2019年4月14日(日)、Nagatacho Gridにて本を読まずに参加できる読書会「Booked」が開催されました。6回目の開催となる今回、ピックアップした本は佐藤航陽さんの著書『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』です。

私たちの日常に不可欠であるにも関わらず、どこかとっつきにくい印象がある「お金」。『お金2.0』で解説しているお金の事実や新しい経済の形について、参加者全員で理解を深めていきます。

イベント前半では、Bookedメンバーの沖山 誠さん(きょんさん)が『お金2.0』をわかりやすく図解で解説。後半は登壇者と参加者が一体となり、お金や経済の未来について徹底討論していきます。

Bookedとは

Bookedとは、本を読まずに参加できる『知的エンターテイメント型』読書会です。毎回ピックアップした本の内容に基づき、参加者どうしの対話を通じてさまざまなトピックについて理解を深めていきます。Gaiaxが主催となり、毎月開催しています。

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『お金2.0』から紐解く、経済の未来

まずは、きょんさんこと沖山 誠さんが『お金2.0』をわかりやすく図解化したスライドを用い、本の内容について解説していきます。

もちろん、事前に本を読まなくても大丈夫! 参加者のみなさんに聞いてみると、約半数は未読の状態で参加していました。難しい内容でも、すっと頭に入ってくるのが図解のありがたいところ。発表内容の一部を抜粋し図解化解説の模様をお伝えしていきます。

沖山 誠
沖山 誠さん(きょんさん)
沖山 誠

沖山 誠

1995年生まれ。大学を卒業後、経営コンサルタントとして新卒で勤務。その後、「ビジネス×図解」をコンセプトとしたビジネス図解研究所というコミュニティに参加。その活動内容と理念に共感し、2018年7月に会社を退社してコミュニティの活動に注力する。その活動の傍ら、個人で本の図解に取り組み、第一作目として「サピエンス全史図解」を公開してTwitterでトップトレンドに入るなど、話題となる。Bookedではこれまで『サピエンス全史』『ホモデウス』に登壇。

『お金2.0』の著者が本著を上梓した目的は、より多くの人がお金や経済について理解し、お金に悩まずに済むようになること。お金に囚われず、健康や人間関係といった人生の本質的なテーマに向き合ってもらいたいという思いから書かれたそうです。

お金はあくまで生きるためのツールであり、経済システムは社会的な背景や人間の欲望によって変動するものである。

この前提を踏まえて、お金や経済システムの未来を覗いていきます。

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テクノロジーがもたらすお金と経済の未来

私たちが向き合う現実は「お金」「感情」「テクノロジー」3つのベクトルにより規定されており、これまではお金が最優先とされている構造にありました。その結果、お金を稼ぐこと自体が目的になっていたのです。しかし今は感情、テクノロジーに大きな変化が起きており、未来の方向性が変わってきているといいます。

「感情」の側面では、一般消費者にとって関係のないところでお金が増えるようになり、現在の資本主義のあり方に疑問を抱くようになりました。また資本家も投資先が見つからず不満が溜まっている状態にあり、双方ともに資本主義に対しマイナスの感情を抱いていると言えます。

とりわけ大きな変容が起きているのが「テクノロジー」です。ブロックチェーンによる分散化、人工知能による自動化が進んでおり、金融世界は今変革が起きている真っ只中。経済システムが中央集権型だった時代から、自分たちで経済を作っていく時代へと変わることによって、わたしたちは多様な経済から自分が生きやすい経済圏を選べるようになります。

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「価値主義」への移行と、私たちが大切にすべきこと

資本主義に対する不信感によりお金の価値が下がり、テクノロジーの発展により経済が民主化されていくにつれ、今後はお金に変換される前の「価値」が重要視されるようになると指摘されています。

そこで著者が提唱する新しい経済の仕組みが「価値主義」です。価値主義ではこれまで資本にならないと思われていた共感・信用・愛情などの観念的なものが、価値へ変換できるとしています。この流れはすでに始まっています。SNSのフォロワー数も信用の価値として変換される一例です。

そのため価値主義を生き抜くためには、自分の情熱や興味を向き合い、自分の価値を育てていく必要があるのです。

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パネルディスカッション:第3の選択肢「感謝経済」

イベント中盤はパネルディスカッションへ移行。お金に縛られずに生きるために、どのような仕組みや考え方が有用か、講義をおこなったきょんさんを含めて4名の登壇者が熱い議論を繰り広げました。

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(左)千葉恵介さん (右)浦野 真理さん
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高村和志さん
千葉 恵介

千葉 恵介

1996年岐阜県生まれ。22歳。思想家。
感謝経済という見返りを求めない贈与の循環を滑らかにする潤滑油として「ありがとう」を用いた経済を提唱し、共感する人たちと共に醸している。また、感謝で繋がる恩贈りSNSであるMusubiを開発し、貨幣に頼らない経済を模索中。
【ファンクラブ】一緒に「ありがとう」で成り立つ経済を創りませんか?
https://camp-fire.jp/projects/view/55604

浦野 真理

浦野 真理

1978年生まれ。AIベンチャー企業にて研究職に従事。製造業を中心にAIの応用技術研究を行っている。2016年より「Universal Research Laboratory」を主宰。これまでに、人工知能と人間社会、ベーシックインカム、仮想通貨、サーキュラーエコノミー、北欧社会など、「未来志向」の勉強会やワークショップを開催している。

高村 和志

高村 和志

1970年生まれ、大学非常勤講師・フリープログラマー。2008年より通貨の概念をデザインするHappy Project発足、現在の通貨や経済の在り方を問い、通貨の概念自体をアップデートするシステムを自ら製作、公開中。現在はコミュニティ活性化支援アプリケーションを制作しスタートアップを目指している。

「数値化しない」経済は成り立つのか?

