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本を読まずに参加できる読書会Booked VOL.10
「21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考」のイベントレポート

  • 最終更新: 2023年11月9日

石野慧太です。
本職は(株)侍にて、学生、社会人といった様々な方に対してライフプランに基づくプログラミング学習計画を提案をするコンサルタントをしています。また、約10年ほどシェアなワーク&ライフスタイルを送ってきているのでその経験を活かした自分にできる「次の社会づくり」の形を模索中でもあります。
Booked〜本を読まずに参加出来る読書会〜Vol.10『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』に参加しました。感想と勝手な考察をご紹介します!

まず、私が感じたこと。
それは、この本で語られている内容は、現代人の基礎養として誰もが絶対知っておいた方がいい!ということでした。
私はサピエンス全史上下で止まっていたのですがホモ・デウスも本作もどちらも読みたくなりました。そもそもBookedとは、本を読まずに参加できる読書会。本を読みたいけど、時間がない人のための企画です。
今回はオンラインも含めて40名の方が参加したそうです。男女比半々くらいで、ほぼ全員が初めての方とのこと。かつ、実際に書籍を読んだことある人は3人だったので、やはり本を読んだことがない人が気軽に来れる場なんですね。
そして、本の興味が似ている人とは価値観も似ている可能性が高いのかもしれません。
シェアタイム、休憩、交流会のすべての時間でみんなが自然に繋がり、楽しく話している姿が印象的でした。私は今回はレポートのため後ろから眺める立場でしたが、過去に参加した時はいずれも同じく、楽しく繋がることができました。この場に集まる人は話しやすく、いい人ばかりなんです。
また、昨年10月に初めて参加して以来、毎回参加していますが一人一人が自分の考え・意見に気づきやすい場だと感じています。
書籍の図解を落ち着いたトーンでそのまま伝えようとしてくれている沖山さん。
ゆったりとしたテンポの低音ボイスで、的確なモデレートをしてくれる浦野さん。
場をあたたかく見守り、包み込んでくれているNataliaさん
3人の雰囲気、声のトーン、自然体さ。そして、誰もが答えを与えようとしていないスタンス。これらがベースにある場だからこそ自分の考え・意見に気づきやすいのかもしれません。そんな場を味わいたい方はぜひ足を運んでみてくださいね。
ちなみに、会の大まかな流れはこちらです。
・オープントーク / アイスブレイク
・書籍の図解プレゼンテーション
・パネルディスカッション
・グループで対話/全体討論
・交流会
今回主に話をしたのは3名でした。
プレゼンター:沖山さん  図解クリエーター
モデレーター:浦野さん  AIの研究者
ゲスト:松原さん     ハイブリッド総合書店hontoの方
前置きが長くなりましたが、これからいよいよ内容のレポに入っていきます。
会の中で私が気になった箇所、そして考察を紹介させていただきますね。

21 lessons of the 21st century

この本の位置づけ、狙い

世界的ベストセラーのサピエンス全史が「過去」を扱ったものに対して、2作目のホモ・デウスは「未来」を扱ったものでした。
そして、今回は「現在」を扱っています。この書籍の目的は、現実世界で起きていること、課題、それらの持つ意味を明らかにすることだそうです。
ハラリ氏は、我々が直面していてすぐに取り組むべき課題として以下の3つを提示しました。

  • 核戦争
  • 生態系の崩壊
  • 技術的破壊

しかし、今の社会はこれらに対して解決策をもっていないそうです。
書籍でもそれぞれ課題への対策は書いていません。
一方で、私たち1人1人に対してはどうあるべきか?という提案を書いています。

人の信じたいものを信じたい気持ちが戦争にも繋がりうる!?

