大きく時代が揺れ動く中、個人や組織のあり方を問い直すことも増え、その問いへのアプローチとして、今改めてコーチング(*1) が脚光を浴びています。その中で、社内コーチという立場で活動したり、活動を始めようとしている人が少しずつ増えています。しかしながら、社内コーチについては前例や参考事例が少ないため、情報交換ができたり志を高め合う場が必要だと感じ、社内コーチコミュニティを発足しました。

社内コーチ向けのイベントとしては第2回目となる今回は、社内コーチの先駆者であるSansan株式会社三橋新さんと、株式会社Seven Rich Accounting早川滋さんをゲストにお招きし、自社内で社内コーチとして切り拓いた道のりについてお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ガイアックスの社内コーチである荒井智子が担当しました。なお、本記事は同じく社内コーチである樗木亜子が執筆します。

ゲストのお二人がコーチングに出会ったきっかけや、社内コーチとして活動されるに至った経緯についてはこちらの記事にまとめておりますので、よろしければご一読ください。

*1: コーチングとは、相手の話に耳を傾け質問を重ねることにより、相手の潜在的にある想いや答えを引き出し、目標達成に向け行動変容を促すためのサポートです。

Q:社内にコーチングを展開していく際に、どのような障害がありましたか。そもそもコーチングに馴染みがない社内のメンバーからの反発や会社への結果(定量定性)の示し方などについて工夫してた点はどのようなものでしょうか。

三橋さん やるべき業務が目の前に100%ある中で社内コーチングを実施するのは、とても難しかったです。でも僕は「やろう」と決めていたし、やりたかったので最初の3-4年ぐらいはほぼ毎日朝8時・昼12時・夜6時以降はほぼセッションをしていました。それぐらいやり続けると、何かしらの結果が見えてくるんだろうなと思いながら、やっていました。

定量定性の話をすると、最初は定性でいいんじゃないかなと思っています。僕が一番大事にしていたのは、その場その場のクライアントに対してちゃんと価値があって、何か学びや気づきを持って帰ってもらえるかということでした。それが提供できないと、リピートも広がりもないと思ったので、目の前のクライアントに向き合うということが大事だと思って続けていました。
また半年に一度アンケートを実施して、会社へ結果を提示していました。その中でもインパクトがあったのは、20-30人ほど実施した後のタイミングでリピート率が100%でコーチングを受け続けたいと言ってくれたことです。実績を積む間は定性を意識してクライアントが価値を感じてくれるようにしつつ、社内の関係者へも説明していくことが大事かなと思います。”

早川さん 僕は三橋さんとは逆で、最初に定量化して会社に提案してきました。具体的には、健康状態についてアンケートをして可視化して、なるべく定量化した情報にして納得していただけるようにまとめました。
当時でいうと、健康状態や心身の状態について、経営層が見ているものと、実際の社員の状態に乖離があるなと感じていました。社員側からすると負荷がかかっているという状態でも、経営層からすると負荷がかかっていると認識していない部分があった気がします。
まずは状況を把握することがすごく大事かなと思ってまして、随所にアンケートを実施しました。当時は相談する時間や場所もなかったからか、回答率は高かった印象です。

定量も定性もどちらも大事で、そのときの社内の状況を鑑みて進めていくのが大事なのかもしれません。自分が推し進めていきたいものは大事にしながらも、会社が何を考えているかをキャッチしておくというのはお二人とも共通のポイントでした。

Shigeru Hayakawa
Shigeru Hayakawa

Q :マネジメントとして実施する1on1と、第三者的に関わる社内コーチとではどのような違いがあるのでしょうか?

三橋さん どの領域まで踏み込むかっていう話がありますね。
マネジメントとして1on1をやる上で、ミッションとしては成果を最大化することだと思います。よって成果を最大化するために戦略・戦術理解やメンバーのモチベーション向上のために必要な対話をすることが、マネジメントの役割だと思います。一方で、社内コーチはその人がいい状態になることが、業務パフォーマンスの向上につながると思っているので、人生についてや、夫婦や家庭の話も出てくることがあります。1on1とコーチングでは、扱う領域の幅がが違うかなと思います。

プライベートの話も少なからず仕事に影響していると思っています。そもそも人生かけて何やりたいか分からないときに仕事のやりがいなんてなかなか見出せないのではないでしょうか。僕は社内コーチとして、その領域まで踏み込んで関わりたいと思っています。

三橋さんと同じSansan株式会社で社内コーチを務めている谷さんは、次のように話されました。谷さんはもともとエンジニアのマネージャーをされてて、三橋さんのコーチングを受けてから、コーチングを学ばれて今では同社の社内コーチとして活動されています。

