メンバー同士がフラットな関係で、参加も自由にできる次世代の組織として注目を集めているのがDAOです。
しかし、DAOで仕事をしたり、プロジェクトに貢献したりしたときの報酬がどのようなものかイメージしづらいかもしれません。DAOにおいては、プロジェクトに貢献した見返りとしてトークンという形で報酬を得られ、その種類によっては多様な使い道があります。
本記事では、DAOの報酬であるトークンの特徴や価値に触れつつ、事例を交えて解説します。これからDAO組成をする上で、報酬形態をどうするべきかお悩みの方はぜひ当記事を参考にしてみてください。
なお、ガイアックスではDAOの構想策定から法人設立、資金調達、コミュニティ運営までを一気通貫で支援するサービス、DAOX(ダオエックス)を提供しています。DAOの報酬設計やインセンティブ設計についてもお気軽にご相談ください。
DAOにおける報酬とは
DAOにおける報酬とは、一般的にトークンの形で支払われます。報酬になるトークンは、ガバナンストークンやユーティリティトークンが代表的です。
ガバナンストークンはDAOの意思決定において投票権になるトークンのことで、ユーティリティトークンはコミュニティ内の特定のサービスの利用券になるトークンです。
また、社内DAOであれば独自にトークンを発行し、メンバーが合意の上で独自の価値を持つものを作ることもできます。
トークンにおける詳細な説明は、「DAOのトークンとはどのようなものか?」をご覧ください。
さらに、DAOによっては報酬はトークンだけにとどまりません。金銭的なリターンだけでなく、プロジェクトが生み出す価値(モノや体験)の享受や、運営への参加権そのものが報酬になってくる場合もあります。
具体的には、以下のようなものが報酬に含まれます。
- ガバナンストークン:DAOの意思決定における投票権となるトークン
- ユーティリティトークン:コミュニティ内の特定のサービス(宿泊、商品購入など)の利用券となるトークン
- 金銭的分配:事業から得られた利益の分配(配当)
- 現物・体験:生産された商品(ワイン、米など)や、特別なイベントへの参加権
DAOにおける報酬の特徴
DAOの報酬体系の特徴は、DAOの運営やプロジェクトにかかわる参加者をはじめとした、関係者全員が対価として報酬を受け取れる点です。
これまでの中央集権的なプラットフォームの場合、報酬を受け取れるのが一部の投資家や社員のみであり、エンドユーザーやサービスの拡散に協力した人たちは報酬を受け取れませんでした。
しかし、DAOではプロジェクトに貢献するメンバーには報酬としてトークンを付与でき、分配方法や割合などもDAOの運営者たちによって決められます。
具体的には、下記のようなイメージです。
- オーナーとして:出資者(共同オーナー)は、事業利益が出た際の金銭的な分配を受け取る権利を持ちます
- ユーザーとして:プロジェクトが生み出す商品やサービスを優先的に利用したり、割引を受けたりできます
- ワーカーとして:DAO内のタスク(清掃、広報、イベント企画など)をこなすことで、リワードポイントやトークンといった報酬を得られます
DAOにおける報酬の仕組み
DAOの報酬であるトークンの価値はどのように測ることができるでしょうか。トークンの中でも、価値が固定されているものとそうではないものに分かれます。
はじめに、流動性を持つトークンの場合から解説します。
価格が変動するトークン
DAOの報酬は、特定のサービスを利用するためのユーティリティトークンをはじめとして、換金不可能なものになることがあります。
これに対して、価格との連動性が高いステーブルコインやDAO運営のための投票権であるガバナンストークンは、取引所に上場していれば、売ることでお金を得られるケースもあります。
価格が一定に設定されたトークン
DAOの報酬の中でも、社内DAOの報酬であるトークンなどでは、管理上の都合で一定の交換価値で設定していることもあります。
このようなケースにおいては、トークンを何に交換できるのかあらかじめ設定し、特定のサービス利用券と交換ができるようにしたりしているため、価格は一定といえます。
DAOの報酬の受け取り方
DAOの報酬であるトークンを受け取るためには、ウォレットを作る必要があります。
ウォレットとは、暗号資産やNFT、その他のデジタル資産を保管する機能を備えたブラウザやアプリ上に存在するトークンを保管できる場所のことです。お金を保管したり、預けたりする財布や銀行口座をイメージするとわかりやすいかもしれません。
ウォレットで有名なのはMetaMaskです。Metamask以外にもウォレットはたくさんあるので、いずれかのウォレットを作り、報酬であるトークンを受け取れるようにすることが必要です。
社内DAOの報酬の事例
社内DAOの報酬の事例として、ガイアックスでは社内DAO型の運営のためにGR(ガイアックスリワード)を導入しています。
ガイアックスでは2023年に国内初となるDAOを取り入れた入社式(DAO型入社式)を行いました。
こちらではプロジェクトに貢献した報酬として、作業時間の15分あたりを1GRとして設定しています。1GRの価値は300円であり、社内の給与とは別に付与しました。
GRは投票権としての使用やサービス利用券として商品との交換に利用されることで、DAOへの貢献度を上げる役割を担っています。
ぐんま山育DAOの事例
群馬県の自然派ワインづくりプロジェクト「ぐんま山育DAO」では、多層的な報酬が設計されています。
参考までに設計を紹介すると、下記のようになります。
- 利益の分配:事業が黒字化した場合、利益剰余金が出資者に分配されます
- 現物・優先購入権:醸造されたワインを優先的に原価で購入できる権利や、出資口数に応じてワインがプレゼントされます
- 体験価値:プロの醸造家による勉強会や、収穫祭への優先招待といった特別な体験が提供されます
身の丈商店街DAOの事例
香川県三豊市の商店街再開発プロジェクト「身の丈商店街DAO」では、地域に深く関わるためのユニークな報酬が設定されています。
- 宿泊権:DAOメンバー専用の宿泊施設「身の丈ハウス」に、年間5泊分(10年間)無料で宿泊できる権利が付与されます(1口あたり)
- 地域での優待:提携するスナックで、ハイボールが毎回1杯無料になります
- 利益の分配:プロジェクトから生まれた収益は、DAOメンバー間のルールに基づき配当として還元されます
DAO運営における報酬形態についてでした
DAOでの報酬は単なる金銭ではなく、プロジェクトの貢献度合いによって付与されるトークンになります。
今後DAOが一般的になるにつれ、その報酬形態はますますバラエティーに富んでいくことでしょう。DAOを組成する上では、金銭面に限らず、参加者にとってより参加意義を感じる魅力的な報酬形態にすることが必要不可欠です。
ガイアックスでは、「ぐんま山育DAO」や「身の丈商店街DAO」など、数多くのDAO立ち上げを支援し、持続可能なインセンティブ設計のノウハウを蓄積してきました。DAOの報酬設計にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
また、DAOの成功は初期の構想設計と、参加者が活動しやすい仕組みづくりにかかっています。ガイアックスでは、豊富な支援実績をもとに、DAOファンディング事業、DAOコミュニティ運営事業を軸にスムーズなDAO構築をサポートいたします。