近年、地方創生において、観光客でも定住者でもない形で地域と関わる「関係人口」という概念が大きな注目を集めています。人口減少に直面する地方にとって、地域外からの多様な人材は地域づくりの新たな担い手として期待されています。
そんな中、香川県三豊(みとよ)市の仁尾町で、非常に先進的な取り組みがスタートしています。それが、日本初となる「身の丈商店街DAO」です。今回は、政府の最新動向や有識者の声を交えながら、フジテレビ『Live News α』(2026年3月4日放送)やBSよしもと『小倉淳の47フォーカス』(2026年4月17日放送)でのメディア報道、そしてプロジェクト発起人の生の声から、このプロジェクトが示す「新しい関係人口の形」を紐解いていきます。
2027年本格運用へ向け動き出す「ふるさと住民登録制度」
現在、政府は「地方創生2.0」の柱として、居住地以外の地域と継続的に関わる人を登録する「ふるさと住民登録制度」の構築を進めています。2026年度にモデル事業を開始し、2027年3月中の本格運用を想定してアプリなどの開発が進められています。
特に注目されている「プレミアム登録」では、マイナンバーカードによる本人確認を必須とした上で、年3回以上の現地活動が条件。インセンティブとして移動費や宿泊費の助成、地元住民と同様のサービスやクーポンの配布などが検討されています。これまで関係人口拡大の大きなネックとなっていた交通費・宿泊費の負担が軽減されることで、大都市圏の人々が地方に足を運ぶハードルは大きく下がると期待されています。
有識者が語る、関係人口を「お客様」で終わらせないための視点
制度面での後押しが進む一方で、「地域と人がどのように関わるべきか」という本質的な部分について、有識者たちからは重要な提言がなされています。
地域に関わりたい都市部の人は、おもてなしをされる「お客さん」になりたいのではなく、「一緒に汗を流し、価値を創造する『仲間』になりたい」という思いを強く持っています。地域側はお客さん扱いするのではなく、一緒に活動を頑張る枠組みや出番を用意することが重要だと指摘されています。
また、関係人口という言葉の曖昧さに甘えず、「手段を目的化してはならない」という厳しい意見もあります。都市部の専門スキルを持つ人材が地域の事業課題を解決したり、実質的な投資(資金・時間・スキル)を行う「事業を通じた実効性のある関わり」が必要不可欠であると説かれています。
つまり、これからの地方に必要なのは、単なる支援者や交流人口を増やすことではなく、地域事業の「当事者」として自ら汗をかき、共にリスクとリターンを分かち合う強固な関係性の構築だと言えます。
有識者の提言を体現する「身の丈商店街DAO」の全貌

出典:フジテレビ Live News α(2026年3月4日放送
こうした有識者たちの提言を、まさにリアルな仕組みとして体現しているのが、香川県三豊市の「身の丈商店街DAO」です。一人一人ができることを行う分散型の自立組織を活用して、商店街の再生を進めていると紹介されました。。
取り組みが行われているのは香川県三豊市。父母ヶ浜は、潮が引く干潮に夕暮れが重なると水面が鏡に変わる大自然の不思議が訪れます。人口およそ5,000人の小さな港町に年間50万人の観光客が訪れる人気を、地域の活性化につなげる取り組みが進んでいます。仁尾地区には、かつて製塩業で栄えた昔をしのばせる建物がいくつも点在しており、こうした建物をそのまま活用し、町おこしの起爆剤にする「身の丈商店街」という試みが進められています。

出典:フジテレビ Live News α(2026年3月4日放送
(身の丈商店街DAO発起人・代表 今川 宗一郎さん) 元々商店があったエリアなんですよ。そこをみんなで一個ずつ直していく感じですね。
これまで古い長屋を飲食店によみがえらせたり、クラウドファンディングで元銀行を子どもたちが自由に絵を描けるスペースにしたり、週末限定のバーの出資を募ったりしてきました。住民たちが歩いて行ける範囲に欲しいお店が少しずつ増え始め、週末の夜にはにぎわいの明かりがともるようになりました。

出典:フジテレビ Live News α(2026年3月4日放送
DAOプロジェクトの始動 ──「かっちゃんの家」のリノベーション
さらなる活性化と関係人口の創出のため始まったのが「身の丈商店街DAOプロジェクト」です。DAOとは、所有者や管理者が存在せず参加者が投票で意思決定を行う組織のこと。住民から親しまれたおじいさん、通称「かっちゃんの家」が、レストランや物販ブースを備えた施設として生まれ変わる予定です。

出典:フジテレビ Live News α(2026年3月4日放送
DAOに参加するのは出資者で、その6割ほどは県外在住者。宿泊できるスペースも設けられ、出資一口当たり年に5回泊まれる権利を与えられます。今後は、米問屋の跡地に焼き肉店を作る計画も。出資者が解体に参加するなど、自らが労働力となるのもDAOの仕組みならではです。
(ガイアックスDAO事業部 廣渡 裕介) DAOに入ると、地域のメンバーが空港に迎えに来てくれて、三豊まで届けに来てくれる。投資して終わりではなく、そういった『貢献経済圏』というDAOの中でのポイントのやり取りを深めることによって、実需、自分たちが使ったり受け取ったりする活発性を持たせていけるので、その辺はこれまでのボランティアとか短期的なクラウドファンディングとは違う面白みがあるのかなと思います。