今は経済的に合理的ではないから戦争が起こらないそうです。

しかし、ナショナリズムの異常な高まりと、テロリズムに対する過剰反応によって協調が崩れてしまうと強硬な手段として戦争が選ばれてしまう可能性もあるそうです。
つまり、私たち1人1人次第でもあるということですね。
最近では、政府がマスコミを通じて行うプロパガンダがある、ということが明るみに出ていることが多いと思います。
それでも、人は時に恐怖、正義といった理由でフェイクニュースを信じ、あるいは面白半分でシェアしてします。
去年、フェイクニュースを信じた人たちからの非難が集中・拡大し、ある公職の方が自殺してしまった事件があったことを思い出しました。
これは、特定の国への反感があったことが拡大の背景にあったようですが一度始まってしまった狂気はよほどのことがないと止まらないのですね。。。
この出来事がさらに拡大すると、戦争につながるということなのでしょう。
言い換えれば、こういった感情を政府に利用されて、特定の国への暴力とも思える行為が許可、正当化されてしまうのでしょう。
そんなことは許されるべきじゃないと思いつつも、その時、周囲にいるほとんどの人たちと自分が違う意見を持っていたとき自分の意見を発信し、通せるかというと簡単じゃないなと思いました。そして、数の暴力が自分に向けられたとしたら?を考えると、逃げるしかないんじゃないか、とも思ってしまいました。

Booked〜本を読まずに参加出来る読書会〜Vol.10『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』

Photo : Masato Sezawa
Contact : m.sezawa@gmail.com

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Photo : Masato Sezawa
Contact : m.sezawa@gmail.com

地球規模の問題を自分ごとにする

ゲストの松原さんが生態系の破壊のパートで話していたことが印象的でした。
「グレタさんの主張を見れてない。説教されるのかなって思ってしまう。分かってるよって耳を閉じてしまう。それも自分ごとにできてないなと思う。どうしたらいいかな。」
まず、このように本音を正直に語られた松原さんが素敵だと思いました。
そして、この話を聞いた時に思い出したことがあります。
それは、最近私が考えていた「正しさよりも楽しさ」というテーマです。
世の中には人が絶対的に正しいと感じやすいテーマがあると思っています。この自然環境保全に関することは代表的な1つでしょう。
このテーマについて聞いた人は、正しいことだと感じながらも、動けていない、動けたとしても持続できていないことが多いのではないでしょうか。
私は人が正しさだけで動くことの限界、があるように思っています。正しさだけでは活動が持続しにくい気がします。
すでに「すべき」という正しさに囲まれている私たちにとって、さらなる正しさを提示されることは、
ますます正しく生きることを押しつけられている気がして窮屈さを感じたり、萎縮してしまうからではないでしょうか。
ではどうすればいいのか。
私は去年参加した気候変動に関するイベントで聴いた長野在住のプロカメラマンの方の話が好きです。
彼は、「環境問題のことなどに取り組む前に、実際に自然に触れて、地球を愛している自分に出会って欲しいと思っている」と言っていました。
また、別のイベントで環境活動家の方が話していたことも思い起こされます。彼が活動に取り組むきっかけになったのは15歳くらいの時。
毎夏、宮古島で3ヶ月ほど住み込みしながらダイビングをしていたことがきっかけだったそうです。「この綺麗な海を失いたくない」という想いから環境活動を始めたそうです。
この2人に共通していることは活動の起点に愛、楽しさがあることだと思います。
そして、そんな彼らだからこそ私は「もっと話を聞きたい・影響を受けたい」と感じたのだと思います。
だからこそ、このテーマに関して「まず」大事なことは楽しさだと思いました。
自然環境に関して、自分が楽しいと感じることを見つけること。そしてその楽しさを誰かに分かち合うこと。これらが、まずできることではないかなぁと改めて思いました。

Booked〜本を読まずに参加出来る読書会〜Vol.10『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』

Photo : Masato Sezawa
Contact : m.sezawa@gmail.com

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Photo : Masato Sezawa
Contact : m.sezawa@gmail.com

