Kanako Yamazaki

山崎嘉那子

ガイアックス19卒新卒入社。ストレングスファインダーでは、学習欲が第一位で、休みの日は読書か映画か美術館巡りをするtheインドア女子。演劇に興味があり演劇から他者との向き合い方について考えたい人。Gaiaxのイベントや価値観が好きなのに、自分の周りの学生や若い社会人の中ではあまり認知がないことが残念で、、ブログ始めました!

「最も大切にしなければならないのは、ただ生きることではなくて、善く生きることである」

この言葉はソクラテスが残した言葉です。

毎日コンビニで山のように捨てられる食品や、私たちの消費意識を喚起させるため町中に溢れる広告。資本主義が進み、ものが過剰なほどに溢れる現代、私たちは物質的な豊かさが自分たちの幸せ、すなわち、より善い生につながるわけではないことを自覚し始めています。

変化が激しく、多様な人やものが交わるこれからの時代、私たちは自分にとっての善い生き方というものはどのようなものかということを、再び考え直さなくてはいけないのではないでしょうか。

そんな中近年注目を浴びているのが、ポジティブ心理学です。今回は、ポジティブ心理学についての基本的な知識を学習し、それがどのように社会で効果をもたらしているのか見て見ましょう。

ポジティブ心理学とは?

「善い生き方とはなにか?」

この問いを、心理学の側面から研究しているのが、ポジティブ心理学です。最近ではポジティブ心理学に関する本が多く出版されているので知っている方も多いのではないでしょうか。

 ポジティブ心理学は、1998年に、当時米国心理学の会会長だったペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士によって発議、創設されました。その後はセリグマン博士と共に米国を中心とする第一線の心理学者たちによって研究が進められています。

ポジティブ心理学とは、

私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい方向に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域である

と定義されます。

本来心理学は、臨床心理学や社会心理学による研究が主流ですが、道徳心理学の考察方法が根底にあることもポジティブ心理学について議論する上では重要な要素の一つとなっています。以前まで精神疾患の症状から考えられてきた心理学ではなく、通常の人生をより充実したものにするための研究としてポジティブ心理学は近年注目されています。​

Happinessではなく、Well-Being?

より善い生き方と言っても、あまりピンと来ませんよね。ポジティブ心理学では、より善い生き方をどのように定義しているのでしょうか?幸せを多く感じられる生き方?

ところで、幸せ(happiness)と聞いてみなさんが想像するのはどんなものでしょうか。

真っ青なビーチにハンモック、夜景をバックに食べる絶品のコース料理。

一度は憧れてしまう情景かもしれません。(記事を書きながら、ハワイ行きの飛行機を調べそうになりました。笑)

しかし、ポジティブ心理学の創設者であるペンシルべニア大学のマーティン・セリグマン教授は、著書の中で「『幸せ(Happiness)』という言葉が大嫌いだ」と述べています。

「え、ポジティブ心理学って幸せ(happiness)を目指す学問じゃないの?」

って思いませんでしたか?私は思いました。笑

ポジティブ心理学では、幸せには3つのタイプがあると定義しています。

快楽による幸せ

これは、できる限り多くの快楽とポジティブ感情を獲得することによって感じることのできる幸せです。前述したビーチの風景をマーティンが嫌うのは、この快楽による幸せに基づいているからです。

このタイプの幸せには欠点があります。一つ目は、ポジティブ感情は50パーセントが遺伝性であり、自らの力で変えることが不可能であることです。そして二つ目は、ポジティブ感情には慣れが生じるということです。

夢中になる幸せ

ポジティブ心理学では、人が何かに熱中し時間を忘れるような状態をフロー状態と呼びます。このように何かに熱中できている状態の幸せが二つ目の幸せです。

私は本を読むのが好きなので、本を読んでいるときは時間が一瞬で過ぎてしまいます。寝る前に本を読んでいて気がついたら、空が明るくなっていた、、なんてことも。笑

人生に意味を持つ幸せ

自分より大きな何かに捧げるために自分の最も高い強みを知ること、そしてそれを使うことによって幸せを感じる生き方です。この幸せは3つの幸せの中でもっとも尊敬されるものとして扱われています。

