「働き方改革」の最中、副業やパラレルワーク、リモートワークなど、働き方の選択肢が少しずつ広がっています。その一方、新しい仕事のスタイルに戸惑う場面も多いのではないでしょうか。

副業のために、本業が疎かになり本末転倒になってしまうのではないか。
どうすれば副業も本業も、仕事の質を高く保てるのか。
本当に副業を通してスキルアップができるのか……?

そんな問いに応えるべく、2019年4月4日(木)、Nagatacho GRIDにてトークイベント「スキルアップに繋がる副業には”秘密”がある!副業戦国時代を生き抜く『キャリア術』を学ぼう!」が開催されました。

本イベントでは自身が副業実践者であると同時に、多様な働き方をするメンバーをマネジメントする立場でもある3名の登壇者をお招きし、副業をうまく生かしたキャリアの築き方についてお話いただきました。
副業のメリット・デメリット、成長の秘訣など「副業のリアル」に迫っていきます

副業イベント_全体
副業イベント_集合

モデレーター:Business Insider Japan統括編集長 浜田 敬子

1966年山口県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業後。朝日新聞社に入社。前橋、仙台支局を経て、93年に「週刊朝日」編集部、99年に「AERA」編集部へ。2006年に出産し育児休業取得。2014年に女性初のAERA編集長に就任。その後、総合プロデュース室プロデューサーを経て、2017年に退社し、「Business Insider Japan」統括編集長に就任。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」やTBS「あさチャン!」などでコメンテーターを務める他、「働き方」などのテーマでの講演も多数行なっている。著書に『働く女子と罪悪感』がある。

パネリスト:株式会社ガイアックス ソリューション事業本部本部長兼ソーシャルメディア事業部事業部長 管 大輔

1989年生まれ、早稲田大学教育学部を卒業後、2013年に株式会社ガイアックスに新卒入社。転職寸前に会社の課題と対策を本部長にぶつけたところ、それが採用され、26歳(当時)という同社史上最年少で事業部長に就任。部の改革に取り組み、就任当時約40%だった離職率は0%、売上は5倍にまで伸長。今年から本部長に就任。プライベートでは家を解約し、毎月住む国を変え、海外を旅しながらの生活を実践中。

パネリスト:株式会社グローバル・カルテット 代表取締役 城 みのり

学生時代よりスポーツ現場を中心にフリーランスアナウンサーとして活動。2002年、インターンシップで渡米した後に、米アパレルメーカーの国外ライセンス管理を行う事業会社を共同設立。08年に帰国に先立ち事業譲渡し、帰国後は事業会社でマーケティング部のアシスタント業務に就き、その後コンサルティングファームのバックオフィス業務、マーケティングリサーチ会社にてマーケティングリサーチャーとして勤務。出産、育休を経て職場復帰するも16年8月に退職し、フリーランスのリサーチャーに。18年3月、グローバルリサーチのスペシャリスト集団、株式会社グローバル・カルテットを設立

まずは、登壇者の3名からそれぞれ、自分や組織のメンバーが副業をはじめたきっかけを共有していただきました。

浜田 敬子
Business Insider Japan統括編集長 浜田 敬子さん
管 大輔
株式会社ガイアックス ソリューション事業本部本部長兼ソーシャルメディア事業部事業部長 管 大輔さん

今回モデレーターを務めたBusiness Insider Japan統括編集長の浜田 敬子さんは、2017年に朝日新聞から現在のBusiness Insider Japanへ転職。その際、収入が減るので副業を考えはじめたといいます。

「大企業からベンチャー企業に転職すると、どうしても収入が下がってしまうんですね。そのため、『転職前後で下がった収入分を自分で稼がせてほしい』と社長へ直談判しました。大企業並の給与はもらえない分、自分で稼ぐ。それは、個人、組織双方にとってメリットだと考えています。会社によりかからず個人の力を付けていくために、副業はスキルアップの良い手段だと思っています。」

2人目の登壇者は、株式会社ガイアックスでソリューション事業本部の本部長、ソーシャルメディア事業部事業部長を兼任する管大輔さん。管さんは「生き方に合わせた働き方を選べる社会をつくる」を個人ミッションとして、日本の地方や海外を転々としながらリモートワークを実践し、最近はついに家を捨てアドレスホッパーとして生活をしているそうです。最先端の働き方・生き方を実践している”時の人”です。

