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|イベントレポート|8/19開催 社内コーチコミュニティ発足記念イベント『自主自律の時代に求められる、個とチームにおける対話のあり方』

  • 最終更新: 2023年9月6日

大きく時代が揺れ動く中、個人や組織のあり方を問い直すことも増え、その問いへのアプローチとして、今改めてコーチング(*1) が脚光を浴びています。その中で、社内コーチという立場で活動したり、活動を始めようとしている人が少しずつ増えています。しかしながら、社内コーチについては前例や参考事例が少ないため、情報交換ができたり志を高め合う場が必要だと感じ、社内コーチコミュニティを発足しました。
今回はその発足記念イベントとして、ゲストに脱ヒエラルキー型の組織を目指す方々を対象に経営コンサルティングやコーチングを提供する〈株式会社はぐくむ〉の代表取締役である小寺毅(こでら たけし)さんをお招きし、時代の変遷やコーチングとの関わり、今求められている対話のあり方についてお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ガイアックスの社内コーチである荒井智子が担当しました。
*1: コーチングとは、相手の話に耳を傾け質問を重ねることにより、相手の潜在的にある想いや答えを引き出し、目標達成に向け行動変容を促すためのサポートです。

自今脚光を浴びているコーチングは、ブームではなく「時代からの要請」

ーいまの時代になぜコーチングが広まりつつあるのでしょうか?

小寺さん 2000年から2020年の20年間で捉えたときに、今のコーチングは”第二次ブーム”と捉えています。法人の中でコーチングが脚光を浴びる時代だと感じています。
2000年代初めの盛り上がり方と今の盛り上がり方は本質的に違い、今回の方がより大きな波になると感じています。
今までは既存の社会や会社のあり方を強固にする仕組みとしてコーチングが生かされてきました。今のコーチングの本質的な流れは、新しい働き方や生き方、新しい社会のあり方を模索して行く中で法人としてのあり方をサポートしていくコーチングに変わっています。これはブームではなく「時代からの要請である」と捉えています。
今までのシステムが終焉を迎え新しいものに向かっていくときに、組織も個人も「自分たちは何者なのか?」や「どうありたいのか?」を問い直されていて、そこに向き合っていくときにコーチングの本質的なエッセンスが求められています。

ー小寺さんは時代の変遷を”大航海時代”とも例えられていますが、時代はどのように移り変わっていくのでしょうか?

小寺さん 会社の中における経営やマネージメントのあり方が変わってきていると感じています。今もまだ主流ではありますが、これまでは管理統制・指示命令・トップダウンという構成が多かったのです。大方の社員にとって向かうべき未来は決まっていて、自分ではない誰かが決めたものがウォーターフォールのように降りてきて、それを自分で解釈して、自分ごと化できるかできないかがポイントでした。
そういったヒエラルキー型の組織統制から、今は組織の中において自分の「色」や「想い」も表現して循環させて、共生しながら自分たちの未来を育んでいくという組織形態に変わってきています。特定の人でないと決められない、自己表現できないという形から、もっと一人一人の個性の表現が始まったと感じています。
エンドオブマネージメントから、スタートオブセルフマネージメントへのパラダイムシフトが起こっています。誰かにマネージメントしてもらう時代は終焉し、自分で自分の舵取りをしていく。そのセルフマネージメントにおいて、コーチングがとても役に立つと考えています。

組織の成果を計る指標は、事業の数値か?関わる人のハピネスか?

ー組織に集まる人が、他律的なゴールから自律的なゴールを描いた個人の集合体になるのは大きな変化ですが、他律から自律にシフトしていくにあたって、どのようなポイントが重要になるのでしょうか?

小寺さん そこが肝であり、実際葛藤する部分です。
会社の経営資源の配分を司る権限を持っている人たちが従来の軸としていたものを緩めていかないと、本質的な変化は起きないと考えています。
いくら若手が自律的にやろうとしても、従来のコントロールが強い会社だと結局上が抑えつけてしまうことがある。上にいる立場の人がうまく手放していけると、圧倒的に早く進んでいくと感じています。

ー事業を作る上で「スピード感や大きな成果」と「自律」は同時に実現していくことはできるのでしょうか?

小寺さん 組織が”成果”を数字的に捉えているほど、自律型への変化は起きにくいと考えています。数字的な”成果”を軸にコーチングを展開すると2000年代初期のコーチングと変わらず、部分的な事業拡大にはつながると思いますが、本質的な一人一人の働きがいや生きがい、共生や分かち合いは起きません。「その売上とどう離れるのか?」という恐怖感との葛藤が最高な対話のテーマになります。何が怖くて、旧来型の利益拡大から手を離せないでいるのか。
トヨタ自動車の豊田章雄社長のメンターである、伊那食品の塚越会長は「利益はうんちだ」と言っています。「注視すべきは、関わる人の幸せである」と言い切っているんです。

ーまだまだお聞きしたいのですが時間の関係で最後に、社内コーチとして活動されるみなさんへ、メッセージをお願いします

小寺さん なぜ社内コーチとして活動するようになったのか、どんな組織にしたいのか、どんな関係性を作っていきたいのか。原点にある想いを表現して、伝えていくことを大事にしてほしいと思います。
数字的なインパクトももちろん大事ですが、一人間としてどういう面持ちでみなさんと相対しているのかを語ったり発信していくことで、その想いからつながる人を1人2人と少しずつ増やして連鎖させていくような流れを作れたら、その流れは無視できないものになっていくのではないかと思っています。