ポジティブ心理学では、この3つの幸せを高めていくことで人が「より善く」生きていくことができると定義しています。

ポジティブ心理学ではこのようなより善い生き方を、単に快楽を求めるhapinessとは区別し、”Well-Being”として定義しています。

実は1946年ニューヨークにおいて定められた世界保健機関(WHO)憲章においても、健康の定義として下記のように”Well-Being”という用語が使われているんです。

「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.」

Well-Beingの五つの要素「PERMA」

ポジティブ心理学では、Well-Being(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること、幸福)を構成する5つの要素を発見し、その頭文字をとり「PERMA」と名付けました。「PERMA」とは以下のようなものです。

Positive attitude

P=Positive Emotion(ポジティブ感情)
喜び・平安・希望・畏怖などの感情を持つ、感じる。
「興味のある」「興奮した」「強気な」「熱狂した」「誇らしい」「機敏な」「やる気がわいた」「決心した」「注意深い」「活気のある」の10項目からなります。

Engagement

E=Engagement(エンゲージメント、またはフロー状態を生み出す活動への従事)
ある活動に対して自ら能動的に関わり、それ自体を楽しみ、没頭することを表します。この「時の経つのも忘れて没頭している状態」を「フロー(Flow)」と呼びます。

Relationship

R=Relationship(関係性)
愛情・サポート・理解のある人間関係の中にいる状態を指します。

Meaning

M=Meaning and Purpose(人生の意味や仕事の意義、及び目的の追求)
ポジティブ心理学では、「意味」が単に自分のためだけではなく、誰かほかの人のため、社会のため、世界のためなど自分よりも大きなものにつながるとき、そこから得られる幸せは最良のものとなる、と言われています。

A=Achievement(何かを成し遂げること。ただし「達成のための達成」をも含むため、必ずしも社会的成功は伴わなくてもよい)
熟練・遂行能力をもっているという感覚を持つこと。これは自己効力感(self-efficacy)とも言われています。

ポジティブ心理学はどのように役立つの?

「日本一オーラのない監督」中竹さんと早稲田ラグビー部の事例

これまではポジティブ心理学の基本的な知識をおさらいしてきました。

ではポジティブ心理学は、実際にどのように社会で効果を上げているのでしょうか?今回は早稲田大学ラグビー部を大学選手権2連覇に導いた「日本一オーラのない監督」中竹竜二さんの事例を見ていきたいと思います!

中竹さんは、ポジティブ心理学のWell-Beingの中でも、特にR=Relationshipの状態を上手く作り上げてチームや選手とパフォーマンスの向上を実現されているんです。

中竹竜二(なかたけ りゅうじ、1973年5月8日  )

早稲田大学人間科学部にて、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、英国に留学。レスタ―大学大学院社会学修士課程修了。三菱総合研究所等を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督を務め、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇など多くの実績を残す。

日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター。企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社TEAMBOX 代表取締役。 ラグビー20歳以下(U20)日本代表元監督。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』( CCCメディアハウス)など多数。

「日本一オーラのない監督」就任

学生時代にはラグビー経験者でしたが、指導者としての経験は全くなかった中竹さん。監督就任初日に選手から「こいつ全然オーラないな」と言われたことをきっかけに、現在では「日本一オーラのない監督」とも言われています。

そんな中竹さんは、一体どのようにしてチームに大学選手権2連覇という結果をもたらしたのでしょうか?

そして中竹さんの選手、チームとの関わり方とポジティブ心理学の関係性とはどのようなものだったのでしょうか?

