキー、脱・指示命令コントロール型の組織を目指す方々を対象にした経営コンサルティング事業を展開している小寺毅(こでらたけし)さんをお招きして、これからの時代において「自主自律型組織」へと会社を変革していくための組織のあり方を考えていきます。

■イベント名
「リアルからリモートへ」離れていてもメンバー全員が自律的に動ける組織マネジメントの在り方とは? 〜コーチングを取り入れた自主自律組織のはぐくみ方〜

■日時
2020年11月27日(金) 14:00〜16:00

■会場
オンラインイベント
*zoomを使用します

■金額
無料

■募集人数
10社(20〜50名)
※ご一緒に参加いただいた方同士でのディスカッション時間もあるので、1社あたり2〜5名のご参加でお願いします。
※代表者1名のチケットで、5名までご参加いただけます。

■登壇者
<ゲスト>
株式会社はぐくむ 代表取締役社長 小寺 毅さん

■主催
株式会社ガイアックス 社内コーチチーム

イベント詳細・お申し込み

ライター編集後記

綱嶋さんが、コーチング講座を社内導入するにあたって、会社のカルチャーとのつながりを丁寧に考えた上で動いたことが、強く伝わってきました。届いて欲しい人にコーチングという言葉が届くためにも、会社全体や個々の状況を理解しつつ、メッセージングしていくことが大切だと学んでいます。

導入後では、火種を徐々に広めていく「キャンプファイヤー」のような進め方をしていることが印象的でした。即効性ではなく、共感をベースにして長い目で浸透させていくアプローチ自体が、まさにコーチング的だなと感じています。

参加者からご質問をいただく中で、会社のカルチャーとコーチングの繋がりをどのように結び付けて伝えていくかというところに、壁がたくさんあるように思いました。コーチングを良しとされている方々の想いがたくさんの方に伝わっていくために、社内コーチングの渦を広げていくことの重要性を改めて感じています。

ライティング :宇田川寛和


荒井 智子

荒井 智子

2013年4月にガイアックスに入社し、2年間法人営業・海外営業を担当。2015年に「働く人の心と身体を健康にしたい!」と会社に訴え、社内でケータリング型社員食堂をスタート。2017年、社員食堂を進化させた形でNagatacho GRiDにカフェtiny peace kitchenをオープン。