谷さん マネジメントとして1on1をするとき大事にしているのは、「あなたと話したいんだ」という意志を伝える姿勢です。体調がよくなかったり落ち込んだりしている時は人ってなかなか口を開きにくくなると思うんです。社内コーチになるきっかけにもつながるのですが、ある時期、相手にお菓子のハッピーターンを手渡してから1on1を始めていました。「ハッピー?」って聞いたりして(笑)。すると、返答するときの表情からその人の今の状況が感じられ、それをきっかけに相手も話をしてくれました。。普段の業務とは違う空気感をつくることや、1対1の関係づくりをしているうちに「これだけやりたい」と思うようになり、エンジニアから社内コーチになりました。

谷さんの空気感の作り方からチャットが盛り上がり、オンラインが増えている今、どんなことができるだろう?という話に展開しました。

arata.mitsuhashi
arata.mitsuhashi

Q:情報の取り扱いについて、注意点や留意した方がいい点がありますか?社内コーチの場合、社内のことも把握しているので、必要に応じて社内に展開することはあるのでしょうか?

お二人とも、守秘義務として自分の中に止めておくというところは共通していました。また参加者の中には「話してもらったことは僕が墓場まで持っていきます」ということをコーチングセッションの初めに話すとのことでした。

社内への情報の展開について、早川さんは以下のように話されました。

早川さん どうしても誰かに相談したほうがいいことや、本人が望むものに関しては、本人に同意を取った上で、関係者に伝えたケースはありましたが、数えるぐらいでした。こちらから積極的に社内の部署に対して働きかけるということは、ありませんでしたね。

Q:コーチングを受けて会社を辞めたいと言った人はいますか ?

三橋さん コーチングを受けて辞めたいと言うようになった訳ではなかったんですが、辞めたいという人にコーチングしたことがありました。でも、その人が本当にやりたいことを深く聞いていくと、今の会社でもできることが見つかることが多かったですね。みなさん会社に入るときにそれなりの決断をしているはずなんです。だから、まずは入社時の思いに立ち返ってもらいます。その上で、逃げたいとか向き合いたくないものがあると思うんですね。そのような課題は「会社を辞めたとしても、また同じ課題がやってくる可能性がある」と伝えることもあります。

私も自分が駆け出しの頃を思い出したり、ここ最近自分に起きていることを思い出して、三橋さんの言葉が身に染みました。参加者のみなさんも深く頷いていたので、きっとみなさんも何かしらを感じていたのではないかと思いました。

 

最後に、お二人の社内コーチとしてのミッションを伺いました。

三橋さん 「個人と組織の進化を支援する」
早川さん 「ウィルに邁進する人を増やしたい」

お二人の経験に基づいた具体的なお話とコーチとしての信念に触れられたことが、参加者のみなさんにとっても学びになったようです。これからも社内コーチコミュニティでは、ゲストをお招きしたイベントを実施し、社内コーチという文化を浸透させていきたいと思っています。

編集後記

参加者のみなさんが、すでに社内コーチとして意志を持って活動しているからこそ湧き上がる「こういう時どうしたらいいのか?」という問いが具体的だったのが印象的でした。また、ゲストのお二人の経験に裏打ちされたお話を聞き、参加者のみなさんが深く頷くシーンが何度も見られて、学び多き時間となりました。

10/6(火) 14:00 〜15:30 部下の可能性を最大化する「聴き方」を学べます

次回のイベントは、『マネージャーがコーチング型アプローチを学ぶべき理由〜「部下の可能性を潰してしまう12の聴き方」』と題して、マネージャーとして部下の可能性を最大化させるコミュニケーション方法について学んでいきます。

ゲストは、「部下の可能性を潰してしまう12の聴き方」を提唱した、株式会社はぐくむ代表取締役の小寺毅さんをお招きして、主体的に行動できるメンバーを育成する上で必要な「聴き方」についてお話いただきます。

■イベント名
マネージャーがコーチング型アプローチを学ぶべき理由〜「部下の可能性を潰してしまう12の聴き方」とは〜

■日時
2020年10月6日(火) 14:00-15:30

■会場
オンラインイベント
*zoomを使用します

■参加費
無料
*イベント開催後、1週間視聴いただける録画チケットもご用意しております。

■登壇者
<ゲスト>
株式会社はぐくむ 代表取締役社長 小寺 毅氏
<モデレーター>
株式会社ガイアックス 荒井 智子

■当日のアジェンダ(予定)
・ゲスト紹介
・トークセッション
「部下の可能性を潰してしまう12の聴き方」
メンバーの可能性を引き出す「聴き方」とは何か
・質疑応答
みなさんのご質問にお答えします
・チェックアウト

■こんな方におすすめのイベントです
・すでに社内コーチとして活動している方
・これから社内コーチとして活動したい方
・社内にコーチングを導入したいと考えている方
・自律的な組織運営に興味をお持ちの方

イベント詳細・お申し込み

荒井 智子

荒井 智子

2013年4月にガイアックスに入社し、2年間法人営業・海外営業を担当。2015年に「働く人の心と身体を健康にしたい!」と会社に訴え、社内でケータリング型社員食堂をスタート。2017年、社員食堂を進化させた形でNagatacho GRiDにカフェtiny peace kitchenをオープン。