出典:フジテレビ Live News α(2026年3月4日放送
出資10万円で「10年間の第二の故郷」── クラファンとの決定的な違い
BSよしもと『小倉淳の47フォーカス』では、クラウドファンディングとDAOの違いについても掘り下げられました。今川さんは、クラウドファンディングでは「物を買って応援」という短い時間軸になりがちで、従来の出資では人数が限られると説明した上で、DAOの優位性を語りました。
(今川 宗一郎さん) 今回出資一口10万円で宿泊場所に年間5泊ついてるんですけども、それが10年分ついてます。つまりその10万を出すことによって、僕らの地域に10年間来続けられるようになるんですよね。だから別荘とか第二の拠点とかっていうより、このDAOに出した方が割と新しい田舎を作るみたいな仕組みにはなりやすいなと。
宿泊の運営も「お客様扱い」ではありません。今川さんによれば、「みんな勝手にGoogleカレンダーで埋めていって、シーツとかタオルとか自分らで使ったら干してやってる」とのこと。小倉さんが「お客さんじゃないんだ」と驚くと、今川さんは一言、「そう、お客さんではないんで」と返しました。
150人超の出資者、2,000万円超の資金 ── 地方発DAOの実績
出資者の年齢層について廣渡さんは「実は40歳以上の方が多い。逆に20代は1割も満たない」と回答。今川さんは「若い人にも来てほしいが、いかに長い時間関わってもらえる人が増えるかの方が大事」と、長期的コミットメントの重要性を強調しました。
廣渡さんは出資者の集め方について「一番はDAOの初期メンバーの方々が個々でお声がけくださって、どんどん2人目、3人目と広がっていった」と語っています。
「地元だけでは限界がある」── 今川さんの覚悟とDAOの補完関係
今川さんは、地元でスーパー、コーヒーショップ、寿司屋、焼き鳥屋など複数の事業を手掛けていることを明かしました。しかし、「物件の周辺で毎回イニシャルコストをかけてやると、借り入れも限界が来る」という現実も率直に語りました。
(今川 宗一郎さん) 地元だけでっていうのは僕結構限界あると思ってて。今回みたいに廣渡さんみたいな方と一緒にすることによって、自分らでできない領域をやっぱり一緒に作っていくっていうのは、すごく今後地域にとっては大事なことだと思います。
「自分たちの欲しい日常は自分たちで作る」

出典:フジテレビ Live News α(2026年3月4日放送
(今川宗一郎さん) 楽しいところにしか人は集まらないので、いかに自分たちの毎日が楽しくなるかが一番のポイントなんですよね。なので、やっぱり自分たちが使いたいお店をつくっていく。それがこの街で暮らす豊かさの本質ではないかなと思っています。
(地元出身・仙台在住のDAOメンバー) 都会っぽく華やかになるのは違う。仁尾はそうじゃないなと思って。仁尾は仁尾なりに盛り上がってくれればいいなと。
日本経済新聞社客員編集員の鈴木亮さんは「シャッター街の復活とか空き家問題の具体的な解決方法がなかなかない中で、これはモデルケースになるかもしれない」とコメント。小倉淳さんも「おじさんたちが組織作って何とかしましたっていうんじゃなくて、みんなでやってみるっていう柔軟さがいい」と評価しました。
(日本経済新聞社客員編集委員 鈴木亮さん)
暗号資産だけじゃなくて、こういう社会活動みたいなものにもブロックチェーンの知見というのは使えるんだなというのはすごい新鮮で面白かったです。
ふるさと住民視点での考察:「お客様」を作らない仕組み
政府が推進する「ふるさと住民登録制度」は、都市部の人が地方に継続的に関わるきっかけを作るためのものです。しかし、単に制度を作って特典を配るだけでは、関係人口は「お客様」の域を出ません。三豊の身の丈商店街DAOが優れているのは、以下の3点で「プレミアムなふるさと住民(=当事者)」を必然的に生み出す設計になっている点です。
意思決定権の付与(投票)出資者は、どんなテナントを入れるか、収益をどう再投資するかを投票で決めます。商店街の未来が「自分ごと」になります。
労働やスキルの提供(貢献)解体作業のDIYに参加したり、得意なスキルを提供したりすることで、地域に直接的な価値をもたらします。
居場所の確保(宿泊権)出資のリターンとして年間5泊分の宿泊権が付与されます。「泊まる場所がない」「行く理由がない」という関係人口の最大の壁をクリアしています。
おわりに
身の丈商店街DAO説明会の最後で、古田氏は地域との関係性を「未来軸と過去軸、安心と挑戦の軸」と表現していました。お盆の帰省や同窓会といった「過去の安心」だけでなく、一緒に事業を作り上げる「未来への挑戦」を共有できる場所。それこそが、これからの地方が求める最強の関係人口コミュニティなのかもしれません。
デジタル上の「DAO」という仕組みと、三豊という土地に根付く「近助」の精神。この2つが融合した「身の丈商店街DAO」は、これからの「ふるさと住民」の在り方を示す、最高のロールモデルと言えるでしょう。









