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|イベントレポート|「社内にコーチング文化を取り入れる」社員数3,000名の組織の中で動き出す個人の想い – 東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ(株)野崎貴弘さん –

  • 最終更新: 2023年11月9日

大きく時代が揺れ動く中で働き方も多様化し、組織をマネジメントする立場にある方々は、新たなマネジメントスタイルを模索する機会も増えているのではないでしょうか。そして、正解のない問いに対する1つのアプローチとして、今改めてコーチング(*1) が脚光を浴びています。
ガイアックスでは2020年5月より社内コーチ制度を導入。コーチングに関するイベントや社内コーチコミュニティの運営を行い、組織にコーチングの文化を広めることを目指しています。
今回のゲストは、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社 野崎貴弘(のざき たかひろ)さん。2017年から経営トップの支援のもとに社内で「いきワクプロジェクト(いきいきワクワクの略)」を立ち上げ、個人コーチング、チームコーチング、1on1の実践方法に関する勉強会、組織開発ワークショップなどを実施されています。野崎さんがどのように組織の中にコーチングの文化を取り入れ、浸透させていったのかをお聞きしました。
モデレーターは、株式会社ガイアックスの社内コーチである荒井智子が担当しました。
*1: コーチングとは、相手の話に耳を傾け質問を重ねることにより、相手の潜在的にある想いや答えを引き出し、目標達成に向け行動変容を促すためのサポートです。

takahiro.nozaki

東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社 野崎貴弘さん
1972年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。
1996年、新卒で東京エレクトロン(株)に入社。
以来、25年にわたり、営業、広報IR、経営企画、人材開発など幅広い業務に従事。
現在は、「愛を循環させ、生きている人を増やす」ことを使命として社内外で活動。
社内では、個人と組織がいきいきワクワクすることを目指したプロジェクトを立ち上げ、
社内コンサルタント兼コーチとして、様々な取り組みを主導。
主な保有資格:

  •  米国CTI認定 プロフェッショナル コーチ (CPCC)
  •  米国CRR認定 プロフェッショナル システムコーチ (ORSCC)
  •  米国CTI認定 リーダーシッププログラム 修了

社内にコーチング文化を取り入れるには(トークセッション)

自分の幸せと人の幸せを実現する手段としてのコーチング

荒井:まず、野崎さんが会社で取り組んでいる内容について教えていただけますか?
野崎:会社の中で「いきワクプロジェクト」という名前をつけて活動をしています。「いきワクプロジェクト」の活動は6つの柱で構成されていて、僕は現在ではプロジェクトの専任という立場になっています。

■いきワクプロジェクトの6つの柱

  1. 個人コーチング
    現在は部長、課長クラスをメインに実施。
  2. 組織開発
    コンサルタント的に関わりながらチーム内での対話を促すように設計し、定期的にミーティングを実施し、2~3年という長期にわたりサポートすることも。
  3. 勉強会(チームビルディング、コーチングセミナー等)
    管理職を支援するという目的で、1on1のレクチャーなどを実施。
  4. 毎月のメルマガ発行
    いきワクプロジェクトの社内広報の位置づけで毎月発行。
  5. いきワクLABO
    申請をして認可されれば、就業時間中に、時間の制限なく好きな研究や開発をしてよいという制度を設計。
  6. キャリア相談
    仕事でモヤモヤを抱える社員向けに、相談窓口として半年前に開設。「コーチング」という名称だとハードルが高いと感じていたり、継続的に受けなくてはいけないと感じている社員がいたので、申し込みやすい名称をつけて新設。

