DAOは特定の管理者が存在しない、非中央集権的な組織です。従来の中央集権型の組織と違い、透明性や参加者の自律性・内側に持つポテンシャルを最大限に引き出せる組織形態の観点から、注目が高まってきています。
DAOにより、プロジェクトの進め方、参加者の働き方がどのように変わるのかが具体的にイメージしづらいかもしれません。そこで当記事では、実際に社内でDAOを取り入れた事例をもとにDAOによる働き方の特徴やメリット、デメリットを解説します。
DAOが普及すれば、参加者たちがゴールに向かって自律的に動くことでより高いポテンシャルを引き出し、より良い商品やサービスを作れる可能性が高まるでしょう。
なお、この記事を書いているガイアックスは、これからDAOを立ち上げたいと考える組織運営者向けに、構想策定から法人設立、資金調達、コミュニティ運営までを一気通貫で支援するサービスを提供しています。DAOを活用した地方創生や事業創出にご興味のあるご担当者様は、ぜひ一度DAOコンサルからご相談ください。

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DAOにより働き方はどのように変わるか
DAOで働くということは、プロジェクトの意思決定プロセスが民主化された環境に入り、自らの行動を自分で意思決定しながら活動に関わるということです。
そこでは、参加者は単なる従業員ではなく、「ユーザー(利用者)・オーナー(所有者)・ワーカー(労働者)」という三位一体の役割を担います。
そんなDAOによる働き方の特徴を見ていきましょう。
コミュニティへの出入りのハードルが低い
DAOへの参加には、試験や面接などのプロセスがなく、興味のあるプロジェクトがあれば、誰でも気軽に参加できるものも多くあります。参加するDAOの数も個人の自由であり、同時に複数のDAOへの参加も可能であり、通常の会社への入社と比べると出入りの敷居が低いです。
多くの場合、プロジェクトの株式や社員権に相当するNFTを購入することで、誰でも共同オーナーとして参加できます。
働き方・働く期間は自分で決める
どのプロジェクトに参加し、どれくらい期間を働くか、すべて自分で決めることができます。
とはいえ、参加しているDAOが単一のプロジェクトで動いている場合は、そのプロジェクトが終了すれば、DAO自体が終わります。一方で、DAO内に複数のプロジェクトを抱えている場合は、様々なプロジェクトに携わることができます。
フルコミットするメンバーもいれば、週末だけイベントに参加したり、オンラインでの議論に参加したりと、関与の度合いは個人の自由です。
メンバー間の立場が平等
DAOには、上司や部下という概念がありません。従来の中央集権的な組織では、管理者となる課長やプロジェクトリーダーがいましたが、DAOには中央管理者がいません。
参加者は、全員が「共同オーナー」という公平な立場でプロジェクトに関われます。
もちろん、プロジェクトを推進するために必要な役割は存在しますが、それはメンバーからの投票によって選ばれることが多く、固定的な役職ではありません。
業務内容、およびそのコミット量によって報酬が異なる
DAOでは担当する業務内容やコミット量により、あらかじめ決められた報酬が与えられます。DAOにおける報酬はトークンで支払われ、どのくらいの価値のものをどのような形で分配するかなどはすべてメンバーの意思によって支持されます。
なお、トークンという概念について詳しくは、「DAOのトークンとはどのようなものか?」をご覧ください。
当然コミット量が少なければ、もらえるトークンも少なくなります。また、参加するDAOによって報酬の条件は異なるため、トークン自体がどのような交換価値をもつかによって、プロジェクトに対する貢献度も変わってくるといえるでしょう。
例えば、「ぐんま山育DAO」では、事業利益の分配という金銭的報酬に加え、収穫したワインの優先購入権といった現物報酬、醸造家による勉強会への参加といった体験報酬があります。「身の丈商店街DAO」では、施設の宿泊権や提携スナックでの優待といったユニークな報酬が設定されています。
DAO型組織で働くことのメリット
DAOによりプロジェクトを進めることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。実際に社内でDAOを取り入れたガイアックスの知見をもとに解説します。
多様なアイデアが生まれる
DAOではトップダウン的に物事が決まりません。運営方針はすべてガバナンストークンを持つメンバーが議論に参加し、投票することによって意志決定がされるためです。
参加者全員がオーナーであるため、当事者意識が高く、それぞれの専門性や視点から多様なアイデアが生まれやすい環境です。
透明性が高く、自律的に企画・運営に参加可能
