はじめに
こんにちわ。ガイアックス技術開発部 QAマネージャーの境野(@sakaimo)です。今回はガイアックスで試した「デザインスプリント」の取り組みを紹介します。読み物というよりやってみた記録という側面が強いですが、これからデザインスプリントを試してみたい、という方の参考になればと思います。
デザインスプリントとは?
学習と検証を素早く行うために、アイデアからプロトタイピングまでの時間を「タイムボックス」で区切った方法論

- この記事ではデザインスプリント自体の説明はあまりしていません。ここではどんなことを行ったか、を中心に書いていきます。
- デザインスプリントの理解のためには下記の二つはぜひ読んでいただきたいです。
- Design Sprint 概要 / デザインスプリント概要
- Design Sprint Process / デザインスプリントの実際のプロセスについて
- 5日間それぞれ何をするのか、については2番目の「プロセス」のほうに詳しいです。これに沿って進めました。
- 本家(?)のGoogle Venturesでの取り組みをTHE GUILD LABSさんが翻訳してくれています。こちら もとても参考になりました。
- リーンスタートアップとのスコープの違いですが、馬田さんのスライドWhy startups need “Lean Startup” & “Design Sprint”?のP12にこんな図があります。
新規事業の「TABICA」で実践しました
背景と目的
ガイアックスの新規事業に、地元ならではの旅の体験を提供する個人と、旅行者をマッチングするTABICAがあります。事業のフェーズとして価値検証フェーズが終わり、これから成長検証へと入る事業です。ちょうどTABICAのサイト改修が予定されているので、デザインスプリントを使ってトライしてみることにしました。
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- メンバー
- ファシリテーター
- 近藤(デザインスプリントを広めたい人1)
- メンバー
- 細川(TABICAプロダクトオーナー)
- 田島(TABICAデザイナー)
- 岡田(デザインスプリントを広めたいと言い出した人)
- 境野(デザインスプリントを広めるのを手伝いたい人2)
- ファシリテーター
- 期間
- 2015/3/9-13(5日間)
- 1日3時間(ホントは5日間まるまる使うプランになっている)
- この時点で我々が得ている「こんないいことがある」らしいぞな事
- ステークホルダー全員が参加するため、作った後にひっくりかえることがない
- そのため、いろんな立場の人の視点、考え方が共有できる(俯瞰できるから抜け漏れが減る)
- 全員の意見を把握しつつ責任が明確になる(合意形成)
- アイディアの具現化からユーザーテストまでが一連の流れになっていて、ゴールが現実的
- アウトプットがある状態で議論/評価するので一番早く進行する
- メンバー
それでは始めてみたいと思います。
Day0: Prepare(事前準備)
ヒトの確保
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- メンバーの時間・場所の確保
- 途中で参加者の出入りがあると、このプロセスの良さが激減してしまうので、全員揃うことのできる時間を設定します。
- 各人のスケジュールの制約で1日3時間ずつに設定しましたが、結果的にちょうど良かったかもしれません。
- (今回と違って課題が明確ではない場合、3時間では収まらなさそう)
- 場所は基本的に会議室
- Day1~Day2は、セミナールームみたいに立って動けるスペースがベター
- メンバー以外に必要なヒトのアサイン
- Day5のインタビュー対象者5名前後
- 本来は本物のユーザーを呼びますが、今回は社内からターゲットに近そうな人にお願いしました。
- Day4のデザインレビュアー1人
- スプリント参加者以外で社内から
- 「デザイン」と言っていますが、別にデザイナーである必要はありません。
- Day5のインタビュー対象者5名前後
- メンバーの時間・場所の確保
ヒト以外に必要なものの準備
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- inputになる情報
- プロジェクトで収集している指標、ユーザーの生の声など、定量・定性データ
- 今回のために無理に集める必要はありません。課題に関連しそうな情報なら何でもwelcome
- 筆記用具
- A4用紙たくさん
- A3用紙20枚くらい
- 75mm×127mmのポストイット3色以上
- サインペン×人数分
- 粘着力の弱い貼ってはがせる系のテープ
- 丸いシール適量×2色
- inputになる情報
参加者で事前の認識合わせ
- ざっくりとデザインスプリントの説明(1時間位)
- ざっくりと5日間の流れの共有
- プロトタイプを作ってユーザーに見てもらうまでを5日間で行う(≒時間がない&密度が濃い)ことの理解
Day1: UNPACK(理解する)
この日のゴール
解決したい課題を1つ決める。解決したい課題を共有し、深堀りする(解決策を決める、ではない)
トピックを決める
今のTABICAの問題点ってなんだろう?を考えます。
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- サイトに来てくれる人が少ない?
- 旅の成立数が足りない?
- 参加してくれた人の満足度が低い?
- 今回はすでに「ユーザーの声」をヒアリング済で、そこから問題点が見えてきていました。
今回のTABICAでは「旅を探せる」=「サイトを訪れたユーザが、自分がワクワクする旅の詳細ページに到達できる」こと に決定しました。(Day1以降のスプリントの中で、だんだん下記の2点になってきました)
- 1) このサイトに来てもらった人に「何ができるサイトなのか」を理解してもらう
- 2) 旅を探しやすくする(旅詳細画面に行ける)