テクノロジーの発達に伴う、人間の再定義について

3つの印象的な話がありました。

  1. ゲストの松原さんが六本木の展示で見てきたという、デザイナーベイビー(※)の話
    ※ウィキペディアによると受精卵の段階で遺伝子操作を行うことによって、親が望む外見や体力・知力等を持たせた子供の総称。 親がその子供の特徴をまるでデザインするかのようであるためそう呼ばれるとのこと。
  2. 浦野さんが教えてくれた実験の話。被験者は電極つきのヘルメットを被った際に、すごい集中力になることができたそうです。そして、その取材が終わったあと、また被りたくなったとのこと。
  3. 参加者の方が感想で言っていた「AIに与えられた情報で消費し、それが本人が納得して楽しいとしても、人間としてそれでいいの?って思ってしまった。」「AIがマッチングアプリで自分で選ぶよりも合う人を紹介してくれたら、受け入られるかどうか分からない。」という話。

これらを聞いた時に思ったことは、私たちが暗黙のうちに「これが普通の人間だ」「これが共通ルールだ」と思っていた前提が崩れてきているということでした。
遺伝子操作をして特定の能力が強化された存在は人間なのでしょうか?
機械化を行い、集中力や判断をアウトソーシングすることはフェアなのでしょうか?
例えば、遺伝子操作というと怖く感じるかもしれませんが遺伝子疾患による障害を軽減、あるいはなくすことができるとしたら印象は変わりそうです。
「こどもたちを救えるんです!」と訴えられると、応援さえしたくなるかもしれません。
私たちは「正しい」と感じることについては好感を持ちやすいが故に、思考停止になりやすいと思っています。ですが、プラスの面を許容するということはマイナスの面が起こることも許容することと言えます。
上記の方向での遺伝子操作を許容することでそう見せないように偽りながら人間兵器を生み出す実験が行われるかもしれません。(あるいはもう行われているかも)
人間は、これまでの経済発展に伴うあらゆる開発において、ポジティブな面ばかりを見て勧めてきて、いざネガティブな面が表出すると「聞いていなかった」と文句を言ってきたように思います。
大切なことは、対象の陰陽を洞察して、陰のリスクがあるが、それを引き受ける責任も理解した上で意志表示をしていくことなのではないでしょうか。それが精神的に成熟している、精神的に大人だと言える状態だと私は捉えています。
こういう大人が増えれば、核戦争を起こすレベルまで民意が極端になるとは思えません。
意思決定するのはそういったポジションにいる人たちですが、民意は無視できないはずです。だからこそ私たち1人1人が物事を洞察し、自分の意見・意志を持つことが重要なんじゃないかなと思いました。

Booked〜本を読まずに参加出来る読書会〜Vol.10『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』

Photo : Masato Sezawa
Contact : m.sezawa@gmail.com

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ハラリ氏は映画マトリックスにおけるモーフィアス!?