DAOでの契約や取引はスマートコントラクトによって自動化されており、業務の官僚が認められると共に、あらかじめ決められた報酬が獲得できます。後からひっくり返されることはありません。また、情報はブロックチェーン上に記録されるため、誰でも自由に確認可能で、透明性が高いといえます。
さらに、中央管理者がいないことから、特定の個人に情報が偏ることもありません。誰でも同じ情報を閲覧できるため、メンバー全員の自主的な行動を促せるという点もメリットとして挙げられます。
なお、DAO運営ツール「DAOX(ダオエックス)」のようなプラットフォームを使うと、議論の経緯や投票結果、予算の執行状況が全メンバーに可視化されるため、誰もが安心して自律的に活動に参加できます。
DAO型組織で働くことで生じるデメリット
DAOを導入した働き方において、どのようなデメリットが生じるでしょうか。こちらも社内DAOを取り入れた事例をもとに解説していきます。
事業の立ち上げ初期が大変
DAOには中央管理者がいないとはいえ、始めは旗振り役や企画の種を出す人が必ず必要です。特に、事業の立ち上げ初期では、DAOを立ち上げた企画メンバーしか発言しない可能性があります。
そのため、立ち上げ初期のフェーズでは、メンバー全員がいかに同じ思想を共有できるかが重要です。思想共有ののちに、少しずつ権限移譲が進み、ボトムアップな形態が出来上がっていきます。
この課題に対し、ガイアックスでは共同創業者としてプロジェクトに伴走する「ジョイント・ベンチャー」サービスを提供しており、立ち上げ期の負担を軽減しています。特に自治体に対してweb3を活用した地方創生プロジェクトを提案しようと考えている企業におすすめです。
意思決定に時間がかかる
従来組織と違い、DAOでは意思決定に時間がかかることもデメリットといえるでしょう。DAOは企画・投票による意思決定のプロセスをたどるためです。
ガバナンストークンのホルダーであれば、誰でも意思決定に関われることはメリットですが、結論を出すまでには時間がかかることはデメリットとなってきます。特にステークホルダーが多い場合、合意形成に時間がかかることがあるので、専門的な知見を持つファシリテーターの存在が重要になります。
DAOの概念が浸透していない
DAOの概念はいまだ発展途上であり、まだ世間一般での認知度が低いこともデメリットです。いざDAOで働くといっても、具体的にどのようなことからすれば良いのかがわからない会社も多いでしょう。
今後ますます国内でのDAOの成功事例がシェアされていくことで、解決することが期待されます。また、国内におけるDAO導入を促進するために、ガイアックスではDAOコンサルをご提供しています。

DAOで働く事例
新規事業の中でDAOを取り入れたプロジェクトの事例を2つ紹介します。
ぐんま山育DAOでの働き方
群馬県の自然派ワインづくりプロジェクト「ぐんま山育DAO」では、参加者は多様な形で働くことができています。
- オーナーとしての働き方:DAOのメンバーとして、ブドウの栽培方法やワインの醸造方針、販売戦略といった事業の根幹に関わる意思決定に投票で参加します
- ワーカーとしての働き方:現地での苗植えや収穫祭といったイベントにボランティアとして参加し、プロジェクトを物理的に手伝います。また、SNSでの広報活動なども重要な「仕事」です
- ユーザーとしての働き方:完成したワインを楽しみ、その魅力を語ることが、次のファンを育てる広報活動につながります
身の丈商店街DAOでの働き方
香川県三豊市の商店街再開発プロジェクト「身の丈商店街DAO」では、まちづくりそのものが仕事になります。
- オーナーとしての働き方:リノベーションする空き家の用途や、商店街に誘致するテナントをオーディション形式で選定するなど、まちの未来を直接決める投票に参加します
- ワーカーとしての働き方:DAOメンバー専用の宿泊施設「身の丈ハウス」の清掃や管理を手伝うことで、ポイントを獲得できます。また、イベントの企画・運営もメンバー主体で行います
- ユーザーとしての働き方:自身が運営に関わったお店や施設を利用し、地域に賑わいを生み出すことが、プロジェクトへの貢献となります
DAOにより多様化する働き方
今回紹介した事例のように、DAOを導入することにより、働き方は「雇用」という形に縛られず、より多様で柔軟なものへと変化していきます。
DAOでは従来の中央集権的な組織よりもフラットに意見を出せることで、多様なアイデアが生まれるでしょう。そして、参加者一人ひとりが「オーナー」としての当事者意識を持つことで、プロジェクトは力強く推進されます。
ガイアックスでは、DAOを通じて「資金と労働力が、意義あるものへ集まる社会」の実現を目指しています。DAO組成を検討しているご担当者は、ぜひ一度ガイアックスのDAOコンサルにご相談ください。