ユーザーストーリーを描く
今のユーザーの動き、というよりも、こうなったらいいよね、とか、ここでこうしてほしいよね、という視点での作成となりました。
- ユーザーの気持ち、感情として、こういう期待値なんじゃない?とか
- どうやってこのサイトに来たか、とか
- ホワイトボードがこんな感じになりました。
フォーカスする問題を決める
この時点で
1) このサイトに来てもらった人に「何ができるサイトなのか」を理解してもらう
2) 旅を探しやすくする(旅詳細画面に行ける)
が見えていたのでこれで決定しました。
Day1の難しかったところ
- 本来は「(現在の?)ユーザーストーリー」を描いてから、解決したい問題を決める、だったのですが、今回は問題が先でした。
- その問題を解決するにはこーゆーストーリーがあるよね、という思考になりました。
Day1感想
- ファシリテーター視点
- 全体としては悪くない滑り出しができた
- もし、これが初期構築だったり課題が不明瞭だったら、もっと時間がかかったと思われる
- 「ユーザーストーリー」の書き方がよくわからなかった
- 何を、どのくらいの粒度で書くものなのか?
- この問題は、Day3での再度のユーザーストーリー作成で顕在化する
- いつの間にかPCでの利用が暗黙の前提になっていた
- イマドキ、PCよりスマホ利用の方が多いとか、十分ありうるよね
- メンバー視点
- Day1での課題の設定が一番大事!という声を聞いていました。
- スプリントの中で何を解決したいのか、を決めるのが一番大事だと。
- 今回は(解決する課題が)ちょうどいいボリュームなのでは、というのがDay1終了時の感想。
- この日の最後にスプリントのゴールを言葉にして共有するのは大事です。
- 今回は使いませんでしたが、フォーカスポイントを決める際に「HEART」フレームワークというのがあるらしい。
Day2: SKETCH (発散する)
この日のゴール
Day1で決めた問題を解決するために、多くの可能性を明るみに出す
課題解決のためのアイディアを出しまくる日です
問題を分けて選ぶ
フォーカスしたユーザーストーリーが複数だったり、問題が大きい場合に問題を分けよう、というステップになります。今回TABICAでは「すでに固まってるよね?」という感じになっていました。すなわち下記の2点です。
1) 何ができるサイトなのかを理解してもらう
2) 旅を探しやすくする
ノートをとる+マインドマップ
昨日の成果から、有用だと思うものをメモっていきます。これは各自が昨日のホワイトボードを見ながら、気になったワードとかポイントを自由に書き出していきます。この時は話しあったりしません。個人作業となります。
昨日の成果はこちら↓

その後、ノートにメモったものをマインドマップを使って発展させていくことをしました。これも個人作業になります。私が書いた「何ができるサイトなのかを理解してもらうためにどうしたらいいかマインドマップ」がこちら↓


Crazy8をする
ここが楽しいところです。A3紙を8等分して、課題を解決するためのアイディアを1つ40秒で次々と絵にしていくというアクティビティです。Crazy8の具体的なやり方はデザインスプリント入門4 – 発散(2日目)(翻訳) に詳しいです。

ストーリーボードを作る
Crazy8から良いと思うアイディアを具体化するステップです。これも個人作業です。参加人数によっては一人一アイディアに絞ったほうがいいと思います。今回は1人あたり1~2個出しました。A4紙を使ってこんな感じで具体化していきます。(これは私のアイディアとは別の人のストーリーボードなので、上記のcrazy8の案と繋がりはありません) ポイントとしては「言葉で説明しなくても伝わるようにする」です。(次のステップに関係する)
終わったら全員分を壁に貼り出します。
Silent Critique
この段階では、まだ(自分のアイディアの)説明も議論もしません。貼り出されたストーリーボードについて、そこに書かれている情報だけを「黙って」読み取ります。そして良いと思ったものに「黙って」シールを貼っていきます(1人で複数貼ってもOK)。そうすることによってヒートマップができ、人気のあるアイディアがひと目で分かるようになります。
3min. Critique
ここでようやく話をすることができます。出たアイディアについて議論する時間です。人気のあるアイディアを書いた人に3分以内で意図とか想いを説明してもらいます。(人気のないアイディアには触れませんw)
Super Vote
決定権者を中心にベストなデザインを決定します。
Silent Critiqueとは別のシールを1枚(決定権者は2枚)持って各自投票しました。
上記画像の青シールがSilent Critique。赤シールがSuper Voteのものです。
もう1サイクル
実際は上記とは別に「旅を探しやすくする」というテーマに対しても「ノートをとる」から「SuperVote」までのサイクルを回しています。1サイクルだいたい1時間くらいかかりました。
Day2感想
- ファシリテーター視点
- この日は、規定のプロセス通りに進めればそれなりにうまくいく
- ファシリテーターが臨機応変に対応すべき場面はあまりないので心配無用
- メンバー視点
- Day2は比較的プロセスにのってどんどん進める日
- それぞれの時間も決められているので、テンポよくサクサク進めるのが大事
- 迷ってる場合じゃない!
- 頭使うのでとっても疲れる(充実)する日
- 大きな気付きとして、「他人の意見からの気付きと、自分の視野の狭さ」を実感できました。
- この辺りが「DesignSprintの長所」として挙げられていた「俯瞰できる」なんだと思います。役割が違うから気になるところも違うんだなと。
- 「アウトプットがある状態で議論/評価する」はまさにこのステップだなと思いました。
前半はここまでです。後半ではDay3~5を一気にお届けします。