いきワクプロジェクトの根幹として「自由」を掲げておりまして、イベントやプログラムに参加するもしないも、個人の自由というスタンスを大切にしています。
■野崎さんとコーチングの出会いについて、こちらのインタビュー記事もぜひご覧ください。
荒井:コーチとして独立するという選択肢もあったかと思いますが、勤めている会社の中で活動しようと思ったのはなぜですか?
野崎:これが肝というのは特にないんですけど、一つ挙げると今の社長がいたからですね。もし社長が別の人で、僕の話に共感してもらえなかった場合はどうなっていたかわからないですね。
もともと社長と出会ったのは十数年前で、その頃僕は本社から今の会社に出向して経営企画の仕事をしていました。数字を作ったり改善プランを作っていたんですけど、だんだん僕が個人的にそれがつまらなくなってきてしまった。その時に思ったのは、プランを作っても実践するのは結局「人」だよね、と当たり前のことに気づきました。人が動かないと、絵に描いた餅はずっと絵のままなんですよね。
そんなことを考えていた時に社長に「野崎、今何をやりたい?」と聞かれて、社内コーチとして動き始めることになりました。それが2016年くらいで、最初は今のようにキッチリとしたプロジェクトでもなかったし、動きながら考えて形にしていく、やれることから何でもやるという状態でした。

自分のスタンスは明確に。敵対するのではなく一緒に考えていく

荒井:これまで社内コーチのイベントをやる中で、会社との合意形成が難しいという壁が見えてきました。例えば「何を成果とするのか?」という問いが毎回出てきます。目指す成果を示せないと会社が納得しない場合もあるし、そもそも推進したい本人がプレゼンできないと感じる場合もあるようです。野崎さんの場合はいかがでしたか?
野崎:成果に関してはいくつか捉え方があって、うちの会社でいうと「いきワクプロジェクトが目指しているものは時間がかかるものだ」という理解が社長と握れているのが1つあります。あとは僕がプロジェクトを始めるときに、こういう活動って大義が必要だと考えて、会社の経営理念に書いてあることを引っ張ってきました。経営理念にこう書いてあると言えば、「それはおかしいだろ」と反対する人はあまりいない(笑)。
社長の理解と経営理念を使っていくことと、そもそもこれまでの価値観や尺度でなかなか測りにくいことをやっているんだとみんなに話すのも大事。逆にどうやったら測れますかね?と、敵対するのではなく一緒に考えていくのも大事なんじゃないかな。
荒井:すでに社内コーチとして活動している方々は、今までの指標で測りにくいことをやっていると自覚し、それに対してある種の確信を持っているような印象があります。自分のスタンスを明確にしつつ、歩み寄って説得や対話をすることが大事なのかもしれませんね。
野崎:何をやっても反対や無関心の人はいるので、その人を説得しようとは思いません。ただ逆に、必ず共感してくれる人がいると思っているんです。会社の中には役職発言をしている人や、仮面をかぶっていたり、口下手だったり、いろんな人がいると思う。でも本当は理解してもらいたいとか、周りの人と繋がりたいと思っていると信じているんです。表面的に何を言っていても、本当は違うんだろうなって。それくらいに思っています。
荒井:会社は成果を出す場所だし、感情や根源的な人間としての欲求については口に出しにくい空気感が漂っている場合もあるのかなと感じています。
野崎:会社の成果と人の心をどう繋げていくかですね。1つ実践しているのは、会社の中でミッションや目標やOKRというものがあります。それと人間の感情やモチベーションやエンゲージメントとの関係性を見える化する戦略マップを描くお手伝いをしているんです。OKRと人を結ぶ絵を描くようなことを部長と一緒に取り組んだりしています。
そして絵を描いただけではなく、「部門の会議でこれを使って話してください」としつこく言っています(笑)。事業をやっているので、数字は大事ですよ。居心地の良さだけでは成り立たなくなってしまうと思うので、両輪が大事だと思っています。その共通理解があるとやりやすいのかもしれませんね。

「社内にコーチング文化を取り入れる」社員数3,000名の組織の中で動き出す個人の想い - 東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ(株)野崎貴弘さん -
「社内にコーチング文化を取り入れる」社員数3,000名の組織の中で動き出す個人の想い - 東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ(株)野崎貴弘さん -