結果を出せなかった一年目

早稲田大学のラグビー部は、何度も日本一になったことのある強豪チームです。指導経験のない中竹さんは、はじめチームの選手のみならずマスコミなどからも信頼を得ることができませんでした。「こいつが監督になったから弱くなった」「今すぐ辞めろ」と選手からは批判の嵐。初年度は全国学生選手権で決勝まで進むも敗退。今まで勝てていた相手にも負けてしまうなど、なかなか結果を出せずにいました。

中竹さんが早稲田ラグビー部を大学選手権2連覇に導いたpoint

1. スキルより、スタイル

2. リーダーシップではなく、フォロワーシップ

・ 選手を本人よりも信じきる。ーグロース・マインドセットー

・ 声にならない声を聞く。ー傾聴と観察、承認ー

1. スキルより、スタイルー自分の弱さを認め、相手の前にさらけ出すー

そんな中、中竹さんは、選手からの批判や文句を全て受け入れ、ひたすら個人面談をしていました。

個人面談?練習メニューの改善ではなく?!と、ど素人の私からしたら思ってしまいます。

中竹さんはスキル・知識より、スタイル・姿勢を重視してされていたんですね。

そして中竹さんは「今こんなチームの状態なんだけど、お前は何ができるの?」と選手に問い続けました。中竹さんは自分の指導者としてのスキルのなさを隠すでも恥じるでもなく、「いや、まぁ、本当に俺の監督力ってそんなに伸びないと思うから、みんなで頑張らないと」と自分自身をさらけ出し、選手に対して接しました。まずは自分からありのままの自分を相手に示していくことで、信頼関係を作っていたんですね。

2. リーダーシップではなく、フォロワーシップ

「日本一オーラのない監督」という愛称からも分かるように、中竹さんはこれまでの、カリスマ性がありリーダシップの強い監督ではありません。

中竹さんは、リーダーに求められるのは、強いカリスマ性ではなく「フォロワーシップ」であると言います。「フォロワーシップ」とは、組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすることと定義されています。

そして、中竹さんはフォロワーシップを身につけるためには2つのことを意識して行動する必要がある、と述べています。

選手を本人よりも信じきる。ーグロース・マインドセットー

グロース・マインドセットとは、「人は環境やその人の努力によって、絶対に成長できるんだ」という人の成長を信じるマインドセットです。中竹さんは、選手と接する際、時に厳しく選手に迫ることもありました。それは選手の成長を選手自身よりも真剣に考え、その選手のためを思った中竹さんの行動です。成長を信じられると、人は努力をできるようになります。自分の将来の成長を信じているから、無理に背伸びして今の実力を見せつけようということもしなくなります。

声にならない声を聞く。ー傾聴と観察、承認ー

フォロワーシップを磨くために重要なスキルのもう一つは、人の話をよく聴き、人をよく見る力です。傾聴と観察、さらに、承認が大事だと中竹さんは述べています。といっても、承認とは単純に褒めることではありません。安易に褒めるとかえって人は離れてしまうからです。「この人はこの程度しか分かっていないんだ」と見放されます。

ではどうすればいいのでしょうか?まずは話を聴くだけでいいんです。コメントも特にしなくてよし。行動を見て、言葉を聴いて、「あー、そうなんだ」「大変だったね」「そういうこと?」と声をかける。

これらは全然、褒めてませんよね。しかし、大切なのは「お前の努力は見ていたし、失敗も見届けるよ」という態度です。これを中竹さんは承認としています。褒めようがないプロセスでも一緒に立ち会う。「俺も悔しいよ。あそこでお前が失敗しなかったら勝てたのに。悔しいよなぁ」と。見て、聴いて、認める。この3つだけ。このシンプルで難しい方法でいかに本人が言葉にしたくない本音を感じ取れるかが重要なんだそうです。

ー選手たちの変化と、大学選手権2連覇という快挙

このような中竹さんの接し方によって選手にも変化が現れるようになりました。初めは、「こんな監督だから勝てない」とこぼしていた選手たちも、次第に「このままではいけない、チームのために自分ができることは何か」を考え、行動するようになりました。