今回のプレゼンを聴いて総じて感じたことは、ハラリ氏は映画マトリックスにおけるモーフィアスのような存在だということでした。
(映画マトリックスを知らない、観たことがない人はすみません!これを機にぜひ観てみてください。)
落合陽一氏は、その主張の中で脱・近代を掲げていますが2人に共通しているのは
私たちにとって当然すぎて疑うことのない生活の前提を明らかにしてくれているということです。当たり前すぎる前提を人はなかなか疑うことはできません。
しかし、この書籍の知識を得ることで前提を疑い、他の解釈が生まれる余地ができます。書籍ファクトフルネスも「出来事・情報に一方的に左右されない自分づくり」につながる知恵を提供してくれていると思います。
これらの本が売れているということは、従来の枠組みで言う先進国において「前提を疑おう」という風潮が高まっているのかもしれません。
そして、モーフィアスといったのはマトリックスの1作目では彼は本当の現実世界での絶対的リーダー/思想家のように描かれていますが、
2作目以降では、彼もまた本当の現実世界における1人のリーダー/思想家にすぎないことが分かってきて、その絶対性が揺らぐからです。
私はこれを(映画の中においての)本当の現実であっても、そこには1つの思想しか存在しないのではなく様々な立ち位置があること、と捉えました。
このことは映画の中だけではなく私たちの生きる世界でも同じではないでしょうか。
ハラリ氏は鮮やかにこの世界を洞察したものの、それが絶対的真実という訳ではなく彼の個性である主観が大いに含まれているということです。
例えば、これは浦野さんが話してくれたのですがハラリ氏は書籍で一貫してトランプ氏を批判していたり、ゲイツ氏が直言したそうですがコンピュータの悪い面ばかりフォーカスしていたりという一面的な主張もあります。
そうはいっても、まずは彼の言う通りに世界を信じてみる。彼の提示するメガネでもって世界を洞察していく。
しかし、やがてそのメガネでも疑問・違和感が生まれることと思います。そのときにそのメガネを盲信するのではなく、自分の疑問・違和感を通じて、自分の立場/意志を明らかにしていくこと。そうすることで自分にとっての意味のある人生を送ることができるのではないでしょうか。
実際に、ネオも途中までは絶対的にモーフィアスを信じます。しかし、やがて自分の体験を通じて信じたことに基づいて行動するようになっていきます。
ハラリ氏は、現代に対する洞察だけではなく生き抜くために必要なことも紹介しています。

Booked〜本を読まずに参加出来る読書会〜Vol.10『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』
Booked〜本を読まずに参加出来る読書会〜Vol.10『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』

これらの提案は、私たち1人1人がネオ(自分の意志を持ったリーダー)として生きていくことのように思いました。
ハラリ氏は、20歳の頃から毎朝、瞑想を行なっているそうです。彼は瞑想することでこれらの力を磨いていったのでしょうか。
他にもどんなことをして力を磨いているのか、興味深いです。

最後に

課題だらけで何とかしないといけない状況にいると速読、速習といった速さを求めてしまいがちな気がします。
ですが、私の場合は「速く、あれもこれも」となるとテンパってしまい、結局浅く広くよく分からないままになってしまいがちなんです。
また、ビジネス書を読んで著者の考えを知って、それで分かった気になってしまうのもあります。
以前、興味深い2つの読書の種類が書かれている本を読みました。
1つは、ヨコ糸の読書と呼び、時代の常識的なことを知ろうとするものだそうです。例で書かれていたのは「ネットで金儲けをする」ノウハウ本や、当時特に騒がれていた「放射性物質から身を守る」本などでした。
これはもちろん役立つけれども、時代や常識が変わったら役立たない可能性があるそうです。
もう1つは、タテ糸の読書と呼び時代が変わろうが、常識が変わろうが変わらない「真理」、これについて知ろうとするものです。
時代の転換期だからこそ、タテ糸の読書をして欲しい。
そんな主張の本でした。タテ糸の読書は、時間がかかるでしょう。1つ1つ咀嚼しながら読むからです。
でも、そのプロセスが長い目で見て自分のブレない軸を築いていってくれるのではないでしょうか。
Bookedで扱っている書籍はいつも、タテ糸の読書と呼べるような本ばかりです。
この会を通じて、手にした図解という名のマップを通じて、自分の興味が湧いた領域へさらに探求の旅をしてみてこそ、この場の価値が最大化されるんじゃないかな。
そんなことを思いました。
速い時代だからこそ、遅く。個人的には逆張り作戦で行きたいと思います。
イベントに触発されて長文になってしまいましたが最後まで読んでいただきありがとうございました!

ちなみに、Bookedを主催しているGaiaxは、今回のハラリ氏の1人1人への提案に繋がるイベントをたくさん開催しています。
Bookedはもちろんですが、きっかけづくり、つながりづくりとして気になったイベントにはぜひ足を運んでみてください!


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