野崎さんへの質問

「身近な人からじわじわと」受けてもらうことでコーチングの価値を体感してもらう

Q.経営陣の方に対してもコーチングしていますか?社内コーチの対象は部長クラスで、経営陣に対してはあまりしないイメージがあります。

野崎:やっている人はやっています。コーチングが何たるかを理解してもらうには受けてもらうのが一番いい。コーチングの価値は受けてみないとわからないと思っているので、逆に受けてもらうことで理解が深まって、共感が得られるパターンもあると思います。
僕が最初にコーチングを始めた時は、社内外で近場の人から始めました。それは多くの人がやっているやり方だと思います。
荒井:最初はじわじわですよね。どうやら良さそうだ、という空気を作っていき、オフィシャルにしていくという印象です。
野崎:コーチングを学ぶうちに、コーチング万能論(全てはコーチングでなんとかなる)と勘違いしてしまう人もいます。僕はそうは思っていなくて、コーチングが有効なときもあれば、効かないときもあると思っています。全てを解決するとはなるべく思わないように意識した方がいいとは思います。

何のためにやるのか?1on1を導入する時に気をつけるポイント

Q.弊社では社内コーチの制度はありませんが、1on1(上司・部下による定期的な1対1のミーティング)は定着しているんです。でも、みんな「できている」と思っているんですけど、徐々に質が下がってきている感じもしています。
野崎:僕は「1on1を導入するときに気をつけるポイント」についての講座も開催していて、以下の3つのポイントに気をつけてみるといいと思います。

  • 1on1をやる理由を、上司でが自分の口で説明できること
  • 1on1の質を高めるには上司のコーチングスキルとスタンスが大事なので、継続した学習を行うこと
  • 1on1をやってみて、半年後や1年後に受けている人にフィードバックのアンケートをとり、改善サイクルを廻すこと

荒井:1on1をやるときには、毎回本人にどう進めたいかを聞くのも効果的だと思います。フィードバックが欲しいのか、話を聞いて欲しいのか。進め方自体を上長と相談しながら進めるのはおすすめです。

コーチングをする際にはスタンスを明確にすることが大切

Q.私は社内で草の根活動的にコーチングをやっていた時期があります。良さを実感してくれる人や、話したいんだなという人がいて、共感を得られました。しかし、もっと大きくしていこうとするときに「営業の◯◯(参加者D)さん」だと利害が発生してしまうと感じています。会社として「社内コーチ」というオフィシャルなポジションでやっていく方がいいのでしょうか?
野崎:僕の場合はそういうポジションですね。社内コンサル兼社内コーチです。そういうポジションだからやりやすいとは思うんですが、社内コーチというポジションではないからといって、できないということでもないと思っています。
ただコーチングするときには、「営業の◯◯さん」という帽子を一旦脱いで、スタンスを明確にする方がいいとは思います。

野崎さんからのメッセージ

荒井:社内コーチとしてこれから活動したいという思いのある方や、すでに動き始めた方に対してのメッセージをお願いします。
野崎:一言でいうと、継続ですね。これからやってみようという方もすでにやられている方も、いろんな状況の方がいると思いますが、ぜひ続けて欲しいと思っています。そして、自分が楽しんでやること。悲壮感を持っていたら人に伝わらないですからね。新しい文化を取り入れたり広めたり、こういった活動は自分が楽しんでやるということが大事だと思います。

YouTube・Twitter はじめました

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◆ はぐくむ×ガイアックスのコーチングチャンネル

株式会社はぐくむ代表取締役の小寺毅さんとガイアックス社内コーチの荒井智子が、【コーチング / 自律的組織 / リーダーシップ】 などについて語り合います
https://www.youtube.com/channel/UCfYamHWkSK4CGHofcCfHYIw

◆ ガイアックス社内コーチチームの公式Twitter

https://twitter.com/gx_coaching


荒井 智子
2013年4月にガイアックスに入社し、2年間法人営業・海外営業、社長室立ち上げなどを経て、2015年に「働く人の心と身体を健康にしたい!」と会社に訴え、社内でケータリング型社員食堂をスタートし、2017年にtiny peace kitchenとして事業化。2020年に社内コーチプロジェクトを発足し、2022年にブランド&カルチャー推進室の責任者に就任。
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