ここで、一度参加者のみなさんがブレイクアウトルームで小寺さんへの質問や感じたことをシェアする時間をとりました。ここからは、参加者の方との質疑応答です。

<質問>社内でコーチングを展開していくときに「売上にならないよね」と言われる恐怖があります。

小寺さん 怖いと思います。怖いですよね。でも、怖いと思うことほど言ってください。
自分がこうしたいと思うことがあって、それを外の世界に表現しようとなったときに、「承認してもらえないんじゃないか?無下に扱われてしまうのではないか?」、と思って引っ込めるとなると、残念じゃないですか。
「売上にならなくない?」と言われてほしいです。100人いたら、100人に言われてほしいです!もしその中の1人、2人から「いいじゃん」と言われたところから始めたらいいと思います。
荒井 ここでみなさんに勇気玉を送りたいと思うのですが、社内コーチの先駆者であるSansan株式会社の三橋さん。いまの質問に対して、いかがですか?
三橋さん 7年前に同じようなことを思っていたなぁと思いました。その当時のマツダの戦略に関する記事が記憶に残っているのですが、No.1戦略ではなくニッチを攻めるマツダが、3%から5%の人に最高のファンになってもらうような戦略を立てようと打ち出したんですね。「これ、いいな」と思いました。全員に好かれることなんてできないわけです。
自分は100人中5人の人に最高の価値を届けようと思ってやり始めて、結果的に現在700名ほどいる社員の内の250名くらいにはコーチングを体験してもらっています。それくらいの気持ちでやると、何か起きると思います。言いたいことは一つ。「やりましょう!」

<質問>コーチングによって見えてきた当人のミッションが、現場との役割と乖離していた場合はどうすればいいですか?

小寺さん これも気にすることはないです。むしろ、起こしてほしいと思っています。
明るみに出ることがあるとすれば、それはもう起きていたこと。
本人が心の中にしまっていて、葛藤したり見ないようにしていたものがコーチングによって出てきて、よりリアルになってくるという話。
起きていたことを隠す必要はありません。起きていることを明るみに出すのが、組織のコーチングにおいてとても重要で、きれいに見せないことが大事です。
資本主義の1つの問題点と捉えているのは、なんでもきれいに見せて「俺らすごいぜ、グレイトだぜ」とやりすぎているところがあるのではないかと感じています。
僕ら人間も同じで、ダメなところや等身大の姿をどれだけ組織の中で出せることができるようになるのか。それが躍動感を生み、生命力にあふれる組織になると思っています。
明るみになった現実を見て「これがリアルだから」と語りましょう。

<質問>チーム内での対話が生まれる成功事例を見てきた小寺さんが、チームの流れが変わるきっかけにはどのようなものがあるのでしょうか?

小寺さん 場の中で、どなたでもいいですが、誰か一人が等身大の自分の話を語ることができて、それを最後まで聴き切ってもらう土壌があったときに何かが生まれていく可能性が広がっていくと思っています。基本的に会社のコミュニケーションは「売上になるのか?」「自分たちが追っている数字にどうインパクトがあるのか?」が話すか話さないかの判断基準になっていたり、自分が発言することが人事評価の中において正解なのかどうなのかというフィルターをかけて、プラスに働くような発言をするかもしれません。
そういう算段抜きに「自分はこういう人なんです」ということを場に出せたときに、チームは呼応して場が変わっていく。感情を含めた分かち合いができるかどうかだと思っています。
イベント後のアンケートでは、「勇気をもらった」「かっこよく見せずにありのままでいることが一番」「事業の数字を追いながら焦燥感があったが、本質的な想いを思い出すきっかけになった」などの声があり、参加者のみなさんの熱い想いを感じました。イベントで感じたことや学びをエネルギーに変え、それぞれのフィールドで活躍されることを心から応援するとともに、この社内コーチコミュニティをみなさんと一緒にさらに推し進めていきたいと感じています。

ライティング:樗木 亜子

8/19(水) コーチコミュニティ発足記念イベントを開催します

次回イベントは、実際に社内コーチとして活動されているお二人をゲストにお呼びし、自社で社内コーチとしての道を切り拓いた道のりや葛藤などをお話いただきます。参加者のみなさんとの対話しながら、進行していきますので、ご質問などにもお答えしていきます。
■イベント名
社内コーチの先駆者が語る!自社で社内コーチとしての道を切り拓いた道のり
■日時
2020年9月10日(木) 19:30〜21:30
■会場
オンラインイベント
*zoomを使用します
■参加費
参加チケット 2,000円
録画チケット 1,000円
■登壇者
<ゲスト>
Sansan株式会社 人事部 社内コーチ 三橋 新さん
株式会社Seven Rich Accounting ウェルネス事業部 早川 滋さん
■こんな方におすすめのイベントです
・すでに社内コーチとして活動している方
・これから社内コーチとして活動したい方
・社内にコーチングを導入したいと考えている方
・自律的な組織運営に興味をお持ちの方
■お問い合わせ
info@tinypeace.jp

イベント詳細・お申し込み

荒井 智子
2013年4月にガイアックスに入社し、2年間法人営業・海外営業、社長室立ち上げなどを経て、2015年に「働く人の心と身体を健康にしたい!」と会社に訴え、社内でケータリング型社員食堂をスタートし、2017年にtiny peace kitchenとして事業化。2020年に社内コーチプロジェクトを発足し、2022年にブランド&カルチャー推進室の責任者に就任。
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