中竹さんがスキルに頼りすぎず、自分のスタンスを貫き自分自身をさらけ出し、選手を誰よりも信じ、常に彼らの声を聞き、向き合ってきたことで、選手はチームの中で心理的安全性を感じることができ、等身大の自分で自発的にチームのために行動することができるようになったのです。

その結果早稲田大学ラグビー部は大学選手権2連覇という結果を成し遂げました。

まさにこれは、ポジティブ心理学におけるPERMAのR=relationshipが上手く形成されている環境と言えます。

また選手との関係性が良くなったことにより、選手たちは最後には中竹さんのために勝つ、と口にしていました。これはまさにRelationshipの向上の結果、PERMAのM=meaning and Purposeの中でも特に良いとされている他者のために、という目標を持てるようになったと言えるのではないでしょうか。

「より善く生きること」

そのひとつの鍵はより良い関係性(relationship)の形成にあるんですね。

私自身もどのように人と向き合っていくのかというのは、人生の大事なテーマでもあります。型に縛られず、決めつけず、なめらかに人と向き合っていきたいものだなと思います。ポジティブ心理学を皆さんが生活に生かしていく、そんな一助にこの記事がなれば幸いです。

『Positive Psychology DIALOG 2.0 ポジティブ心理学とこれから日本が目指すこと』

とはいえ、何事もその道のプロのお話をきちんと吸収し、実行していくことが一番の近道!

12月12日にNagatacho GRiDでは、この記事でご紹介した中竹さん、お招きして『Positive Psychology DIALOG 2.0 ポジティブ心理学とこれから日本が目指すこと』というイベントを開催します。

ここまでこの記事を読んでくださった皆さんは、もう予習はバッチリですね!

中竹さんへの質疑応答やディスカッションの時間などもご用意しております。ポジティブ心理学に対する知識を生活で実践できるまでに活かせるよう、この機会を利用してみてください。

Positive Psychology DIALOG 2.0ポジティブ心理学とこれから日本が目指すこと
Day 6 : スポーツもビジネスも、リーダーが変われば組織が変わる

2018年度上半期に全6回、延べ700名以上が参加したPositive Psychology DIALOGの第二弾!
「2025年までに日本中の25%の人々が持続的幸福を実現すること」を目指すムーブメント「#PERMA25JAPAN」の認知を広げ、より多くの人が気付き、行動に移すことを目的とした対話イベントがPositive Psychology DIALOG 2.0です。
全12回から構成されるイベントの第6回となる今回は、ラグビーU20元代表監督で、リーダー育成を手がけるTeambox Inc.代表取締役の中竹竜二氏を招き、「スポーツもビジネスも、リーダーが変われば組織が変わる」をテーマに組織を変革しドライブさせていくことについてDIALOG(対話)していきます。

Positive Psychology

日付: 12月12日 18:40 ~ 21:00
登壇 :
中竹竜二(Teambox CEO/ラグビーU20元代表監督)
島田 由香(ユニリーバ・ジャパンホールディングスCHRO)
矢澤 祐史(Giveness International CEO)
参加費 : 無料 チケットのお申し込みはこちらから!
イベントページ : イベント詳細はこちら
公式サイト : Positive Psychology DIALOG 2.0
会場 :  Nagatacho GRiD 6F Attic 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-5-3 https://goo.gl/maps/JqbLxN36tFu
ご来館時には、GRiDの2FのGaiax Community Space(フリーコーヒー、Wi-Fi、電源)にてお過ごし頂けます。イベントやお打ち合わせの前後にお気軽にご利用ください。なおご利用の際には、Gaiax Communityニュースレターへの登録が必要です。GRiDで行われる様々なイベント情報をお届けします。
主催: 島田 由香 / 矢澤 祐史

では、今後このブログで取り上げて欲しいトピックや、GRiDで開催して欲しいイベントなどを随時募集しております!是非皆さんの声をお聞かせください!


Kanako Yamazaki

大阪府出身、同志社大学グローバル地域文化学部在学中。現在はブランド戦略室のチームでインターン中。舞台芸術を通して、より善い人との向き合い方のできる社会を作りたい。