「本業以外では、友人と2人で香港を本社とするコーチングの会社を立ち上げました。始めた理由は、本業でできないポジションの仕事に挑戦したいと思ったからです。今ガイアックスではリーダーとして働いていますが、以前からNo.2としてリーダーを支えて仕事をしてみたいと思っていました。今一緒に会社をやっている友人はビジョンを描くことがとても得意でリーダー向きなので、自分はNo.2のポジションを担っています。」

城 みのり
株式会社グローバル・カルテット 代表取締役 城 みのりさん
副業イベント_参加者

3人目の登壇者、城みのりさんが代表を務めるリサーチ会社グローバル・カルテットは、26人全員がフリーランス。大企業で仕事をしながら、平日の夜や休日にグローバル・カルテットで仕事をする副業メンバーも多いそうです。さまざまな働き方をするメンバーを束ねる立場から、副業に求める価値を共有していただきました。

「『副業を通して本業ではできない経験をしてみたい』という理由で、グローバル・カルテットに入ってくれた方は多いですね。大企業では必ずしも個人がやりたい仕事に携われるわけではないので、副業でやってみたい仕事をしたり、普段関わらない業界のクライアントと仕事をしたりするのはとても新鮮なようです。」

モデレーターの浜田さんが会場に「みなさんが副業をしてみたい理由は?」と問うと、約7割の参加者が「経験やスキルの獲得」に賛同の意を表していました。

副業で陥りがちなワナと対処法

優先順位はあれど、副業に対して本業+αの収入、本業では得られない経験やスキルの獲得を期待する人が多いようです。しかし、物事にはいい面と悪い面が両方セットになっているもの。いざ副業を行ってみると、大なり小なり壁にぶつかる瞬間はあるはずです。

副業の実践者であり、副業をしているメンバーをマネジメントする立場である管さん、城さんだからこそ伝えられる、客観的にみた「副業のワナ」とその対処法を教えていただきました。

管 大輔
城 みのり

管さん:副業の業務が圧迫し、本業が疎かになっていくのはよくあるパターンです。あるメンバーは副業でスタートアップの会社に入ったのですが、土日の稼働もあったため体調とモチベーションとが共に徐々に落ちてしまいました。

課題は、全体のタスクとスケジュールが本人の中で整理できていないこと。そのため、副業のタスクとスケジュール管理も一緒に整理してあげることもあります(笑)副業もちゃんとやってくれることが、本業にもいい影響を与えると思っているので。

城さん:特に副業を始めて間もない時、工数の見積もり齟齬は起きやすいと思います。自分が能力が低いと思われたくなくて、工数を少なく見積もり「できます!」と言ってしまうことってありますよね。いざやってみると想定の工数よりも多くて、作業時間が大幅に増えたり頑張りすぎてしまったり……。

グローバル・カルテットでは仕事を依頼する相手に対して、目安の工数を事前にお伝えするようにしています。アウトプットイメージのすり合わせも入念におこなっていますね。

副業で成長するために必要なマインドセット

自分がもっているタスクやスケジュールを正しく見積もり、仕事相手との認識を合わせておくことが大事とわかりました。では副業の基本を抑えた上で、副業を通じて成長できる人とできない人との違いはどこにあるのか。その鍵となるマインドセットを掘り下げていきます。

管さん:成果を出す覚悟が必要だと思います。「副業をしているから本業で成果が出せなくても仕方ない」という言い訳は通用しません。副業でキャリアアップを目指すのはいいですが、本業と副業どちらも成果を出すことが前提にあります。

その前提を守った上であれば、副業は自分の仕事の仕方を見直すいい機会になると思います。限られた時間の中でどうすれば自分の力を最大化できるか考えるので、業務効率化に繋がります。会社の副業メンバーでも、記事を書く時間が倍速になったり、副業から本業への思わぬ繋がりができたり、本業と副業両方にいい影響を与え合う事例が出てきています。

城さん:1年先のイメージを持つことですね。スタートが同じでも目標を持って仕事に取り組むメンバーと、仕事をただ淡々とおこなうメンバーとでは成長スピードがまるで違います。

あるメンバーは「子どもの受験が終わったらもっとしっかり働いてみたい」と目標を掲げていました。その目標に向けて「会社で何に注力すれば自分の目標が叶うか?」を考えて仕事に取り組んでいたんですね。彼女はこの春から、リサーチ関連のシンクタンクに就職が決まりました。