登壇者の一人、千葉恵介さんは新たな経済の形として「感謝経済」を提唱しています。既存の資本主義をアップデートするのではなく、原点回帰を目指す「資本主義0.0」を掲げる千葉さんの感謝経済は、既存の資本主義や価値主義とは「価値を定量化しない」点で一線を画しているといいます。

議論は「価値を数値化しない経済は成り立つのか」に焦点が当たっていきます。

千葉恵介
高村和志

千葉さん:今の資本主義はお金とモノを交換することによって成り立っていますが、感謝経済はモノやスキルを循環させて恩送りしていくことで成り立つ仕組みです。

マズローの欲求5段階説には、実は6段階目があると言われいます。それは、自己超越欲求です。他者への貢献に対して喜びを感じたいという欲求ですね。この自己超越欲求を満たしていく仕組みとして、感謝経済を広めています。

資本主義における市場経済の役割はとても重要なので、それを完全に否定しているわけではありません。ただ、市場経済に寄り過ぎるととお金が目的化してしまうし、逆に反対に振り切り過ぎるとヒッピーになってしまう。バランスよく保っていくための中庸として、感謝経済があると考えています。

浦野さん:『お金2.0』にも、感謝、熱狂、好意といった言葉がキーワードとして出ているのだけど、感謝経済との大きな違いはどこになるのかな?

千葉さん:数値化しないことですね。感謝や共感は主観なので、定量化できないと考えています。客観的な数値に落とし込んでしまうと、本来の感謝の気持ちではなくなってしまいますよね。

たとえば、Bookedコインを使って感謝の気持ちを贈り合うとするじゃないですか。「Aさんは100コイン、Bさんは1000コインの価値を自分につけてくれた」という定量的な事実があると、そこに利害関係が発生してしまうんです。「Aさんからはあまりポイントをもらえなかったから、浅い付き合いでいいか」といった具合に。

でももしかしたら、Aさんは手元に100コインしかなくてそのすべてを贈ってくれたのかもしれない。裏側の文脈を読み取らず、表向きの数字だけで判断してしまっている可能性だってあるんです。これは結局お金と同じことをやってしまっているんです。

高村さん:現在でも、お金が発生しない世界はあります。たとえば、家族。家族の間ではお小遣いを除きお金のやりとりが発生することはほぼないですよね。理想を言えば、世界全体が家族化するといいなと思っています。

千葉さん:他人を自分の一部として受け入れられるか、つまり自分ごと化がキーワードですね。隣に座っている人が自分の体の一部くらい大事に思える状態になればいい。こう聞くとユートピア思想と言われるけど、まずは小さい組織で広めていけばいいと思うんです。その手段として感謝経済がうまく働けばいいなと思っています。

グループディスカッション:新しい経済を迎え入れるために

イベント終盤は、会場の参加者を巻き込んだグループディスカッションをおこないました。『お金2.0』の要約で理解したポイントや、パネルディスカッションで得た新たな気づきをグループごとにシェア。約20分間のあいだ、どのグループも会話が途切れることなく盛り上がっている様子でした。

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各グループ間での共有を終えたあと、全体でグループごとのトピックを発表していきます。価値経済や感謝経済から話は広がり、トピックの色合いはさまざま。全体として共有のキーワードと問いが生まれていきました。参加者から発生した問いと、それに対する登壇者のひとつの解。テンポよく進むラリーをお楽しみください。

みんなが「好きなこと」に熱狂する時代は、カオスか?

━━ 価値主義を迎えるにあたって、自分の情熱や興味を大事にして自分の価値にしていく…理解はできたのですが、全員が「好きなこと」をしてしまったらカオスになるのではと思いました。

高村さん:みんなが「好きなこと」をしていい時代……それはある意味しんどいですよね。自分が何に情熱を持っているのか、何をしたらいいのかが分からない人は大変な時代になると思います。

これからは自分が参加したいコミュニティを自由に切り替えできるのではないかと考えています。のんびりでもいいんですよ。長い人生の中で、ゆっくり自分の軸をみつけて、属したいコミュニティを見つけていく。そこで誰かの役に立つ活動ができればいいと思うんです。

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世代間の分断をどう乗り越える?

━━ 価値主義や感謝経済など、新しい価値観にふれ刺激的でした! ただ、この新しい価値観を浸透させるのは正直大変そうだなと……。地域間や世代間にうまれるであろう価値観の分断はどう乗り越えるのがいいと思いますか?

きょんさん:前提として、社会が向かう方向や目的を定めることが大切だと思います。実現したい社会の全体像は人類全員で考えつつ、実現の方法は地域や世代の差があってもいいと思います。

高村さん:僕は方向性自体も複数あっていいと思います。多くの選択肢があって、あらゆるものを許容する社会をつくりたいですね。

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価値主義や感謝経済のように、資本主義以外に私たち自身が生きる経済圏を”選べる”時代がやってくる。私たちは価値観をアップデートしていくとともに、多様な価値観を認め合うことが一層求められるのでしょう。

これからの時代は、自分の情熱に向き合いながらも、隣人を愛していく。自分と他人との境界線が徐々に薄まっていく、そんな予感がしたイベントでした。

次回のBookedでは、現在話題沸騰中の『FACTFULLNESS(ファクトフルネス)』をピックアップします。本好きから議論好きまで、大歓迎! 知的好奇心旺盛な仲間たちと、ともに自分や世の中をアップデートしていきましょう。


花田 奈々

フリーランスライター。Gaiax主催のイベントレポートや社員インタビューを中心に、ブランドづくりに携わる。その他複数社のスタートアップでオウンドメディアの編集ライティング、イベント企画、コミュニティー運営を担当している。