あくまで個人の夢が先にあって、その途中にグローバル・カルテットがある。働いているメンバーには、夢を叶えるために会社を踏み台にして構わないと伝えています。

優れたリーダーは、副業メンバーを支援する

企業側の視点に立つと、難しいのは副業メンバーのマネジメント。副業やフリーランスなど働き方が異なるメンバーをどのようにマネジメントしているのでしょうか。

副業イベント_リーダー
副業イベント_会場

管さん:副業をするメンバーを制限するのではなく、支援することに集中します。誰だって心の底では会社に貢献したいし、質の高いアウトプットを出したいと思っているはずです。リーダーから手を差し伸べることで、メンバーも信頼関係を崩さないように意識的に取り組めるようになります。ある意味、信頼関係で縛っているんです。

副業をするメンバーに必ず伝えていることがあります。僕は上司だけど、僕の承認をとればいいわけではない。業務に関わる全員に説明をして、みんなから信頼してもらう必要があるよと。そうすると副業メンバーはみんなからの信頼を失わないように頑張るので、周りから尊敬されて好循環がうまれます。

浜田さん:会社も上司もメンバーの面倒を一生見れるわけではないですもんね。私自身副業をやっていることもあり、できるだけ後輩にも副業でチャンスを得てほしいと思っています。チャンスをものにした人は、自信も得られますからね。今の時代、リーダーがメンバーを応援してあげないと、魅力的な組織にはなれないかもしれません。

城さん:自分ではあまり意識はしていませんが、小さいことをよく褒めるとメンバーには言われます。自分ができないこと、苦手なことが多いので、メンバーにはいつも助けてもらっています。本当に感謝の気持ちしかありません。だから自然と褒めていたら、成果も出るようになっていったんですよね。

自分の価値、どう決める?

会場の参加者からは、「副業をやりたいことはあるけど、自分にはそのスキルが足りてないのではないか」と不安になるという声があがっていました。副業を始めるとき、自分のスキルをどのように見積もり、値付けをしていけばいいのか。企業に勤めている中では定めにくい「自分の価値の付け方」について、個人と企業の視点で語っていただきました。

副業イベント質問
浜田 敬子

城さん:実はスキルがあるのに、本人が気づいていないケースは多いです。メンバーとしてジョインする前に「リサーチ業務は一切やったことがない」と言う方は多いのですが、聞いてみるとマーケティングや経営企画、営業出身。競合分析やマーケット調査は必ず行っているはずじゃないですか。部分的かもしれませんが、関連するところはやっているんです。スキルの棚卸しを一緒にすると、「これが役立つんですか!」と閃く方もいらっしゃいます(笑)

もちろん、必要なスキルのレベルに到達していない場合もあります。ただ、必ずしも1から10すべての工程ができる必要もない。1〜10できるメンバーと、そのうち3〜4つできるメンバーを組みあわせて仕事を依頼することもあります。逆に自分から「こういう関わり方ならできる」と提案するのもいいのかなと思います。

浜田さん:個人から企業への交渉も大切ですよね。ただ難しいのは、自分の対価をいくらにするか。スキルに自信がないと低く見積もってしまうし、逆に高すぎると相手の期待値を上げすぎてしまう。会社員時代、自分の値付けってやったことがないので難しいです。

管さん:個人と企業を比べると、圧倒的に個人のほうが弱いと思います。ガイアックスに副業として関わってくれる方も多くいるのですが、対等な交渉を企業から提案するようにしています。副業先の中でも、優先順位高く選ばれたいと思っているんです。優秀な人材に関わってもらうために、企業側も選ばれる意識を持つ必要があると思います。

浜田さん:副業でどんな体験を提供できるのか、この会社に関わってよかったと周りに行ってもらえるようにするのは企業側も歩み寄っていくことが大切ですね。

副業成功の鍵は、個人と組織のフェアな信頼関係

副業に対しての向き合い方、さらに組織として副業メンバーをどう支えていくか。2つの視点から議論を発展させ、これから副業を始める人だけでなく、副業するメンバーを抱えているリーダーに対しても役立つヒントが詰まったイベントとなりました。

副業をする立場として「信頼関係の構築」という責任をもち、副業メンバーを見守る立場として、メンバーを信じて支援する。

部下と上司、個人と企業の関係性がより対等になっていく流れを実感できたイベントでした。


花田 奈々

フリーランスライター。Gaiax主催のイベントレポートや社員インタビューを中心に、ブランドづくりに携わる。その他複数社のスタートアップでオウンドメディアの編集ライティング、イベント企画、コミュニティー運営を担当している。